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「不意打ち」的な外国人に対する出国制限についてどのように対応すべきか

中国ビジネスレポート 法務
王 穏

王 穏

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2015年3月17日

記事概要

中国において外国人が出国制限をされた場合、どのように対処するべきだろうか。【2,382字】

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‐関連事例・法令の解説‐

出国制限とは、中国市民又は中国に居住する外国人の出国する権利を制限する制度である。中国では、悪意の債務逃れが大きな社会問題にもなっており、出国制限はそれに対する特効薬の一つとしてとらえられているが、実務においては、逆にこの制度を悪意で利用する者がおり、濫用を招いている。それでは、外国人がこのような出国制限をされた場合、どのように対処するべきだろうか。

【事例】
外国人A氏は某外国企業の法定代表者である。A氏は中国から帰国するため、上海浦東空港で搭乗手続きをした際、中国内に未解決の民事事件があることを理由に、裁判所が出国を認めない決定をしたと告げられた。事情を確認したところ、A氏の会社と川下の代理店との間で代金に関連して紛争となっている件に関連して、代理店がA氏の会社にその条件を強引に受け入れさせようと、裁判所にA氏の出国制限を申請した。このような場合、A氏に解決方法はあるのだろうか。

【裁判官の見解】
裁判所は事件の影響と状況を総合的に検討し、状況が深刻でない限り通常は外国人の出国を制限することはない。しかし、外国人に中国に未解決の民事事件があり、出国すると事件の事実が調査できなくなる、判決が執行できない等の状況がある場合、中国の関連法律に従い外国人の出国制限を検討する。しかし、出国制限を取られても解決法がないわけではなく、経験のある弁護士に助けを求め、再審を申請したり、保証金を納めることで制限を解除することも可能である。
通常、裁判官として出国制限の発令には非常に慎重であるが(裁判所内部でも発令には慎重派が主流ではある)、個人差、地域差、更には種々の事情により、現実では「不意打ち」的な出国制限が発生している。

【実務分析】
出国制限の手続きについては、法律や司法解釈には明確な規定はない。司法実務においては、裁判所によってその方法が異なるため、出国を制限された者にとっては、その権利救済を困難にしている。
上述事例において、A氏の出国制限を解除するためには以下方法が可能である。

1.弁護士に相談する。
出国制限制度には救済手続きに乏しいが、弁護士を通じて、再議や公聴会を申請することで、裁判所に出国制限取下げの決定を出させることも可能である。出国制限の申請人が裁判で勝訴する可能性が低い又はその起訴証拠に疑わしい点がある事件は特にその傾向がある。出国制限申請書には、通常は申請事項、事実と理由を記載して、関連する証拠を添付する。
2.出国制限の申請人が裁判所に保証金を納めていない、保証の方法、金額、保証の信ぴょう性に問題があるとき。
出国を制限された者は弁護士に依頼して、裁判所に事件の審査を求めることができる。特に、申請人の訴訟に悪意がある場合、相手に保証金を要求することが有効策である。誤って強制的に出国制限を取った場合、出国を制限された者は様々な点で直接、間接的な損害を受けるので、裁判所は出国制限への申請人に対して保証金の納付を要求する。保証金を納付しない者についてはその申請を拒絶することができる。
3.出国制限を取られた者が十分、有効な保証を提供でき、紛争中の債権を損なわない場合、裁判所は通常は、出国制限を解除する。

【関連法律法規】
『中華人民共和国外国人出国入国管理法』第二十八条
一、外国人が次のいずれかに該当する場合は出国を許可しない。
(1)刑罰に処する旨の判決を受け、その執行が完了していない者、又は刑事事件の被告人、被疑者である場合(但し、中国と外国が調印した関係協定に従い、刑罰の判決を受けた者を引き渡す場合はこの限りではない)。
(2)未解決の民事事件があり、人民法院が出国を許可しないと決定した場合……。

『法により外国人及び中国市民の出国を制限する問題に関する若干の規定』
二、外国人又は中国市民の出国を制限する際の承認権限
(1)公安機関及び国家安全機関が認定した犯罪被疑者又はその他法律に違反する行為があり、まだ処理されておらず、かつ法的責任を追及する必要がある場合、その出国の制限への決定は、省、自治区、直轄市の公安庁、局又は国家安全庁、局が承認する。
(2)人民法院又は人民検察院が認定した犯罪被疑者又はその他法律に違反する行為があり、まだ処理されておらず、かつ法的責任を追及する必要がある場合、人民法院又は人民検察院が出国の制限を決定し、かつ関連規定に従い執行するとともに、同級の公安機関に通達する。
(3)国家安全機関は、外国人又は中国市民に出国制限措置を取る場合、速やかに公安機関に通達するものとする。
(4)未解決の民事事件(経済紛争事件を含む)がある場合、人民法院は出国制限を決定かつ執行するとともに、公安機関に通達する。
(5)その他国境・通関地で出国を制限する必要のある者については、1985年に公安部、国家安全部が公布した『出入国の検査制限業務の徹底に関する通知』の精神に従い取り扱う。

三、人民法院、人民検察院、公安機関及び国家安全機関が外国人及び中国市民の出国を制限するときには、次の方法を取ることができる。
(1)当事者に対して、事件(又は問題)が結了するまでは、出国してはならない旨を口頭又は書面により通知する。
(2)事件の性質又は当事者の状況に応じて、居住監視若しくは保釈し、又は財産担保若しくは保証金の提供により出国を許可する。
(3)当事者のパスポート又はその他の有効な出入国証拠書類を差押える。

【まとめ】
中国の法律を理解していない外国人が出国制限を取られたとき、通常はひどく狼狽えてしまうが、弁護士を通じて法律上のサポートを受けることができる。同時に、相応の保証金を納めれば出国制限は解除され、損失を回避することも可能である。

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