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ログイン2015年4月17日
2014年12月9日、国務院は「税収などの優遇政策の整理、規範化に関する通知」 (国発[2014]62号)を公布した。同月22日には、財政部が「税収などの優遇政策を見直し、規範化する国務院の決定・手配の実施徹底に伴う若干事項に関する通知」 (財預[2014]415号)を公布した。これにより、中国は改めて税収などの優遇政策を見直し、規範化する作業を始動することになった。
税収などの優遇政策とは、地域経済の発展を促すため、投資の増大と産業の集中の促進を目的として、一部の地域、部門が特定の企業およびその投資者(または管理者)などに対し、税収、非税などの収入および財政支出などの面で実施する優遇政策を指す。現在の関連規定、実務取扱などに照らせば、税収などの優遇政策には主に以下の内容が含まれる。
項目 | 簡潔な説明 |
税収法令が明確に定める優遇政策 | ・明確な法令根拠(通常では全国的な規定)が存在するもので、例えば中国「企業所得税法」およびその実施条例などで定める、業種(農、林、牧、副、漁業)、および環境保護、省エネ節水プロジェクトなどに関する税収優遇。 |
地方規定が定める優遇政策 | ・最もよく見られるものは各種財政補助であり、例えば、上海自由貿易区では第十二次五箇年計画(2011年から2015年まで)の期間において、地域本部、商業貿易業、海運業、金融業、文化創造産業などに対し、いずれも相応する財政補助を設定している。 |
地方政府と関係企業との個別の手配 | ・地方政府(通常は外資企業誘致部門が率先して行う)が関係企業(通常は新規設立企業または増資を行う企業)と、土地の価格、水道電気ガスの価格、財政補助、固定資産/不動産投入などの面で、個別に締結する関連契約書、協議書、覚書、議事録など(以下「個別締結文書」という)。 |
その他 | ― |
実際には、中国における1994年の税制改革以降、一貫して「税収は法令で定める」との原則を強調してきた。その中、税収などの優遇の面で、関連根拠とすることができるものは税収法令のみであり、各地区(民族自治区にはある程度の例外があるものと思われる)、各部門(国務院の許可を受けた場合は除く)はいずれも税収などの優遇政策を自主制定してはならないことを強調している。税収法令で明確に定められた以外の税収などの優遇政策が存在できるかについては、常に議論があり、中国国務院、財政部は過去にも関連規定を公布して、見直しを行うよう求めていた。例えば以下の通りである。
時間 | 関連規定 | 概要 |
1998年3月12日 | 国務院の「法に従った租税管理を強化し徴収管理権限を厳格にする旨の通知」 | ・各地は法に従った租税管理を堅持し、減免税については必ず税法の規定に照らして実施しなければならず、税法と税収管理権限の規定を超えたいかなる減免税も直ちに是正されなければならない。 |
2002年 1月11日 |
国務院の「地方が自主制定した税収の徴収後の還付政策の是正に関する通知」 | ・地方人民政府は、税収法令が明確に授権した管理権限以外で、国家税収政策を無断で変更、調整、変形してはならない。各級地方人民政府はいずれも税収の徴収後の還付政策を自主制定してはならない。 |
2009年 1月9日 |
財政部などの「越権による減免税の断固阻止、法に従った租税管理作業の強化に関する通知」 | ・現行の関連税収管理権限に関する規定によれば、中央税、共有税および地方税の立法権は全て中央に集められており、税法が明確に授権した管理権限以外で、国家税法および税収政策を無断で変更、調整、変形してはならない。 |
上記規定があるにもかかわらず、実務において、中国は税収などの優遇政策の系統的、徹底的な見直し、規範化を行っていなかった。中国財政制度の更なる改革、および「予算法」、「予算管理制度改革の高度化に関する決定」などの規定に基づき、2014年末に中国国務院、財政部は改めて通知を出し、税収優遇などの政策を全面的に見直し、規範化する作業を始動し、以下のとおり更なる明確化を行った。
項目 | 簡潔な説明 |
税収政策制定権限の統一 | ・専門の税収法令に基づく場合を除き、各地区(民族自治区にはある程度の例外があるものと思われる)、各部門(国務院の許可を受けた場合は除く)はいずれも税収などの優遇政策を自主制定してはならない。 |
非税などの収入管理の規範化 | ・現行の行政事業性費用、政府性基金、社会保険管理制度を厳格に実施する。優遇価格または地価ゼロでの土地の払下げを厳禁する。国有資産の低価格での払下げを厳禁するなど。 |
財政支出管理の厳格化 | ・国務院の許可なく、各地区、各部門は企業に対し財政優遇政策を定めてはならない。それは以下の通りである。
・抹消:法令に違反して制定した企業およびその投資者(または管理者)の税金納付または非税収入と関連する財政支出優遇政策。それには徴収後の還付、収入・支出に計上する(帳簿上だけの計上であり、実質が伴わない)、財政奨励または補助、代理納付または補助支給などの形式での土地払下げ収入の減免などが含まれる。 ・規範化:その他の優遇政策、例えば企業に代わって社会保険料などの経営コストを負担すること、電気料金水道料金の優遇、財政奨励または補助などを通じた他の地区企業の現地への誘致、または現地での納税、一部の地域で実施されている地方レベルの財政収入の全額猶予、または増額還付など。 |
既存の各種税収などの優遇政策の全面的な見直し | ・2015年3月末までに個別の見直し作業を完了し、各地区、各部門が制定公布した税収などの優遇政策を検査し、特に企業と締結した契約書、協議書、覚書、議事録または面談記録および「一事一議」形式の伺書、報告書および回答書簡などに対し、全面的な見直しを行う。個別の見直しが行われた後、最終的には以下の通り整理される。
・ 廃止:国の法令に違反した優遇政策。 |
今回の税収などの優遇政策の見直し、規範化については、やや厳格な付随的実施措置も定められており、その中には、監督評価メカニズムが含まれ、各地政府に対し、目録リストを作成した上で公開し、監督および通報を奨励するよう求めている。規則に違反して公布された優遇政策が見つかれば、当該地区への中央からの割当金が削減される。即ち、事前、過程、事後の三つの面から地方政府を管理し、人事、財政、社会世論の三つの手段を通じて地方政府を監督するのである。
なお、留意すべき点は、国務院、財政部が公布した通知で使用された言葉が強いことであり、例えば「一律停止」、「廃止」など、理論上では、今次見直し(廃止)が行われた税収などの優遇政策は、直ちに発効し、移行期間は設けられず、補償もない。このため、税収などの優遇政策を享受済み、現在享受している、または享受予定である企業は、その動向に注意し、以下の通り対応しなければならないと思われる。
項目 | 簡潔な説明 |
既に享受済みの税収などの優遇政策 | ・既に享受済みの税収などの優遇政策については、本通知ではその取扱いについて言及していない。当所の見るところ、企業が既に享受済みである税収などの優遇政策については、通常、返還を求められることはないと思われる。 ・なお、留意すべき点として、現時点で既に税収などの優遇政策を享受する条件を満たしているが未だ享受していない部分については、2015年3月末までに(早ければ早いほど望ましい)、政府部門と具体的な話合いを行い、享受実現に努めることが望ましい。 |
未だ享受していない税収などの優遇政策 | ・未だ享受していない税収などの優遇政策(企業は享受条件を満たしている)については、上述【表3】の規定に照らして、今後継続的に享受できるかを事前に判断しなければならない。なお、上述【表3】の関連内容は、一定の専門性(例えば、弁護士、会計士などの専門家の力を借りて判断することが考えられる)および不確実性(例えば、いずれの優遇政策が廃止され、いずれの優遇政策が規範化された後に存続できるかについては、今のところ、より明確になるのを待たなければならない)がある。それは以下の通りである。
・地方規定を根拠とする優遇政策については、当該規定を制定、公布し、過去に優遇を履行している政府部門と今後の政策の動向について話し合うことが考えられる。 ・なお、留意すべき点は、個別締結文書を通じて形成された税収などの優遇政策は、今後見直しおよび廃止となる可能性が最も大きいことである。ただし、実務において、個別締結文書は往々にして既に「技巧的」な処理を行っており(過去にも優遇政策見直しの要求はあった)、例えば、地方政府が出資した企業を通じた優遇、または付随的インフラ施設などの名目を通じた優遇などである。これらの処理自体は一定の「隠蔽性」を備えており、今後、地方政府との具体的な話合いを通じて、これらの優遇政策が継続的に履行される可能性はある。 |
以上をまとめると、中国国務院、財政部が税収などの優遇政策の全面的な見直し、規範化を求めた今回の通知は、企業に大きな影響を及ぼすと思われ、企業は早めに準備を進め、企業自身の状況に照らして、弁護士、会計士などの専門家の力を借りて影響の程度を判断することも念頭に、必要であれば関連政府部門との話合いおよび確認を行い、積極的に対応策を講じることが望ましい。
(里兆法律事務所が2015年2月2日付で作成)
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