こんにちわ、ゲストさん

ログイン

人的資源社会保障部による「労働契約法」の解説、「労働契約法」がより詳細化される(連載の二全二回)

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

無料

2015年12月21日

―「『労働契約法』実施貫徹に関する若干規定(検討案)」の重要条項を解説する(連載の二全二回)―

(連載その一はこちら https://chasechina.jp/reports/chinabiz/judge/4996.html

第三十条:
労働契約期間満了後、自動延長した場合又は双方で協議の上労働契約期間を延長した場合、双方は労働契約を更新したものとみなし、労働契約の連続締結回数に計上する。ただし、期間の定めのない労働契約締結条件に適合する場合は除く。

第三十一条:
使用者が労働者と期間の定めのある労働契約を解除した又は終了した日から6ヶ月以内に再度、期間の定めのある労働契約を締結した場合、労働契約法第十四条第二項第三号に言う「期間の定めのある労働契約を連続して2回締結した」状況に該当する。

【筆者の考察】
検討案の本条項は、「労働契約期間満了後、自動延長した場合」、「双方で協議の上労働契約期間を延長した場合」、「使用者が労働者と期間の定めのある労働契約を解除した又は終了した日から6ヶ月以内に再度、期間の定めのある労働契約を締結した場合」を労働契約締結回数にカウントし、期間の定めのない労働契約の締結回避行為を更に制約している。しかしながら、「双方で協議の上労働契約期間を延長した場合」の全てを労働契約締結に認定することは明らかに不適切ではなかろうかとも思われる。なぜならば、「双方で協議の上労働契約期間を延長する」ことは必ずしも期間の定めのない労働契約の締結回避行為であるとは限らず、業務の引継ぎ、業務終結などで必要な場合もあるからである。この点については、「江蘇省労働契約条例」第17条規定の「使用者が労働者と協議の上、労働契約期間を延長し、累計で6ヶ月を超える場合、双方が連続して労働契約を締結したものとみなす」といった規定のほうが、より現実的で合理的であると思われる。

第三十四条:
労働者に労働契約法第四十二条第一、三、四号に規定する状況があり、労働契約期間を順延する場合、労働契約の更新状況に該当しない。
労働者に労働契約法第四十二条第一、三、四号に規定する状況があり、労働契約期間の順延により労働契約法第十四条第二項第一号に規定する条件に適合し、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申入れた場合、使用者は同労働者と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。


【筆者の考察】
つまりは、「勤続年数満10年」は期限の定めのない労働契約締結の条件の一つであるものの、労働者が「労働契約法」第42条に規定する延期状況によって「満10 年」となった場合にも、期間の定めのない労働契約の締結を求めることができるのか、ということである。

検討案の本条項では、この点について肯定的見方を示しており、広東1、江蘇2などの規定とも一致しているが、上海3の規定とは異なる。検討案の規定は字面的には「勤続年数満10年」を意味するものではあるが、相対的に見た場合、上海の規定のほうが法律の趣旨に即しているようにも思われる。

備考:
1 「労働人事紛争案件審理の若干事項に関する座談会議事録」【粤高法[2012]284号】

18、労働契約期間満了後、「労働契約法」第四十二条第(一)、(三)、(四)号に規定する状況に適合し順延したことで、労働者の同一使用者における勤続年数が満十年となった場合に、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申入れたとき、これを支持しなければならない。

2 「労働紛争案件審理に関する指導意見」【蘇高法審委[2009]47号】

第九条:労働契約期間満了後、下記の列挙する状況により順延したことで、労働者の同一使用者における勤続年数が満十年となった場合に、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申入れたとき、これを支持しなければならない。
 (一)職業病危害作業に接触した労働者が離職前の職業健康検査をしていない、または職業病の疑いのある病人が診断もしくは医学観察期間中の場合。
 (二)病気に罹患しまたは私傷により負傷し、規定の医療期間内である場合。
 (三)女子従業員が妊娠期間、出産期間、授乳期間中である場合。

3 「『労働契約法』適用の若干事項に関する意見」【滬高法[2009]73号】


四、期間の定めのない労働契約に関する事項

(三)法定の順延事由により、労働者の同一勤務先における勤務年数が十年を超えた場合を期間の定めのない労働契約締結の理由とするかどうか

労働契約期間満了により、労働契約は当然のことながら終了する。契約期間の延長は単に労働者の特別な状況を配慮し、契約の終了時間を延長するものであり、終了することができないわけではない。「労働契約法」第四十五条でも、「労働契約期間が満了し、本法第42条に規定される事由のいずれかに該当する場合、労働契約は相応する事由がなくなるときまで延長されてから終了しなければならない」旨が明確にさている。法律上、終了状況について特段の規定がない場合、契約終了に関する法律規定に違反し、任意に拡大解釈を行い、期間の定めのない契約を締結させてはならない。従い、法定の延長事由が消失した時、契約は当然に終了する。

第五十三条:
 労働者が試用期間中に病気に罹患し又は私傷のため業務を停止し治療をする必要がある場合、規定の医療期間中、試用期間は中断する。医療期間満了後、試用期間は継続する。労働者が元の業務を行えない場合、使用者は労働契約法第三十九条第一号に基づき法に依拠し労働契約を解除することができる。

【筆者の考察】
労働者が試用期間中に医療期間が出現した場合、使用者は試用期間中に実施する適性の評価判断が実施できなくなる。「江蘇省労働契約条例第15条の「労働者が試用期間中に病気に罹患し又は私傷のため業務を停止し治療をする必要がある場合、所定の医療期間中は、試用期間を中断する」旨の規定で、この問題は、「試用期間の中断」制度により解決する旨が比較的明確にされており、検討案の本条項規定は江蘇省の規定と類似している。

本制度は試用期間における試験雇用と適性の評価判断の目的を配慮し、試用期間を医療期間中に組み入れてしまわないことで、使用者は引き続き約定した試用期間で適性の評価判断を行うことができ、しかも、労働者が業務を再開できずに適性の評価判断を受けられない場合には、採用条件に適合しないものとみなすことができ、労働契約を解除できるため、相対的に合理的な内容であると思われる。

第五十五条:
使用者が労働契約法第三十九条第二、三、四、五、六号に基づき、労働者との労働契約を解除する場合、本契約期間内において、労働者に上述の状況が存在することを知った日また知るべきであった日から1年以内に労働契約を解除しなければならない。

【筆者の考察】
検討案の本条項では、使用者が「労働契約法」第39条により労働契約を解除するにあたって(典型的状況としては、紀律違反に伴う解除など)の時効(即ち、「本労働契約期間内であり、尚且つ使用者が知った日または知るべきであった日から1年」)について規定している。時効を設定することで、使用者に対しては労働者の紀律違反行為を迅速に処理するよう促すことができ、労働者もなるべく早い段階で自身の紀律違反行為によってもたらされる影響を知ることができるため、労働者が不安定な状態に置かれることを防ぐことができる。

しかしながら、検討案では労働契約解除の時効を規定しているものの、労働契約解除以外のその他紀律違反処分時の時効についての規定は依然として不明確なままである。

実際には、検討案に規定があるかどうかに関係なく、合理性という視点から見た場合、労働者の紀律違反行為に対しては、労働契約を解除したり、又はその他の処分を行う場合のいずれにおいても、使用者が処分措置の実施を決定した場合、なるべく「本労働契約期間内であり、尚且つ使用者が知った日または知るべきであった日から1年」以内に行うことが望ましいと思われる。

第五十九条:
使用者が労働契約法第三十九条、第四十条の規定に基づき労働契約を解除したものの、第四十三条規定に基づく工会への通知義務を履行しておらず、尚且つ労働者による仲裁申立が行われる前に補正していない場合、違法解除に該当する。

【筆者の考察】
検討案の本条項は、「労働紛争案件審理の適用法律の若干事項についての最高人民法院による解釈(四)」第12条の「工会組織を設立した使用者による労働契約の解除は労働契約法第三十九条、第四十条の規定に適合するものの、労働契約法第四十三条規定に基づく工会への事前通知を行っておらず、労働者が使用者による労働契約の違法解除を理由として、賠償金の支払を使用者に請求した場合、人民法院はこれを支持するものとする。但し提訴前に使用者が関係手続きを補正している場合は除く」との規定とは矛盾しており、即ち、検討案では、「工会への通知手続き」の補正は「労働者による仲裁申立てが行われる前」に行う必要があるとしているのに対して、「労働紛争案件審理の適用法律の若干事項についての最高人民法院による解釈(四)」では、「提訴前に補正する」ことを求めているだけであり、この矛盾点を如何に調整するかについては、更に明確にされていく必要があると思われる。

使用者について言えば、労働契約の一方的解除を行う際には、「労働者による仲裁申立てが行われる前」または「提訴前」まで引き延ばすことはせずに、「労働契約法」第43条の規定に従い、予め工会への通知手続きを履行しておくことが望ましい。

第六十七条:
労働契約法実施前から存続する労働契約を労働契約法実施後に解除する場合で、労働者の月賃金が使用者所在地の直轄市、区を設けている市級人民政府公布の本地区の前年度の労働者の月平均賃金の三倍を上回るとき、当該労働者に支払う経済補償金の基準は従業員の月平均賃金の三倍の金額で支払い、経済補償金支払年数は雇用日より起算し、最高で十二年を超えないものとする。

【筆者の考察】
労働者の勤務年数が「労働契約法」実施前後に跨る場合の経済補償金の計算について、現在の主流の計算方式は、段階別計算方法(即ち、「労働契約法」実施前は、当時の規定に従って計算し、「労働契約法」実施後は、「労働契約法」の規定に従って計算する方法)である。

検討案の本条項における計算方法は、実際のところ、「労働契約法」の規定に基づく(「労働契約法」実施前は平均賃金3倍を上限とする旨の規定はなかった)ものであるが、検討案では適用範囲を「労働契約法」実施前から存続する労働契約」まで拡大しており、本規定が実施された場合には、使用者の経済補償金支払コスト削減につながることが予測される。

(里兆法律事務所が2015年8月28日付で作成)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ