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ログイン2016年1月20日
「労務派遣暫定規定」[1](人的資源社会保障部令第22号、2014年3月1日から施行。以下、「暫定規定」という)により、2016年2月29日までに、企業は雇用者数に占める派遣社員の比率を10%以下に引き下げなければならない旨の強行規定が出された。最終期限が刻一刻と迫っている中で、企業はどう対処すべきか。
本文では、派遣社員から直接雇用の社員への切り替え、労務派遣から業務請負への変更、及び派遣社員の派遣打ち切り、他の社員の新たな採用又は他の雇用形態での使用など、実務において暫定規定の要求を満たすための実行可能な方法について紹介する。
■法律条項を振り返る
「暫定規定」第28条 |
本規定施行前に企業の派遣社員の人数が雇用者全体の10%を超えている場合、使用調整方案を制定し、本規定施行の日から2年以内に規定の比率まで引き下げなければならない。ただし、「『中華人民共和国労働契約法』改正に関する全国人民代表大会常務委員会の決定」[2]公布前に法に依拠し締結済みの労働契約と労務派遣協議書の期間満了日が本規定施行の日から2年後となる場合は、法に依拠し期間満了まで引き続き履行することができる。 企業は制定した使用調整方案を現地の人的資源社会保障行政部門に届出なければならない。 企業は、本規定施行前から使用している派遣社員数を所定の比率に引き下げるまで、派遣社員を新たに採用してはならない。 |
派遣社員の人数を10%以下に引き下げることについて、本規定では以下の3点が重要事項として強調されている。
1.派遣社員数は全雇用者数の10%を超えてはならず、当該比率を超えている企業は「暫定規定」の施行日から2年以内(即ち、2016年2月29日まで)に、これを引き下げなければならない。
2.労務派遣協議書を「『中華人民共和国労働契約法』改正に関する全国人民代表大会常務委員会の決定」公布前(即ち、2012年12月28日より前)に締結しており、尚且つ2016年2月29日より後に期間満了を迎える場合、期間満了日まで履行することができ、影響はない。
3.企業の社員調整方案を現地の人的資源社会保障部門に届出なければならない(届出に関しては、一部地区で関係規定が出ており、企業はこれに従い実施すればよい)。
■対処方案
対応方案に関しては、主に以下の2通りの背景状況に基づき判断する必要がある。
1.企業がこれまでに現地の人的資源社会保障部門の規定又は要求に従い、対応方案の届出を行っている場合、今回は主に当時届出を行った方案を実施して対処することになるが、もっとも、企業が実施する際に、届出済みの方案を若干調整する必要がある場合であっても、法令規定に違反しなければ認められる。
2.企業はこれまで届出をしていないものの、「暫定規定」に基づき、派遣社員数を規定の比率に引き下げる必要が依然としてある場合、対処方案を制定し、実行する必要がある。
実際には、上述のいずれの背景状況下においても、派遣社員数を規定の比率に引き下げるためには、実務上、主に以下の方法で対処することになる。
1.派遣社員を直接雇用の社員に切り替える(即ち、「正規社員への切り替え」)。
2.労務派遣を業務請負に変更する(即ち、「業務請負への変更」)。
3.派遣社員の派遣打ち切り、新たに社員を採用し又は他の雇用形態で使用する。
本文では上述の主な対処方案について考察する。
■正規社員への切り替え
1.ここでの正規社員への切り替えとは、先ずは派遣元、派遣受入企業が派遣社員との労務派遣関係を解除した後、派遣受入企業が当該派遣社員と直接に労働関係を築くことを指すため、正規社員への切り替えにおいては、2つのステップを踏まなければならないことがわかる。
2.労務派遣関係に特有の3つの特徴のため、労務派遣関係を解除するにあたっては、派遣元と派遣社員との労働関係の解除、派遣元と派遣受入企業との労務派遣協議書の解除という2つのステップを踏むことになる。実務では、三者間で認識にズレが生じないよう、通常は、派遣受入企業、派遣元及び派遣社員が三者間協議書を締結することで処理される。
3.労務派遣関係を解除する際には、派遣元と派遣社員との間で労働契約を解除することになるため、経済補償金問題が生じる。法律上は、経済補償金は派遣元と派遣社員との間で生じる問題であるのだが、実際には、派遣受入企業が労務派遣協議書の約定に従い負担するのが一般的である(労務派遣協議書では通常、派遣受入企業が負担する旨が約定されている)。経済補償金の取り扱いについては、派遣受入企業が以下の2通りの方案からいずれかを選択できる。< br>
1)方案一:派遣元が派遣社員を派遣受入企業に派遣した勤務年数部分について、派遣受入企業が経済補償金の支払いを通じてこれを買取り、正規採用に切り替える。そして、正規採用後からの勤務年数はリセットされる。本方案のメリットは、派遣社員時代の勤務年数を正規採用後に持ち越す必要がなく、勤務年数を通算することで生じてしまう雇用コストが生じない点にある(詳細は本案二における説明を参照のこと)。しかし、そのデメリットは、企業が直ちに経済補償金を支払わなければならず、資金面でのプレッシャーがかかる点にある。
2)方案二:派遣元が派遣社員を派遣受入企業に派遣した勤務年数について、派遣受入企業がこれを承継し、正規採用後も派遣社員時代の勤務年数を含めてそのまま通算し、派遣受入企業は切り替えの時点では経済補償金を支払わない。方案二のメリットは、派遣受入企業が正規社員への切り替えの時点で経済補償金を支払わずに済み、資金面でのプレッシャーがかからない点にある。しかし、デメリットは、勤務年数を通算することでの雇用コストが生じる点にある。例えば、将来、労働契約の解除若しくは終了時、又は正規社員に切り替わった当該社員が経済補償金若しくは賠償金獲得条件に合致した場合、企業は、通算した勤務年数に応じて、経済補償金又は賠償金を計算する必要がある。また、医療期間の計算、病気休暇中の賃金計算、年次有給休暇の計算、勤続年数が満10年を迎えた時点で無期労働契約を締結する場合などにおいては、企業側のコストがさらに増すことになる。
上述の2つの方案のうちのいずれを採用するかは、企業は自社の具体的状況に応じて選択するとよい。企業が方案二を選択した場合には、一部社員からの反対や制止に遭う可能性もあるが、企業はこのような社員に対しては、その雇用を打ち切るなどの方法で対処することを検討してもよい。
4.労務派遣関係を解除した後、企業は正規社員に切り替える社員との間で直ちに新たに労働契約を締結しなければならないのだが、実務では、三者間協議書を締結する当日に、企業と正規社員との間で新たに労働契約を締結するだけでなく、就業規則制度などの規則制度、職位責任書、業績審査評価表などの労働管理書類について、社員に署名を求めるのが一般的である。
■業務請負への変更
1.業務請負とは、発注企業が一部業務を請負業者に発注することにより、作業効率の向上を図るための業務管理方式を指す。業務請負と労務派遣の違いはやや多く、本文では以下の2つの重要ポイントに絞って説明する。
1)対象が異なる。業務請負の対象はある特定の業務又はいくつかの特定の業務である。これに対し労務派遣の対象は派遣社員が労務を提供する過程である。
2)社員に対する管理権限が異なる。労務派遣において、派遣受入企業は派遣社員を直接管理するが、業務請負では、発注企業は請負業者の社員を直接には管理できず、請負業者が直接管理する。
2.労務派遣を業務請負に変更するにあたっては通常、以下の2通りの形式がある。
1)構外での業務請負。やや一般的な業務請負形式であり、すなわち、発注企業が一部業務を請負業者に外注した後、請負業者が自社の構内で請負業者の道具を利用して、請負業者の社員を管理して業務を遂行する。
2)構内での業務請負。やや特別な業務請負形式であり、労務派遣と混同されやすい業務請負形式である。すなわち、発注企業が一部業務を請負業者に外注した後、請負業者が社員を発注企業の構内へ派遣し、発注企業の道具を利用して、請負業者の社員を管理し業務を遂行する。
3.構外で行う業務請負形式は一般的に行われており、実行可能であるが、構内で行う業務請負形式の場合、労務派遣と混同されないよう特に注意する必要がある。
1)発注企業は請負業者の社員を直接管理すること(これには出勤、指揮、審査評価、賞罰、賃金福利の支給及びその他日常管理などが含まれるがこれらに限らない)はできないが、請負業者による業務完成状況に対する監督は可能である。
2)発注企業の規則制度を請負業者の社員に適用できない。
3)請負業者は相応の経営資格を備えていなければならない。
4)請負業者が発注企業の構内、道具を使用する場合、「請負業者の社員は発注企業のために労働しているとの錯覚」が生じることを防ぐためにも、リース方式の採用を検討するとよい。
■派遣打ち切り及び今後の対策
正規社員への切り替え、業務請負への変更に同意せず、又は企業として引き続き雇用することを望まない派遣社員については、まずは同社員を派遣元に送り戻し、その派遣を打ち切った後、もしも社員を補充する必要がある場合には、他の者の新規採用を検討するとよい。
1.派遣打ち切りの理由
「労働契約法」第65条、「暫定規定」第12条規定によれば、派遣打ち切りの主な理由は以下の通りである。
1)三者で協議の上合意している。
2)派遣社員が自主退職を申し入れた。
3)派遣社員が紀律に著しく違反した、又は「労働契約法」第39条規定のその他状況がある。
4)派遣社員が医療期間満了後にもとの業務を行なうことができず、別途手配した業務を行うこともできない。
5)派遣社員が業務に堪えることができず、職務調整又は研修後も業務に堪えることができない。
6)客観的状況に重大な変化が生じ、双方が使用関係の変更について合意できない。
7)企業に経済的人員削減が認められる状況が発生した。
8)企業が法に依拠し破産宣告を受けた、営業許可証の取消しを受けた、閉鎖を命じられた、登記を取消された、早期解散又は経営期間満了時に経営を継続しないことを決定した。
9)労務派遣協議書を期間満了をもって終了する。
上述規定のほか、実務においては、次に掲げる状況の場合にも派遣を打ち切ることが可能であり、リスクは高くはない。
例えば:
1)派遣社員が定年退職年齢に達しており、又は年金を受給している。
2)派遣社員の労働契約期間又は派遣期間が満了した。
3)労務派遣協議書を解除する場合など。
2.派遣打ち切り後に他の者を採用する
他の者を採用する場合、直接雇用の社員のほかに、例えば、再雇用者、非全日制職員、関連企業の出向者など特別な状況にある者を採用することでの雇用コスト削減を検討することも可能である。もっとも、要求に合致する者の人数には限りがあるため、特別な状況にある者を幅広く使用することは難しいと思われる。
まとめ
「暫定規定」第20条規定に基づき、違法な派遣を行った場合、企業は是正命令及び過料などの処罰を受けるおそれがある。従って、法的リスクを軽減するためにも、企業は移行期間内に上述のいずれか一つ又は複数の方案を取り交ぜて派遣社員の調整作業を円滑に完成させることが望ましい。
(里兆法律事務所が2015年10月23日付で作成)
[1]http://www.mohrss.gov.cn/gkml/xxgk/201401/t20140126_123297.htm
[2]http://www.gov.cn/flfg/2012-12/28/content_2305571.htm
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