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ログイン2016年2月12日
派遣社員の「雇用形態の変更」の際、「雇用形態の変更」前の勤務年数に対して経済補償金を支払っていない場合、使用者は、派遣社員の「雇用形態の変更」過程において社員の勤務年数をどのように扱うかという問題に直面することになる。「雇用形態の変更」状況として、以下のパターンが考えられる。
1.派遣社員を直接雇用の社員に切り替える場合(以下、「派遣社員の正規雇用化」という)
2.元々、直接雇用の社員であったが、後に派遣社員に切り替える場合(以下、「逆派遣」という)
3.派遣社員を異なる労務派遣企業間で移動させる場合(以下、「派遣企業間での移動」という)
これらについて、法律規定、司法実践及び実務上の取扱いを踏まえて考察する。
【法律条項を振り返る】
派遣社員の勤務年数の計算と継続に関する主な法的根拠:
1.「労働契約法実施条例」第10条:労働者が本人の原因によらずに元の使用者から新しい使用者での業務を手配された場合、元の使用者における労働者の勤務年数は新しい使用者における勤務年数に加算する。元の使用者がすでに労働者に対し経済的補償金を支払っている場合において、新しい使用者が法に依拠し労働契約を解除、終了し、経済的補償金を支払う勤務年数を計算するときは元の使用者における労働者の勤務年数は計算しない。
2.「労働紛争案件を審理する際の適用法律の若干事項に関する最高人民裁判所による解釈(四)」第5条:労働者が本人の原因によらずに元の使用者から新たしい使用者での業務を手配された場合、元の使用者が経済補償金を支払っておらず、労働者が労働契約法第三十八条規定に従い、新しい使用者と労働契約を解除
する場合、又は新しい使用者が労働者に対して労働契約の解除、終了を申し入れた場合で、経済補償金又は賠償金を支払うために勤務年数を計算するとき、労働者が元の使用者における勤務年数を新しい使用者での勤務年数に加算するよう請求した場合、人民裁判所はこれを支持しなければならない。使用者が以下に列挙するいずれかの状況に合致する場合、「労働者が本人の原因によらずに元の使用者から新しい使用者での業務を手配された場合」として認定しなければならない。(一)労働者が依然として元の勤務場所、持ち場で勤務しており、労働契約の主体がもとの使用者から新しい使用者に変わった場合、(二)使用者が委任派遣又は任命により労働者の配置転換を行った場合、(三)使用者の合併、分割などにより労働者の配置転換が生じた場合、(四)使用者及びその関連企業が労働者と交互に労働契約を締結した場合、(五)その他合理的状況。
【考察】
1.労務派遣企業は、「労働契約法実施条例」第10条における使用者に該当するか。
「労働契約法実施条例」第10条によれば、「労働者が本人の原因によらずに元の使用者から新しい使用者での業務を手配された場合」、経済補償金を支払済みである場合を除いて、「元の使用者における労働者の勤務年数を新しい使用者における勤務年数に加算する」ことになっている。しかし、労務派遣企業は特異な性質を有する(労務派遣業務を取り扱う)ため、本規定における使用者として本規定が適用されるであろうか。
労務派遣企業は一般的な使用者と異なる点があるが、以下の理由により、「労働契約法実施条例」第10条における使用者に該当し、本規定の適用を妨げるものではないと筆者は考える。
1)法律は労務派遣企業を使用者の範囲から除外していない。「労働契約法」では労務派遣について、個別に章を設けて定めており、また労務派遣企業は一般的な使用者と異なる点があるが、法律は労務派遣企業を使用者の範囲から除外しておらず、従って、労務派遣企業は本規定の使用者に該当する。
2)「労働紛争案件を審理する際の適用法律の若干事項に関する最高人民裁判所による解釈(四)」第5条では、「本人の原因によらずに元の使用者から新しい使用者での業務を手配された場合」について明確に説明している。
・労働者が依然として元の勤務場所、持ち場で勤務しており、労働契約の主体が元の使用者から新しい使用者に変わった場合
・使用者が委任派遣又は任命により労働者の配置転換を行った場合
・使用者の合併、分割などにより労働者の配置転換が生じた場合
・使用者及びその関連企業が労働者と交互に労働契約を締結した場合
・その他合理的状況。
上述の説明でも労務派遣企業を使用者の範囲から除外しておらず、派遣社員が労務派遣企業と派遣受入企業との間で移動する場合も、「労働者が依然として元の勤務場所、持ち場で勤務しており、労働契約の主体が元の使用者から新しい使用者に変わった場合」にほぼ当てはまる。
3)この点については、これを認める司法判例も現在存在する。例えば、「上海市第二中級人民裁判所(2014)滬二中民三(民)終字第1576号民事判決書」などがそれである。
2.勤務年数継続の認定条件
労務派遣企業は、「労働契約法実施条例」第10条の適用範囲内であるが、派遣社員の「雇用形態の変更」が労務派遣企業と派遣受入企業との間で行われさえすれば、同社員の勤務年数を必ず通期計算しなければならないというわけではない。規定によれば、勤務年数を継続するには以下の2つの条件を満たさなければならないことになっている。
1)使用者の変更が本人の原因によらないこと:「本人の原因によらず使用者を変更する場合」に関しては、上述の通り、「労働紛争案件を審理する際の適用法律の若干事項に関する最高人民裁判所による解釈(四)」第5条において明確に説明されており、「本人の原因によらず使用者を変更した」ことの証明責任は派遣社員にあり、当該変動は派遣受入企業が手配したものであることを証明する必要があるが、派遣受入企業がこれを否認する場合には通常、派遣社員の意思で前労働関係を解除し、派遣社員の意思で新しい使用者のもとで勤務することになったことを証明しなければならない。
2)使用者を変更した時に派遣社員が経済補償金を受け取っていないこと:「労働契約法実施条例」第10条の規定によれば、派遣社員が「雇用形態の変更」時に、変更前の勤務年数について経済補償金を受け取っている場合、勤務年数は新しい使用者に承継されないことになっている。しかし、元の使用者が経済補償金を支払っていなければ、元の使用者における勤務年数を新しい使用者が必ず承継しなければならないというわけではなく、元の使用者が経済補償金を支払う必要があるかどうかを確定するには、派遣社員が元の勤務先を離職するに至った原因を確認する必要があり、「労働契約法」第46条規定の状況に該当する場合に限り、元の使用者は経済補償金を支払わなければならない点に注意する必要がある。
【派遣社員の雇用形態を変更する場合の勤務年数継続状況のまとめ】
上述の考察によれば、派遣社員の「雇用形態の変更」が、元の使用者(労務派遣企業を含む)による手配又は労務派遣企業と派遣受入企業が合意のうえでの手配が原因で行われ、尚且つ元の使用者(労務派遣企業を含む)が派遣社員に対して経済補償金を支払っておらず、派遣受入企業も立て替えていない場合、派遣社員の「雇用形態の変更」後、同社員の勤務年数は新しい使用者に承継されることになる。下表にて状況別にまとめる。
番号 | 状況 | 雇用形態の変更状況 | 勤務年数継続状況 |
1 | A B │ │ │ |
派遣社員の正規雇用化:派遣社員が先ず、労務派遣企業Aと労働契約を締結し、Bに派遣され、後に「正規雇用化」されて、Bと労働契約を締結する。 | 派遣社員がAから派遣されてBで勤務した期間における勤務年数はBに承継される。 |
1 | A B │ │ │ |
逆派遣:労働者が先ず、使用者Aと労働契約を締結し、後にAの手配により、労務派遣企業Bと契約を締結してから、BがAに逆派遣する。 | 派遣社員のAでの勤務年数はBに承継される。 |
2 | A B C │ │ │ │ |
派遣企業間での移動:派遣社員が労務派遣企業A、B、Cの手配により、相前後してA、B、Cと労働契約を締結し、派遣企業間を移動する。 | 派遣社員のA、Bにおける勤務年数はCに承継される。 |
【まとめ】
派遣社員の「雇用形態の変更」過程においては通常、労務派遣企業、派遣社員、派遣受入企業の三者に関係してくるものであるため、経済補償金と勤務年数継続の問題に直面した場合、争いにならないよう、三者間で協議書を締結し、勤務年数の継続及び関係事項について明確にしておくことが望ましい。
(里兆法律事務所が2015年12月1日付で作成)
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