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ログイン2016年8月16日
「民事訴訟法」などの関係規定に基づき、財産保全を申し立てるにあたっては、「担保」を提供しなければならない。これまでの司法実践においては、裁判所で認められる担保形式はやや単一で、多くの地方裁判所は通常、現金形式による担保しか認めていなかったが、ここ数年、融資性担保会社が提供する信用保証、保険会社が提供する財産保全責任保険による「保険証券・保証状」が裁判所によって認められるケースが徐々に増えてきている。本稿では、これら2つの形式による担保について簡潔に紹介する。
■ 融資性担保会社による信用保証
【立法状況】
– 2010年3月8日に、7つの部門・委員会が共同で「融資性担保会社管理暫定弁法」(以下、「暫定弁法」という)を公布した。このうち、第19条の規定によれば、融資性担保会社は監督管理部門の許可を得た場合、「訴訟保全担保」を兼業することができることになっており、従って、「暫定弁法」は全国レベルで、融資性担保会社が提供する財産保全における信用保証の適法性を認めている。
– 一部の地区の高級人民法院は司法規範性文書を公布し、融資性担保会社が財産保全に介入するための要件、規範などを明確にしている。例えば、以下の通りである。
1) 「上海市高級人民法院による財産保全作業に関する規定」:融資性担保会社は裁判所の審査を受け、且つ認可を得なければならない。裁判所は担保会社名簿管理制度を構築するなど。
2) 「北京市高級人民法院による立件段階における財産保全試行作業に関する若干規定(試行)」:融資性担保会社は相応の経営範囲を具備し、1億元以上の登録資本を有し、3年連続して黒字であること。違法記録・犯罪歴がないこと。裁判所の審査に合格しているなど。
3) 「浙江省高級人民法院による財産保全担保の若干事項に関する意見(試行)」:融資性担保会社は相応の経営範囲を具備し、5000万以上の登録資本を有し、3年連続して黒字であること。違法記録・犯罪歴がないこと。保証金専用口座の口座取引明細書を提供することなど。
【司法実践】
– 融資性担保会社による信用保証は、立法レベルで認められるようになり、また具体化した関連規定ができたことから、財産保全の担保形式として大多数の裁判所によって徐々に認められるようになり、当該担保形式の普及率はやや高い。
■ 保険会社による財産保全責任保険
【立法状況】
– 2016年5月11日、最高人民法院は「『2年から3年の時間をかけて執行難の問題を概ね解決する』ための作業概要」(以下、「『作業概要』」という)で「立件段階における執行リスクの告知、及び保全、早期執行の申請に関する説明の実施を徹底し、財産保全における保険担保を支持、奨励する」ことを言及している。
– 全国レベルでは「作業概要」を除いては、財産保全責任保険について明確且つ統一した規定はまだなく、主に保険監督管理委員会が各保険会社から報告される保険の条項内容及び料率について個別に回答するという形で実施している。
– 地方レベルでは、2015年から、江蘇、浙江、福建、安徽、天津、山西、内モンゴル、広東、広西、湖南、四川、貴州など10数箇所の高級人民法院が相次いで地方司法規範性文書の形で、財産保全責任保険の適法性を認めている。その他の地区では、明確な関係規定はまだ出されていない。
【司法実践】
– 保険会社の資産信用状況、経営の規範性などの方面における水準がやや高いことから、各地の裁判所(関係規定を公布していない地区を含む。例えば、上海)が財産保全責任保険の「保険証券・保証状」を担保として認めるケースは徐々に増えてきており、現在、中国の一部の地区(特に、商業がやや発達している地区)の裁判所ではある程度一般化している。
– 「作業概要」の公布・実施に伴い、将来、裁判所によって財産保全責任保険が認められるケースはますます増えていくと考えられる。
■ 融資性担保会社と保険会社の比較対照
各機構によっては、具体的な条項、対応方法に微細な違いがある可能性がある。融資性担保会社の信用保証、及び保険会社の財産保全責任保険について重要ポイントのみに焦点をあて、以下の通り比較している。
区分 | 融資性担保会社 | 保険会社 |
法的性質 | -「担保法」における「保証」の場合、融資性担保会社は保証人であり、財産保全申請者は債務者である。 | -「保険法」における「責任保険」の場合、保険会社は保険者であり、財産保全申請者は保険付保者、被保険者である。 |
責任負担 | -性質的には保証であるため、融資性担保会社は保証責任を負った後、財産保全申請者に求償する権利を有する。 | -性質的には責任保険であるため、保険会社は保険事故が発生し賠償した後、財産保全申請者に求償することはない。 |
認可範囲 | -大多数の裁判所は、融資性担保会社が提供する信用保証を認めている。 | -一部の地区におけるほとんどの裁判所は保険会社が発行する「保険証券・保証状」を認めており、認められるケースは全国範囲で絶えず増えていく傾向にある。 |
保証金額 | -融資性担保会社による1件あたりの信用保証金額は通常、純資本又は登録資本に占める一定の割合(純資本の10%が一般的でああるが、各地の裁判所によっては、これよりも高い割合で求められる可能性がある)を超えてはならない。高額な信用保証については、その他の機構と共同で提供することになる可能性がある。 | -保険会社は通常、資本力が比較的良好であるため、高額な財産保全の担保であっても単独で「保険証券・保証状」を発行することが可能。 |
対応スピード | -融資性担保会社による書類審査は比較的簡単であり、対応スピードは比較的速い。 | -保険会社による書類審査は相対的に見て慎重に行われ、対応スピードは通常、融資性担保会社より遅い。 |
対応にかかる費用 | -通常やや安く、且つある程度相談の余地がある。 | -通常、融資性担保会社より高い。 |
全体評価 | -認められるケースは全国範囲で多く見られる。対応は比較的早い。費用は比較的安い。但し、事後、財産保全申請者に求償する可能性がある(もっとも、実務では、求償の発生確率はとても低い)。 | -財産保全申請者に求償することはない。単独で高額な財産保全担保の対応ができる。但し、審査は比較的慎重に行われ、費用は高めである。 |
上記内容は、筆者が法律規定、最近の実務における運用状況を踏まえたうえで整理したものである。実践では、各地の裁判所の観点、各外部機構の実際の状況がそれぞれ異なるため、もしこのような必要があれば、財産保全の実際の状況と合わせて、各方面の要素を総合的に考慮し、適切な外部機構を慎重に選定する必要がある。
(里兆法律事務所が2016年6月12日付で作成)
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