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中国ビジネスレポート 法務
王 穏

王 穏

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2007年1月27日

記事概要

1.「外国企業駐在員事務所登記管理条例」 2007年中に頒布予定
2.2007年前半、国家工商総局が外資企業審査登記の新しい規定を頒布する可能性あり。
3.「企業所得税法」草案、2006年12月24日に立法審査に提出。など。

 法律情報

1. 「外国企業駐在員事務所登記管理条例」 2007年中に頒布予定
 法整備の一環として駐在員事務所の管理強化を図る。
2. 2007年前半、国家工商総局が外資企業審査登記の新しい規定を頒布する可能性あり。
 今までの規定不明なところ(例えば増資期限等)を更に明確する狙い。
3. 「企業所得税法」草案、2006年12月24日に立法審査に提出。
 内外税率の統一は、いよいよ実現。また、25%に統一する見込み。
4. 国家級ハイテク産業開発区の税収優遇措置を拡大。
 ハイテク企業の認可を得れば、ハイテク産業開発区内でなくても税収面の優遇を。
5. 上海市「企業不定時労働時間制と総合計算労働時間制審査弁法」頒布
 不定時労働時間制・総合計算労働時間制の審査基準などを更に明確化。

 実務情報

1. 工商局・外国投資者の身分証明の公証認証審査を強化する方針。
2. 外高橋保税区新設商業企業の名称認定に要注意。
 念のために工商局だけではなく、外資委員会にも事前確認を。
3. 常州、呉江輸出加工区、2006年12月12日国家検収に合格。
 昆山、工業園区、ハイテク園区に続き、蘇州に5つの国家級輸出加工区を有することに。

 新規情報

1. 「製品油市場管理弁法」 (商務部2006年12月24日頒布、2007年1月1日施行)
2. 「原油市場管理弁法」 (商務部2006年12月24日頒布、2007年1月1日施行)
3. 「印紙税に関する若干政策の通知」  (財政部・税務総局2006年11月27日頒布・施行)
4. 「上海市個人所得税の自己申告の実施に関する意見(暫定)」
(上海市地税局2006年12月7日施行)
5. 「国際貨物輸送代理業管理規定実施細則(改正・意見聴取草案)」
6. 「洗濯業管理弁法(意見聴取草案)」

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 法律情報

1. 「外国企業駐在員事務所登記管理条例」 2007年中に頒布予定

 駐在員事務所による直接的な経営活動を厳格に禁止。
① 新条例は、「直接的な経営活動」の定義を明確にすることにより、工商局の取締りの明確な法的根拠を提供することを図る。
 駐在員事務所の雇用について詳細に規定。
② 駐在員事務所による従業員雇用の方法、プロセスを明確にする予定。
 税収面の処遇を明確。
③ 今まで税務署の裁量権の大きい免税待遇、所得税・営業税の処理方法などを明文で規定。

【コメント】
外国企業の駐在員事務所は、これまでも経営活動を行ってはならないとされているが、その定義が不明であるだけに、混乱が生じている。来年この管理条例の頒布をきっかけに、駐在員事務所に対する取締り強化は必至となろう。

2. 2007年前半、国家工商総局が外資企業審査登記の新しい規定を頒布する可能性あり。

 81号令 頒布後、外資企業の審査登記面において多くの曖昧なところが存在し、各地で混乱が生じている。このため、工商局などは、11月30日までに各地の意見を聴取し、早ければ2007年前半にでも新たな規定を頒布する予定である。
 新規定は、以下の問題を更に明確にする予定:
① 増資による営業許可証の変更登記期限を延長
現行の規定では、外資企業が増資する場合、外資委員会の認可取得後30日以内に営業許可証の変更登記をしなければならない。しかし、外資委員会の認可取得後に、外貨登記証の変更や資本金の験資報告書の発行などを、1ヶ月以内に終わらせることは、非常に困難である。これを受け、3ヶ月前後までその期間を延長するであろう。
② 新設の外資企業は、監査役会か監査役の設置義務を明確。
③ 外資企業の国内再投資に対する制限を撤廃。
現行の法律法規の規定では、外資企業が再投資できる一つの前提条件として黒字に転じることであった。これらの制限を撤廃することにより、外資企業の規制緩和を図る。
ただ、実務上許認可機関は、再投資しようとする外資企業に対して、その再投資の体力を確認するために、監査報告書などの提出を求めるであろう。

【コメント】
外資企業の許認可権限を握る外資委員会、その他管轄機関と比べて、工商局の役割は、設立後の経営活動の適法を検査するものであり、本来登記についての形式審査のみにとどまるはずであるが、工商局としては、更に許認可まで権限を明確化にしたい思惑がうかがえる。
当所で取扱う案件の中ですでに実態を把握しているが、外資企業設立、変更時に、同じ行政機関である外資委員会と工商局との意見対立が目立つようになり、今後その対応に追われる場面も増えると推測している。

3. 「企業所得税法」草案、2006年12月24日に立法審査に提出。

 税率:
25%に統一。
 次の税引き前の控除項目に統一
給料、寄付金、研究開発費用、広告費用
 今までの税収優遇措置に5年の猶予期間
今まで税収優遇措置を受けている外資生産型企業に5年間の猶予期間を設ける。5年後新所得税法を適用する。
ただ、新設の外資生産型企業には、所得税の優遇措置を撤廃する。
 Tax Haven企業による中国投資は、監督管理・検査の重点とされる。
 頒布後、国務院・税務総局は、更に実施細則をはじめ諸規定、細則を頒布し、実務上の問題に対処していくであろう。

【コメント】
 近年もっとも注目を受け、何度も統一がうわさになっていた税率がようやく落ち着くように見える。
 新設の外資企業は、一切税収上の優遇措置を受けられなくなるが、これによる外商投資の伸び悩みは、一部の地域では、地方財政からの補助金などの形で外資企業に実質上の税収優遇措置を与えるのではないかという見方もある。
 内資企業の名目税率を33%から25%に引き下げただけに、内資企業に対する監督管理が強化される意味で、外資企業に対する注目度も若干下がるのではないかという期待もある。

4. 国家級ハイテク産業開発区の税収優遇措置を拡大。

 現行政策・規定では、開発区内に登録地を持つハイテク企業のみが、税収上の優遇措置を受けられるとしてきたため、開発区内の土地価格上昇を助長することになり、現行の土地政策と逆効果となる。
 現行政策・規定の是正として、ハイテク企業という認定さえしてもらえば、仮に開発区外であっても、税収上の優遇措置が受けられるようになる。

【コメント】
 実務上開発区にバーチャル登録していて、実質上の経営活動は、区外で行っている企業にとっては朗報であろう。また、新設のハイテク企業にも、お気に入りの立地を選択できるようになる。
 ただ、今までハイテク企業は簡単に認可してもらえてきたが、今後その基準並びに監督管理が強化されることは必至であろう。

5. 上海市「企業不定時労働時間制と総合計算労働時間制審査弁法」頒布

 不定時労働時間制、総合計算労働時間制の有効期限は2年とされる。期限満了後新たに申請し、実質上の許認可を受けることになる。
 実務上、管轄の労働局は不定時労働時間制、総合計算労働時間制の適用従業員リストの提出だけではなく、企業による適用従業員に対する説明義務も求めている。

【コメント】
 区によって、取扱いが違ったりしていたが、この弁法の頒布による明確化を期待。
 また、労働仲裁、訴訟の段階になると、仲裁委員、裁判官から適用従業員の明確な書面同意を求めるなど、労働局の基準よりも厳しくしている。従って、不定時労働時間制、総合計算労働時間制の実施に伴うリスクを最小限にするためには、この審査弁法の要求以上に、念のために従業員との労働契約・就業規則にも明文規定を織り込むことが望ましい。

 実務情報

1. 工商局・外国投資者の身分証明の公証認証審査を強化する方針。
 公証認証偽造の案件が増えているため、各地の公証局は、外国投資者(企業、個人を含む)の身分証明書(企業の場合:登記簿謄本、個人の場合:パスポート)の公証認証に対する審査を強化している模様。
 例えば、投資者が正式申請前の仮名称登記の段階でも公証認証の原本の提出を求められるようになったため、設立時や変更時にこれらに影響され手続きの遅延をもたらさないように充分注意する必要がある。

【コメント】
 日本、アメリカ、香港、台湾などの公証認証原本と偽物を識別できるようにするため、勉強会を開いている工商局もある。
 新米の窓口担当は、ベテランに確認を求めたりしているなど、本物でも確認に時間がかかった場合もある。

2. 外高橋保税区新設商業企業の名称認定に要注意。

 外資企業の許認可・登記について、工商局と外資委員会はいずれも相手が許認可又は登記した事項に対して異議を提起する(例えば企業名が法的規定に合致するかどうか、定款が法的規定に合致するかどうか)ことができるようになったため、新設の保税区商業企業の名称認定において、外資委員会と工商局の意見が正反対になっていることもあった。
 特にもっとも経営範囲の広いパーツセンター型の保税区企業で、商業企業の機能も同時に申請する場合、これまでは保税区工商局や市工商局が特に「貿易」という業種名を必ずつけることに拘らなかったが、外資委員会との調整の結果、今後必ず「貿易」をつけなければならないことになった。

【コメント】
 仮名称登記においては、理屈より、担当窓口や市工商局の内部意見が最重要となっている(区工商局を通っても市工商局で「×」となったケースも増えている)。新設企業が増え、使用済みの名前も増えているだけに、念には念を入れ予め名称が使用できるかどうかを確認する必要があろう。

3. 常州、呉江輸出加工区、2006年12月12日国家検収に合格。
 主な誘致産業
常州: 精密機械、自動車部品、電子情報など
呉江: 産業機械、金属製品など
 蘇州は、5つ(中国の地域では最も多い)の輸出加工区を擁することになる。

【コメント】
 蘇州は、ますます外商投資企業の注目を浴びるであろう。

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以上の内容は、当事務所の正式法律意見ではなく、参考に供するもののみである点、ご了承下さい。

(2007年1月記・4,030字)

 

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