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コロナ禍での現地法人駐在員交代に関するFAQ

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2020年9月14日

概要: 2020年初め、新型コロナウィルス感染症発生による影響が世界中に広がり、その対策として、諸国が外国人の出入国を制限する水際対策や措置を講じている。このような状況下では、現地法人の駐在員交代が難題となっている。本稿では、中国法律法規及び現時点での外国人出入国に関する実務取扱状況を踏まえ、現在の現地法人駐在員交代に関係する事項をFAQ形式で紹介する。

本文:

Q1.新型コロナウィルス感染症発生による影響(以下「コロナ禍」という)下であっても、中国国内で設立された現地法人(以下「現地法人」という)又は中国国外の親会社(以下「本社」という)の要求により、現地法人が駐在員[1]の交代を行わなければならない可能性があり、その場合、後任駐在員の職務権限はどのように発生し、どの時点で効力が生じるか?

A:「中華人民共和国会社法」の規定によれば、後任駐在員が現地法人で総経理、副総経理、財務責任者等の職務に就く場合、その職務権限は現地法人董事会の任命によるものであり、発効日は董事会が発布する任命決定書に明記された日となる。後任駐在員が現地法人で上記職務以外の管理職に就く場合、各社の社内規則によっても異なるが、原則として、職務権限は現地法人総経理の任命によるものであり、発効日は総経理が発布した任命決定書に明記された日となる。

もしも現地法人董事会又は総経理の任命決定が、実際には、本社の任命決定に基づきなされたものであるならば、後任駐在員の職務権限は、実質的には本社の任命決定によるものであり、その発効日は本社の任命決定書に明記された日となる(董事会又は総経理の任命決定書に明記される日は、本社からの任命日と一致する、とも言える)。

 Q2.仮に現地法人又は本社の任命決定は202041日から発効するが、コロナ禍で後任駐在員がなかなか赴任できない場合、後任駐在員は現地法人に対し職務権限を有するか?

A:Q1の回答を踏まえると、後任駐在員は現地法人に対し職務権限を有する。後任駐在員に変更することで現地法人は政府届出手続きを行う必要があるが、たとえ当該届出手続きを行っていなかったとしても、後任駐在員の職務権限及びその発効時期には影響しない。

 Q3.Q2の前提のもと、もしも後任駐在員が中国国内に実際に居住しておらず、現地法人の同僚にその職務権限の代行を委託することができるか?職務権限を委託するためには、どのような手順を踏む必要があるか?

A:後任駐在員が職務権限を同僚に委託する行為は、「民法総則」に定める委託代理行為に該当し、且つ一身専属的な行為(例えば、結婚登記、養子縁組、演出等一身専属性を有する行為)には該当しないことから、後任駐在員は職務権限の代行を現地法人の同僚に委託することができる。

職務権限を委託する手順は以下の通りである。

1)本社又は現地法人の内部規則制度に、職務権限の委託について明確な規定がある場合は、当該規定に従い、職務権限を委託しなければならない。

2)本社又は現地法人の内部規則制度に、職務権限の委託について明確な規定がない場合、委託者(後任駐在員)は受託者(現地法人の同僚)に対して授権委任状を発行し、授権委任状には、委託者と受託者の本人基本情報、委託事項、委託権限、委託期限等の情報を明記した上で委託者が署名する必要がある。

Q4.もしも後任駐在員がそれまで中国国内の他の関連会社に勤務していた場合、雇用先を変更することはできるか?旧雇用先企業で、後任駐在員が着任していないため一時的に職務から離れられない場合、現地法人及び関連会社で兼務することはできるか?

A:雇用先を変更することはできる。「外国人在中国就業管理規定」第十九条及び第二十三条の規定によるならば、後任駐在員は就労許可証手続きを改めて行い、又は変更手続きを行い、且つ就労類居留証を変更しなければならない。

「外国人在中国就業管理規定」第二十三条の規定によると、外国人は就業証に明記されている雇用先でしか就労できず、他の組織で兼職してはならないとされている。但し、上海地区では例外規定があり、つまり、「『外国人在中国就業管理規定』の貫徹に関する若干意見」第二十条では、本社が投資し設立した複数の企業がいずれも上海に登録している場合(外商独資企業、中国側及び/又は他の外国投資者と共同で投資し設立した企業を含み、投資比率に制限はない)、本社から派遣される駐在員はこれらの企業で兼務することができる、と定められている。

Q5.Q2の前提のもと、もしも前任駐在員と現地法人との労働契約の期間が満了し、且つ本社又は現地法人から再任の任命がまだ下されておらず又はすでに解任されたが、後任駐在員が着任できていない場合、前任駐在員は引き続き現地法人で職務に就くことができるか?職務権限を有するか?

A:「外国人在中国就業管理規定」第十八条によると、前任駐在員の労働契約期間が満了している場合、就労許可はその時点で失効することになり、現地法人は政府部門へ報告の上、且つ就労許可証及び就労類居留証を返納しなければならない、とされている。つまり、前任駐在員は引き続き現地法人で職に就くことはできず、相応の職務権限も有しない。

Q6.Q2の前提のもと、前任駐在員は解任されていないが、その就労許可がまもなく期間切れとなる場合、どのように取り扱うべきか?

A:もしも前任駐在員の労働契約期間が満了していないが、就労許可証がまもなく期間切れとなる場合、現地法人は、前任駐在員の就労許可延期手続きを行う義務がある。

もしも前任駐在員の労働契約と就労許可証がいずれも期間切れとなるが、現地法人が前任駐在員の雇用を継続したい場合、現地法人は前任駐在員との労働契約を更新し、且つ旧労働契約期間が満了する日から遡って30日以内に、政府部門に対し雇用期間延長の申請を行い、就労許可延期手続きを行わなければならない。

Q7.直近において、外国人の中国入境査証手続きの状況はどうなっているか?もしも後任駐在員が就労ビザ手続きを行うことができない場合、商用ビザ等その他のタイプのビザ手続きを行うことはできるか?その他タイプのビザ手続きを行い、実際に中国国内で就労する場合、リスクを伴わないか?

A:「有効な訪中査証や居留許可を所持する外国人の入境を一時停止する公告」の規定[2]によると、外国人は現時点で有効な訪中査証及び居留許可をもって入境することが一時的にできず、外国人が訪中して必要な経済貿易、科学技術等の活動に従事する場合、及び緊急の人道主義の必要に基づく場合は、査証の申請手続きを改めて行ったうえで入境することができる、とされていが、現在、中国各地ではこの点についての明確な政策を出していない。実務上、コロナ禍において、外国人向けの査証申請作業は停滞したままであり、直近で政府部門に問い合わせたところ、外国人向けの商用ビザ(Mビザ)の再開が段階的に進められている最中ではあるが、外国人向けの就労ビザ(Zビザ)手続は現時点でまだ取り扱うことができていないとのことである。現在、上海、江蘇、珠海等地方政府の外事部門、商務部門では、企業からの申請の受理を開始しており、すでに個別の外国人が許可を経て、招へい状を取得し、商用ビザをもって入境している。

「外国人在中国就業管理規定」第八条の規定によると、中国で就労する外国人はZビザをもって入境しなければならないとされており、そのため、商用ビザ等その他のタイプの査証を所持する外国人は中国国内で就労してはならない。また、商用ビザを所持しても、中国での滞在期間は通常、180日を超えてはならず、一部地域では、(例えば、蘇州など)90日の中国滞在査証手続きだけを認めている。

外国人が商用ビザ等その他のタイプの査証を所持し、中国国内で就労する場合、「不法就労」と認定されるリスクを伴う。「外国人在中国就業管理規定」第八条の規定によれば、外国人はZビザを所持する場合のみ、就労許可及び就労類居留証手続きを行うことができるとされており、「中華人民共和国出境入境管理法」第四十一条及び第四十三条の規定を踏まえると、外国人が就労許可及び就労類居留証を取得せずに、中国国内で就労した場合、「不法就労」に該当することになる。

Q8.「外国人永久居留証」を所持する外国人は、査証、コロナ禍等の影響を受けることなく、引き続き中国に滞在することができるのか?「外国人永久居留証」の手続きはどのように行えばよいのか?手続きを取り扱うには、どのような条件を満たす必要があるか?手続き完了までの必要期間はどれくらいか?

1.「外国人在中国永久居留審査許可管理弁法」第二条及び第四条の規定によれば、「外国人永久居留証」を所持する外国人は、査証手続きは一切不要とし、コロナ禍等の影響も受けることもなく、引き続き中国に滞在することができるとされている。

2.現在、外国人が「外国人永久居留証」を申請するために必要とされる条件は、下表の通りである。

種別

な申請条件の区別

投資者

以下に掲げる条件のいずれかを満たすこと。

●  国家奨励類産業への実際の投資額が合計50万米ドル以上(連続3年間)である。

●  中国の西部地域、国家困窮者支援開発事業重点県への実際の投資額が合計50万米ドル以上(連続3年間)である。

●  中国の中部地域への実際の投資額が合計100万米ドル以上(連続3年間)である。

●  中国への実際の投資額が合計200万米ドル以上(連続3年間)である。

任職者

以下に掲げる全ての条件を満たすこと。

①副総経理等の職務以上に就き、又は副教授等の副高級職称以上であり、且つそれと同等の待遇を満4年間享受している。

②雇用先が「審査許可管理弁法」における雇用先に対する要求に合致する。

③ 4年間中国に居留し、その期間が3年間を下回ってはならず、納税記録が良好な者。

夫婦団欒

以下に掲げる全ての条件を満たすこと。

①配偶者の一方が中国公民(中国常住戸籍者)であり、又は永久居留資格を取得している外国人である。

②結婚して満5年に達し、且つ毎年の居留期間が9か月を下回ってはならない。

③安定した生活の保障と住所を有する。

親子団欒

以下に掲げる全ての条件を満たすこと。

①両親の一方が中国公民(中国常住戸籍者)であり、又は永久居留資格を取得している外国人である。

②申請者が外国籍者、満18才未満、且つ未婚者でなければならない。

③両親の中国における結婚証明。

④申請者の出生証明又は親子関係証明、又は養子縁組証明。

親族扶養

以下に掲げる全ての条件を満たすこと。

①申請者が満60才以上。

②中国国外に直系の親族がない。

③中国滞在が連続して満5年以上に達し、且つ毎年9か月を下回ってはならない。

④身を寄せられる国内の親族との関係の証明。

⑤身を寄せる者の資金源証明又は身を寄せられる者の経済的担保証明。

⑥外国籍を有する中国人の場合、国籍確認に関する資料の提出を要する。

地域政策

中国各省(又は地域)では、外国人による外国人永久居留の申請について特別な規定を定めている。例えば、上海の「双自」(張江国家自主創新示範区、中国(上海)自由貿易試験区)、「双創」(国務院の批准を経て設立された「大衆の起業、万人の革新」模範基地)地域において、外国人が区内の組織における勤続年数が満4年に達し、納税記録が良好であり、且つ毎年の中国国内居住期間が累計して6ヶ月以上に達し、外国籍を有する中国人であれば、外国人永久居留の手続きを申請することができる。

3.外国人が「外国人永久居留証」手続きを申請する場合、通常、申請日から起算し、180業務日以内に処理完了される。

終わりに

以上はあくまでも現地法人駐在員の交代にあたり発生するいくつかの問題に回答したものである。なお、現在、世界中で1日あたり十数万人の新規感染が確認される状況が続いており、感染拡大状況はまだ沈静化しておらず、外国人に対する中国への入境査証政策は、さらに変化していく可能性があるため、各企業において駐在員の中国への入境手続きを取り扱う際には、やはり現地政府部門へ問い合わせる必要があり、筆者も引き続き注意を払っていきたい。

(里兆法律事務所が2020年7月9日付で作成)

[1] 本稿でいう「駐在員」とは、本社又は現地法人との間で労働関係を有し、本社から現地法人へ委任派遣され、職に就く外国籍人員をいう。

[2]「有効な訪中査証や居留許可を所持する外国人の入境を一時停止する公告」(中華人民共和国外交部、国家移民管理局。2020年3月26日):新型コロナウイルス感染による肺炎の状況が世界中で急速に蔓延していることに鑑み、中国は20203280時より、現在有効な訪中査証及び居留許可を持つ外国人の入境を一時的に停止することを決定した。

APEC・ビジネス・トラベル・カードを持つ外国人の入境も一時停止する。寄港地ビザ、24/72/144時間通過ビザ免除、海南省入境ビザ免除、上海クルーズ船ビザ免除、香港・マカオ地区の外国人が団体で広東省に入境する際の144時間ビザ免除、ASEANからの旅行団体が広西チワン族自治区に入境する際のビザ免除等の政策も一時的に停止する。外交、公務、礼遇、乗務員(C)ビザで入境する場合は影響を受けない。外国人が訪中して必要な経済貿易、科学技術等の活動に従事する場合、及び緊急の人道主義の必要に基づく場合は、中国の在外公館に査証の申請をすることができる。公告後に査証を発給された外国人の入境については影響を受けない。

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