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【濱の金融マンの海外取引実務コラム】第1回 信用状取引の特徴

国際ビジネスレポート 外為・貿易実務
甲良 親弘

甲良 親弘

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2020年9月23日

第1回 信用状取引の特徴

Q 信用状とはどのようなものですか?

信用状(Letter of Credit; LC)とは、銀行が信用状に記載した貿易関係の書類を呈示すれば、当該信用状に記載されている金額を支払うことを約束した書状です。

外国の取引先と取引を行なう場合、取引の双方が外国という遠隔地に所在することから、輸入者すなわちバイヤーは、例えば前払いを行ったにもかわわらず、自らが注文した商品が本当に届くかという心配があります。一方、輸出者すなわちセラーからしてみれば、商品を発送したにもかかわらず、代金は回収できるのかという不安が常にあります。
こうした輸入者・輸出者双方の不安を、銀行が介在し、銀行の信用力を背景に確約状を発行することにより、取引の円滑化を図るのが信用状です。

Q 信用状の意味・特徴を教えて下さい。

信用状は古代から類似の仕組みが使用されていたようで、古くはエジプトのバビロンで粘土を使用した手形が発見されています。現在は、信用状の統一規則を民間団体である国際商業会議所(International Chamber of Commerce)が定めており、それに準拠した形式に則り世界中で取引が行なわれています。
国際商業会議所(International Chamber of Commerce)が出版した出版番号600(The Uniform Customs and Practice for Documentary Credits, 2007 Revision, ICC Publication No. 600 (UCP600))が、現在使用されている信用状統一規則となっています。

信用状取引を行なう上で、留意しておきたい3つの特性があります。

(1) 銀行が発行する支払い確約文書であること

信用状は、輸入者(バイヤー)の要請により銀行が発行するものですが、対外的にはあくまで「銀行」が発行するもので、支払い義務を追っているのは発行銀行です。当然のことながら、信用状の発行銀行は輸入者からの依頼に基づいてそのリスクをとり信用状を発行していますが、信用状は取消不能であり、一度発行されれば関係当事者の了解が得られなければ取り消すことは出来ない、銀行の支払い確約です。(UCP600第1条参照)

(2) 売買契約とは別個の取引であること ~ 独立抽象性

信用状は、売買契約に基づいて、モノを買いたい輸入者が銀行に依頼して発行をしてもらうものですが、輸出入者間の売買契約や、それに付随する諸々の事項からは完全に独立しており、信用状に売買契約に関係する事項が言及されていても、銀行はこのような契約とは無関係でそれに拘束されることはありません。そのため、もし信用状の発行を依頼した輸入者が倒産してしまい、業務を停止してしまっても、発行銀行はその支払いを免れることは出来ないのです。(同第4条参照)

(3) 信用状に記載された書類が提示されれば銀行は支払いに応じる必要があること ~ 書類取引

銀行が輸出入者間の売買契約の履行を一つ一つ確認することは実務上不可能です。信用状を発行する銀行は、あくまで書類を取り扱うものであり、その書類が関係する商品やサービス・履行を扱うものではありません。信用状に記載された書類が提示されれば銀行には支払い義務があるのです。一方、当事者間の売買契約になにがしかの契約違反があったとしても、信用状に記載された書類が提示されれば、銀行には信用状に記載された金額を支払う義務があるということです。(同第5条参照)

Q 実務上の留意点について

輸出入の当事者間では、実務上は依頼したものが届かない、数が合わない、ものが輸送中に壊れた、輸出入契約の内容に相違がある等、いわゆるコマーシャルクレームがかなりの頻度で起こりますが、銀行としてはあくまで、信用状の原則に基づいて、売買契約の履行については免責されていることに留意が必要です。また、通常輸入者と銀行の間では、発行された信用状に基づいて銀行が対外的に支払った信用状については、輸入者は銀行との間で決済に応じる必要があるという約定書が締結されていることに留意する必要があります。直前の(2)(3)と合わせてご留意下さい。

Coffee Break 元銀行マンのつぶやき~発行銀行に留意を!

上記のような特性が信用状取引にはありますが、実際に取り扱いを依頼される銀行にしてみれば、コマーシャルクレームに巻き込まれること自体は避けたいところであり、例えば信用状開設を依頼される銀行は、輸入者の信用力を勘案した上で発行することになります。銀行としても発行依頼を受けた輸入者がすぐに倒産してしまうようなところとは取引はしたくないというのが本音であり、逆に言うと銀行からの信用状開設枠が得られる輸入者は、少なくともその銀行の審査を経て発行に至るので、それ相当の信用力があるということが言えます。発行銀行にも「格」というものが厳然とあるので、どの国のどの銀行か、また、例えば中国やインドなどはどの支店の発行の信用状かということにも留意しましょう。

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