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ログイン2021年8月30日
中国における輸出入食品の安全確保に関する新たな対策の幕開け
概要:
2021年4月12日、税関総署が第249号令を発し、新版の「中華人民共和国輸出入食品安全管理弁法」(以下、「管理弁法」という)を公布している。同「管理弁法」は旧管理弁法に多岐にわたり修正を加えており、今後はこれを行動指針として輸出入食品の生産経営活動を展開していくことになるため、食品の輸出入業に携わる企業は注意を払っていく必要がある。
本文:
一、「管理弁法」改正に至った背景
ここ数年、中国における輸出入食品に係る貿易量の大幅な増加、新型コロナウイルス肺炎の流行、国際貿易摩擦の発生は、輸出入食品の安全に新たな課題をもたらしており、また相次いで改正された「中華人民共和国食品安全法」及びその実施条例等はいずれも輸出入食品の安全性に対してこれまで以上に高い要求を掲げている。このような背景のもと、旧「輸出入食品安全管理弁法」(税関総署令第243号。以下「旧管理弁法」という)では、実情及び法律の要求に即した対応をすることができないため、税関総署が旧管理弁法を改正した。
二、「管理弁法」の注目すべき改正点
1. 「6件の法律を廃止し、一つに統合した」:各製品ごとに定めた監督管理弁法を一つに統合した
「管理弁法」は旧管理弁法に修正を加えただけでなく、水産物、肉類製品、乳製品及び蜂蜜等の各製品分野に共通する規定を統合して、輸出入食品の全品目に係る包括的かつ一元的な法規範を創設している。また、水産物等、各製品ごとに定めた監督管理弁法が廃止されたことで、「統一的な」かつ「効率的な」規範体系を実行すべく、税関は今後、各製品ごとに規範を設けないであろうことが予想される。
2. 「個人も責任を追及される対象範囲に入れられた」:輸出入食品の生産経営者の範囲を拡大した
旧管理弁法と比べると、「管理弁法」第77条により「係る人員等」も輸出入食品の生産経営者としてみなされることになっていることから明らかなように、個人が輸出入食品の生産経営者として認定され、係る法的責任を負うことになる可能性がある。
3. 「適合性判定」:輸入に係る3つの段階において、輸入食品の安全性を確保する
「管理弁法」は適合性判定制度を導入しており、これは今までなかった制度であるが、「輸入前」、「輸入時」、「輸入後」の3つの段階に分けて、食品輸入に係る監督管理措置を明確にしている。具体的には以下の通りである。
■輸入前:海外の国(地域)における食品安全管理体系に対する評価及び審査、海外の生産企業に対する登録管理、海外の輸出業者(代理業者)及び食品輸入業者の届出、中国に入国する動植物に対する検疫・審査許可管理、食品輸入業者による海外の輸出業者(海外の生産企業)に対する審査等。
■輸入時:添付された適合証明の検査、書類の審査、現場検査、監督及び抜き取り検査等。
■輸入後:食品の輸入業者は輸入及び販売記録制度を構築しなければならず、人体の健康に危害を及ぼすような情況が発生した時、リコール、通知、報告等の措置を講じなければならない等。
4. 「より高い要求」:輸出入食品経営者の責任及び義務を強化した
食品は人の生命と健康維持に関わるものであるため、「管理弁法」では、「安全第一、予防重視、リスク管理、全過程コントロール、グローバル・ガバナンス」といった5つの大原則を掲げたうえで、「国際条約、協定の遵守」の要求を新たに追加している(即ち、「管理弁法」では、中国が締結している又は加盟している国際条約、協定の輸出入食品生産経営活動に対する法的効力を明確にしている)。
このほか、旧管理弁法と比べると、食品の輸入、輸出等の段階における輸出入食品経営者の責任及び義務に変更が生じている。主に以下のものが含まれる。
●食品の輸入
■食品輸入業者の記録及び証憑の保存期間に変更が生じている。「管理弁法」では食品の輸入及び販売の記録制度を構築し、食品の関連情報を偽りなく記録し、係る証憑を保存しておくことを食品輸入業者に義務付けているものの、当該記録及び証憑の保存期間については、旧管理弁法では「2年以上」と一律に定めていたのに対して、管理弁法ではこれを改め、各食品の品質保証期間ごとに定めている(即ち、品質保証期間が明確に定められている場合、保存期間は品質保証期間満了後6ヶ月以上でなければならない。もし品質保証期間が明確に定められていない場合、保存期間は販売後2年以上でなければならない)。
■輸入食品に係る当事者の届出事項に変更が生じた場合に行う変更手続きに期限を設けている。「管理弁法」第20条では、輸入食品に係る海外の輸出業者又は代理業者、及び国内の輸入業者の届出事項に変更が生じた場合、変更発生日から60日以内に変更手続きを行うことを義務付けており、変更を所定の期限内に行わなかった場合、税関は所定の期限内に是正するよう命じることができることになっている。
■「海外の輸出業者及び食品生産企業に対する審査義務」を新たに追加した。「管理弁法」第22条では、海外の輸出業者、海外の生産企業に対する審査制度を構築し、「食品安全リスク制御措置」、「食品情況」といった2つの面に重点を置いて厳格に管理するよう国内の食品輸入業者に義務付けている。
■輸入新鮮冷凍肉類製品、水産物、健康食品、特別用途食品のラベル要件を明確にした。輸入食品の包装、ラベル等について、「管理弁法」では、中国の法律法規並びに食品安全の国家標準に適合していなければならない等とする一般規定に加えて、さらに輸入新鮮冷凍肉類製品、水産物、健康食品、特別用途食品のラベル要件について特別な規定を設けているため、関連企業は注意を払っておく必要がある。そのうち、「中文ラベルは入国前に最小販売包装に直接印刷しておかなければならない」といった要件はこれまで輸入乳幼児用調製粉乳のみが対象になっていたが、「管理弁法」では輸入健康食品及び特別用途食品もその対象に含めている。
●食品の輸出
■中国の法律要求に持続的に適合した状態でなければならない。「管理弁法」では、旧管理弁法第22条に定める「輸入食品原料を全て加工に使用した後再輸出する場合、税関は食品輸出先の国(地域)の技術規範に係る強行規定又は貿易契約に定める要求通りに検査を行わなければならない」との内容を削除したうえで、輸出食品の生産、加工、貯蔵の過程においても中国の法律に持続的に適合した状態になければならないことを輸出食品の生産企業に義務付けているため、加工後に再輸出する食品であっても、生産、加工、貯蔵といったような出国前の段階においても中国の法律に持続的に適合した状態でなければならないことになる。
■食品安全のトレーサビリティシステムを構築しなければならない。「管理弁法」第44条では、輸出食品企業の食品安全管理制度を整備し詳細化し、フードチェーン全体を通じて食の安全を監視し、食品の生産経営に係る全過程を追跡する食品安全トレーサビリティシステムの構築を義務付けている。
なお、「管理弁法」では輸出入食品経営者の責任及び義務を強化しているほか、「輸出入食品の生産経営者が救済を求める権利」(即ち、微生物指標が基準を超えている等の3つの例外情況が検査によって判明した場合を除き、輸出入食品の生産経営者が税関の検査結果に異議がある場合、再検査を申請することができる)についても新たに追加している。
5. 「監督管理方式の刷新」:監督管理方式の多様化
新型コロナウイルス肺炎流行の影響を受けて、税関が評価審査作業を進めるために導入した動画による遠隔検査は、今般の「管理弁法」にも取り入れられており、検査効率の向上、検査コストの削減が図られている。また、「管理弁法」第49条に定める「輸出申告前の監督管理」方式も、貨物の港での滞在時間の短縮、通関コストの削減に役立つと考えられる。
このほか、「管理弁法」では税関による「検査検疫マークの貼り付け」等の要求を前面に押し出していないことは、輸出食品企業が輸出食品の安全性について第一責任者として、輸出食品の安全性確保に係る第一義的責任を対外的に負うようになることを意味している。
三、終わりに
「管理弁法」は2022年1月1日から正式に施行されることになっており、施行までまだ時間があるものの、「管理弁法」では、各製品ごとに定めた監督管理弁法を廃止しており、また旧管理弁法に対して数々の修正等を加えているため、輸出入食品関連業種の企業は動向を注視しながら、早めに準備をしておく必要がある。
(執筆者:里兆法律事務所 邱奇峰、陳一夫 執筆日:2021年6月4日)
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