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製薬企業における商業賄賂の多発シナリオとコンプライアンスのポイント

中国ビジネスレポート 法務
邱靖

邱靖

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2023年11月24日

はじめに

商業賄賂は、製薬業界において常に大きな関心を集めているコンプライアンス問題である。今年、中国の製薬業界は厳しい商業賄賂の取締りに直面し、社会的な関心がさらに広がっている。本稿は、法執行機関による厳しい商業賄賂の取締まりを背景に、製薬企業や従事者が法執行環境をよりよく理解し、自社の経営行為が法令に準拠していることを確保するための一助となることを目的とする。商業賄賂防止に関連する主な法規制についての簡単な紹介と、製薬企業が日常業務で直面する可能性のある商業賄賂のリスクに係るよくある質問とその回答を以下の通りまとめる。

本文

Q1:中国の法律では、どのような商業賄賂行為が禁止されているのか?

A1:「中華人民共和国不正競争防止法(2019年改正)」により、商業賄賂とは、取引の機会や競争上の優位を獲得する目的で、財物またはその他の手段を用いて会社または個人への賄賂を行うことを指す。賄賂を受け取る側には、取引の相手方の従業員、相手方から関連事務の処理を委託された会社または個人、取引に影響を及ぼすために職場での権限または影響力を行使する会社または個人が含まれる。注意しなければならないのは、事業者が取引の相手方に対して割引を支払ったり、または仲介業者に対して手数料を支払ったりすることができるにもかかわらず、法律は事業者及び受領者がそのような支払いを如実に記帳することを求めている。

製薬企業にとっては、医薬品分野における商業賄賂についてより詳細な規定を定めた「中華人民共和国医薬品管理法(2019年改正)」にも注意を払う必要がある。同法は、製薬企業(医薬品市販承認取得者、医薬品製造業者、医薬品事業者を含む)および医療機関が、医薬品の売買において、リベートまたはその他の不正な利益を提供または受け取ることを禁止し、製薬企業または代理人がいかなる名目でその医薬品を使用する医療機関の責任者、医薬品の購買担当者、医師、薬剤師など関連する人員に対して財物または他の不正な利益を提供することも禁止している。

Q2:商業賄賂を行った場合、どのような法的処罰を受けるのか?

A2: 上記の2つの法律では、贈賄を行った企業に対して、高額の罰金や営業許可書の取り消しなどの罰則を含む厳しい行政責任を定めている。また、「医薬品管理法」では、国家公務員に賄賂を贈った製薬会社の従業員の個人責任も規定されている。詳細は次の通りである。

 

「中華人民共和国不正競争防止法(2019改正)」

「中華人民共和国医薬品管理法(2019改正)」

一般的な場合

違法所得の没収、10万元以上300万元以下の罰金

違法所得の没収、および30万元以上300万元以下の罰金

深刻な場合

営業許可書の取り消し

営業許可書の取り消し、

医薬品承認証明文書、医薬品生産許可証、医薬品経営許可証の取り消し

関連する従業員の個人責任

規定されていない

企業が国家公務員に賄賂を贈った場合、その法定代表者、主要責任者、直接責任を負う主管人員および他の責任者は、生涯にわたり医薬品の製造および販売活動に従事することが禁止される。

行政責任のほか、製薬企業が行った商業賄賂行為が一定の深刻なレベルに達した場合は、刑法に違反する可能性もあり、関わる主な罪名は、会社による贈賄罪(即ち、会社が不当な利益を求めるための贈賄、または国家規定に違反して国家公務員にキックバック、手数料を与えること)、非国家公務員に対する贈賄罪(即ち、不当な利益を求めるために、会社、企業またはその他の会社の従業員に対して財物を与えること)である。また、商業賄賂を行った従業員もまた個人的な犯罪となる可能性がある。

Q3:従業員が行った商業賄賂行為について、会社は責任を負わなければならないのか?

A3: 「不正競争防止法」の規定により、会社の従業員が賄賂行為を行った場合、その従業員の行為が会社の取引の機会や競争上の優位を獲得することに関連したものではないという証拠が会社にない限り、会社の行為とみなされる。

実務上の法執行事例の観察により、多くの場合、会社が従業員の責任と会社の責任をうまく分けることは困難である。従って、企業は、法的結果を招きかねない行為を避けるために、従業員の行動を規制することに注意を払わなければならない。

Q4:学術活動は、製薬企業がプロモーションを実施するための主要な手段の一つであり、一般的な学術活動の形式にはどのようなものがあるのか?

 A4:医薬品業界の一般的な実務により、製薬企業の日常業務に主に関わる学術活動の種類には、日常的な訪問、学術活動の主催、第三者機構の学術活動への協賛、患者教育プログラムなどがある。

このうち、製薬企業自身が主催する学術活動には、通常、医療従事者(Healthcare Professional、以下「HCP」という)を対象とした科室会議、院内会議、市内会議、地域会議、新製品発表会、特定分野に関わる特定の問題について関連分野のHCPに助言を求める専門家相談会、HCPを招いて従業員に研修サービスを提供することなどが含まれる。

第三者機関の学術活動への協賛とは、第三者が主催する学術活動に製薬企業が協賛することをいう。企業は、学術活動において、シンポジウム、サテライトミーティング、展示ブース、企業ロゴの露出、会議資料のインセットなどの広報宣伝を行うことができる。さらに、製薬企業は、特定の HCP を第三者の学術活動への参加に招き、交通費、食事代、宿泊費、会議登録費などの関連費用を支払うことがある。

注意しなければならないのは、学術活動においては、製薬企業から HCP に対する講演料や接待などの利益供与が行われることが多く、このような利益供与が法令遵守の根拠を失った場合には、商業賄賂のリスクが生じる可能性がある。詳細につき、Q5、Q6を参照する。

Q5HCPとの交流において、どのような形式の招待が商業賄賂に該当する可能性があるのか?

 A5:商業賄賂に該当する可能性のある一般的な接待の形式には、以下のようなものがある。

●高級タバコ・お酒、ショッピングカードなどの高価な贈り物
●スポーツイベントのチケットの贈呈、バーなどの娯楽施設での支出など、娯楽的な性質のもてなし
●学術活動の期間中において、HCPのために旅行バカンス、温泉などの非学術プログラムの提供
●HCP を学術活動への参加に招くとき、同行者(非HCP)の旅費、宿泊費、食事代などの費用の負担

Q6:HCPに講演料/労務費を支払うとき、コンプライアンス上のリスクをどのように軽減できるのか?

A6:最も重要なことは、講演料などの費用が講演など実際に提供されたサービスに基づいて発生した真正かつ合理的な費用であることを確保することである。注意点としては、以下のものがある。

●HCPを選ぶ際には、提供しなければならないサービスがHCPのプロとしての経歴、資格、経験に合致していることを確保する。
●HCPと労務契約を締結し、契約において、HCPが提供しなければならないサービスの内容、期間、得られる報酬などを明確に規定する。
●支払われる講演料/労務費は、市場標準に沿った妥当なものでなければならない。
●契約の履行および費用の支払いがコンプライアンス遵守されていることを確保するため、審査承認プロセスを採用し、かつ不定期に監査を実施する。
●講演料/労務費は、医学教育、専門研修、または科学的研究を促進するために支払われるものであり、処方箋の選択に影響を与えるようものではないことを確保する。

終わりに

商業賄賂防止のためのコンプライアンスは、製薬企業の成功に不可欠な一環となっている。 製薬会社は、厳格なコンプライアンス・メカニズムと効果的な規制を確立しなければならない。 また、企業の従業員は、腐敗防止に係る法規に対する認識を高めるために、コンプライアンス研修を受けることで、潜在的なコンプライアンスリスクを軽減する必要がある。コンプライアンスが企業文化の一部となることで、製薬会社は腐敗防止におけるコンプライアンス性を保持し、企業評判を維持して持続的な発展に有利である。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)

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