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「広告絶対的用語法執行ガイドライン」を考察する

中国ビジネスレポート 法務
董 紅軍

董 紅軍

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2023年12月4日

2023年2月25日、国家市場監督管理総局は「広告絶対的用語法執行ガイドライン」(以下「ガイドライン」という)を公布し、市場監督管理部門が広告の絶対的用語に対する監督管理を展開していくうえでの法執行の指針を示した。「画一的処理」「簡潔化」といった法執行の傾向を緩和し、「過失に対する罰則が釣り合っていない」現象を防ぐねらいがある。筆者は市場監督管理部門との意見交換を通しては、ガイドラインは各地方の機関内部の法執行意見の集大成であり、ガイドラインが公布されてからは、機関内部の法執行意見は徐々に廃止され、今後の法執行活動においてはガイドラインが重要な参考文書となることがわかった。この点に鑑みて、筆者はガイドライン及び法執行の実務運用を踏まえ、企業が広く関心を払っている問題について考察する。

1.広告上の絶対的用語の定義及び範囲

広告上の絶対的用語とは、「広告法」第9条第3号に定めている「国家級」「最上級」「最適」などの用語をいう。ガイドライン第2条では、前述の用語の意味と同じ又は類似する他の用語も広告上の絶対的用語に該当すると特に指摘しているが、これはこれまでの法執行の実務上の理解と基本的に一致しており、「トップクラス」「首位ブランド」などといった意味が近似する用語が広告上の絶対的用語と見なされる処罰例が広く一般的に存在している。

実務運用上は、広告用語が広告上の絶対的用語に該当するかどうかについては、往々にして下記の通りいくつかの方面の要素を総合的に踏まえて判定することになる。

(1)言葉の意味が同一性を有するかどうか。即ち、広告上の絶対的用語は本質的に程度表現の最上級形容詞をいうものであり、「国家級」「最上級」「最適」という文言だけに限らない。これら以外にも、企業が広告で「最も……であるうちの1つ」という形式で表現する場合も、程度表現の最上級形容詞と見なされやすい。

(2)言葉の意味が関連性を有しているかどうか。程度表現の最上級形容詞の広告用語として、それが形容する対象(若しくは対象物)は広告で販売促進する商品やサービスである。この種の関連性として、商品やサービスそのものだけでなく、広告の商品やサービスに関連する、購買や消費活動に実質的な影響を与え得る他の情報も含まれる。

(3)文脈上で排他性があるかどうか。具体的な広告事例の総合的な文脈のもとで、広告上の絶対的用語が同業の競合先の利益を損なう可能性があり、その文言が直接に又は間接的に他の同類の商品やサービスを蔑むものではないか。

2.広告上の絶対的用語の除外状況

法執行の実務運用状況をまとめたうえで、ガイドラインでは広告上の絶対的用語に対してのいくつかの除外状況を特別に定めており、これらの規定は企業が広告リスクを把握するうえで大いに参考になる。ガイドラインで明記されている除外状況について、以下、具体的に分析する。

(1)広告と見なさないもの

ガイドライン第4条では、事業者が自己の事業場所、自社が設けたウェブサイト又は適法な使用権を有するその他の媒体において、自身の名称(氏名)、略称、標識、成立時期、経営範囲等の情報を発布し、且つ直接に又は間接的に商品又はサービスについて販売促進するのではない場合、通常、広告と見なさないと定めている。このような状況が除外される理由は、「絶対的用語」を記載した内容それ自体が広告とみなされず、当然ながらそれを「広告上の絶対的用語」として規制する必要もなく、これは企業がSNSプラットフォームアカウントなどを利用して広告ではない情報を発信するうえで、より弾力的な取扱いの余地を残している。

2022年11月に公布された「不正競争防止法(意見募集案)」第9条でも、「前項に定める商業宣伝とは、主に事業場所、展覧活動、ウェブサイト、セルフメディア、電話、チラシなどの方式を通して、商品に対し展示、実演、説明、解釈、PR又は文字標示を行う等の広告を構成しない商業宣伝活動が含まれる」と言及しており、立法の動向という視点から分析する限りでは、今後の監督管理活動は「商業宣伝」と「広告」とをより明確に区別し、広告に対する制限的な規定が不適切に適用拡大されてしまうことを回避するものと思われる。

当然ながら、市場監督管理部門がガイドライン第4条をどのように把握するかといった匙加減がまだはっきりとしないため、企業はひとまず同条項を厳しめに理解するのがよく、即ち、企業の名称(氏名)、略称、標識、成立時期、経営範囲について、且つ直接に又は間接的に商品又はサービスを販売促進していない情報だけが広告扱いにはならないと見做すのがよい。

(2)販売促進する商品又はサービスを指し示していないもの

ガイドライン第5条にでは、広告用語が販売促進する商品又はサービスを指し示していない場合、絶対的用語に関する規定は適用しないと言及されており、同条項は本質的に「言葉の意味の関連性」の視点から除外状況を定めている。具体的に言うならば、同条項は2つの基本的な除外状況を定めており、1つは商品事業者のサービス精神又は経営理念、企業文化、主観的願望を表明したに過ぎないもの、

もう1つは、商品事業者の目標追求を表現したに過ぎないものである。この2つの除外状況は、これまでの法執行の実務運用上において概ね各地方における相対的に統一された共通認識となっており、よく見かけられる用語には、「お客さま第一」「完璧な品質を追求する」などが含まれる。

また、ガイドライン第5条では、このような除外状況についての抜け穴防止条項も定めており、即ち、絶対的用語が指し示す内容が、広告において販売促進する商品又はサービスの性能、品質とは直接の関連がなく、且つ消費者を誤認混同させることのない情況、とも記載しているこの抜け穴防止条項は、上記の2つの基本状況が除外される本質的な原因に対する描述であり、それは経営理念であろうと、目標の追求であろうと、いずれも商品又はサービスの実際の性能、品質については表現していないからである。当然ながら、監督管理機関がその抜け穴防止条項をどのように把握するかも同様にまだはっきりとしていないため、企業は現段階では上記の2つの基本的な除外状況に基づき把握しておくようにするのがよい。

(3)消費者を誤認混同させ又は他の事業者を蔑む客観的影響がないもの

ガイドライン第6条では、広告に使用される絶対的用語が商品事業者の販売促進する商品を指し示すが、消費者を誤認混同させ、又は他の事業者を蔑む客観的影響がない場合、絶対的用語に関する規定は適用しないと定めており、同条項には、前述の文脈上の排他性に関する内容が含まれている。同条で定められている除外状況はやや多様であり、具体的には以下の通りである。

①同一ブランド又は同一企業の商品に対し、自ら比較するためのみに使用する場合。よくある状況には、取り扱う商品の中での最大の間取り、最小サイズ、最上級装備車種などの説明が含まれる。

②宣伝する商品の使用方法、使用時間、保存期限などの消費に関する注意喚起にのみ使用する場合。具体例、最適な賞味期限、最適な使用温度など。

③国家基準、業界基準、地方基準などに基づき認定された商品の等級別用語の中で絶対的用語が含まれ、且つその根拠を説明することができる場合。具体例、ある国家基準では、商品を「逸品、特級、一級、二級」という4つの品質等級に分けており、企業はこの基準に基づきこれら絶対的用語を使用することができるが、等級基準を混同してはならないことに注意しなければならない。また、同条項にいう国家基準、業界基準、地方基準は、通常、中国の国内において有効な基準でなければならない。

④商品名称、仕様型番、登録商標又は特許の中に絶対的用語が含まれ、広告の中で商品名称、仕様型番、登録商標又は特許を使用することで、商品を指し示し、他の商品と区別する場合。この状況でのポイントは、絶対的用語を使用する目的が「他の商品と区別する」ことにあり、もしもその目的を逸脱してこのような絶対的用語を使用した場合は、除外する状況として扱われることは難しくなる可能性が高い。

⑤国の関係規定に基づき評価して与えられた賞、称号の中に絶対的用語が含まれている場合。注意に値すべきは、ガイドラインが賞、称号を「国の関係規定に基づき評価し与えられる」ものに限定しており、その具体的な特徴的概念については様子見する必要があるものの、おそらく多くの商業評価機関から授与される賞、称号は除外扱いとなるであろうと思われる。

⑥具体的な時間、地域などの条件を限定する状況において、時系列で客観的状況又は宣伝する製品の販売量、売上高、市場占有率などの事実情報を描述する場合。よくある状況としては、「初仕様、初披露、初版、最初の、独占、唯一」及び「販売量、売上高、市場シェア率首位」などが含まれる。実務運用上、虚偽広告と認定されないようにするためにも、企業は広告内容の真実性を証明する係る証明エビデンスを残しておき、時間及び適用範囲並びにデータソースなどを明記しておかねばならない。

3.絶対的用語を違反して使用した場合の処罰

ガイドラインそのものは法律規則に該当するものではないため、企業が広告上の絶対的用語を違反して使用した場合、法執行機関の処罰根拠は、やはり「広告法」第57条及びその他の関連法律、法規となる。

これらを踏まえ、ガイドラインでは「必要最低限で」という行政法執行理念を十分に体現しており、「広告上に絶対的用語を初めて使用した場合、その危害による結果が軽微であり、且つ遅滞なく改めた者には、行政処罰を科さないとする」、「事業者が、その事業場所、自社が設置したウェブサイト又は適法な使用権を有するその他の媒体で発信する広告の中で絶対的用語を使用した場合、その継続期間が短く、又は閲覧者の数が少なく、危害の影響がなく、且つ遅滞なく是正した場合、行政処罰を科さないものとする。それによる危害の影響が軽微である場合は、法に依拠して軽めに行政処罰を科し、又は行政処罰を減軽することができる」と言及している。そのため、企業が意図せず広告上の絶対的用語を使用したために調査を受けてしまった場合は、遅滞なく是正し、且つ前述の規定を踏まえて法執行機関と十分でに話し合い、行政処罰を受けないよう、又は軽めの行政処罰としてもらい又は軽減してもらうように努めるのがよい。

また、企業が特に注意を払う必要があることとして、医薬、教育訓練などの業界の広告では、絶対的用語に対しての制限がかなり大きい。ガイドライン第11条によれば、特定の状況の下で広告を使用することは、一般的に、違法行為が軽微であり又は社会的危害が小さいものであると認識されることはないとしている。

本文の考察から、ガイドラインは広告上の絶対的用語の判断、使用、処罰などについてより詳細な方向性を提唱しており、ガイドラインの中で相対的に広範な規定がなされ、実戦での裏付けがなされていく必要のある内容については、企業は引き続き関心を払う必要がある。

(作者:里兆法律事務所 董紅軍、黄宇)

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