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敵が見えない時代の中国拠点マネジメント③進めるべき現地化もある

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2023年12月8日

■ 「現地化はすべてダメ」ではない

どうやら私は世間から強硬な現地化反対論者と思われているようで、お会いする方から「コストを考えたら現地化せなあかんのよ、小島さんは嫌いだろうけどさ」なんて言われることもあります。ここではっきり強調しておきたいのですが、私はすべての現地化に反対なわけではありません。

私も現地化しなきゃいけない領域はあると思っています。調達や営業は業績に直結しますし、現地の市場を理解するには現地の人の視点が不可欠です。

ただ、その場合も現地化した未来と現地化しない未来を比較して、メリットとデメリットを検討し、リスクを減らすために何をしたらいいのかを議論しておく必要があります。それなしに、「いまうまくいっていないから現地化して誰かに渡そう」というのは、経営としてあまりにも安易ではないでしょうか。

経営はギャンブルではありません。経営者はイチかバチかという賭けをしてはダメです。大負けはしない状況なら少し大胆に勝負することはあるかもしれませんが、それでも賽を投げるまでどっちに転ぶか全然わからないような賭けをしてはいけません。

やれることはやったし、これならうまくいくという確信を得て初めて動くべきです。それでもうまくいかないことはあるんですから。

特定の個人に一任するという現地化は、結局のところギャンブルです。個人の価値観が会社とピッタリ同じということはあり得ません。だから個人に任せると、どうしてもその人の好悪や利害、性格などが経営に反映されます。小さい会社は特にそうです。

だから、私は何でもかんでも現地化反対ではありませんが、現地属人化には大反対です。

■ 青い鳥を探し続ける人々

とはいえ、「信頼できる誰か」を探し求めてしまう気持ちはわかります。

私たちのパートナー弁護士もよく「あー、信頼できる右腕が欲しい」と言っています。彼に限らず、いわゆる士業の方々は忙しくなってくると自分の右腕を探し始めます。何を求めているかというと、言ってしまえば自分の分身です。

自分と判断基準が同じで、仕事が取れて、顧客対応ができて、費用回収もできる人。こうやって並べてみれば、そんな人材がいるわけないことは誰だってわかりますよね。

彼らも理性ではわかっていますが、どうしても諦めきれない。10年も20年も探し続けて、「これは!」という人を採用しては失敗しています。まだこういう右腕探しに成功した弁護士は見たことがないです。

経営も同じです。中国事業のすべてを託せる万能な人を見つけたとしましょう。会社の理念を理解していて、拠点を滞りなく運営できて、利益を上げられる人材と巡り合い、事業を預けたとします。末路は二つに一つ。早々に独立されるか、拠点を私物化されるかです。

自分で事業をフルセットで運営できる資質を持っている人が、無私の精神で組織のために永続的に尽くしてくれる……、そんな話は忠臣蔵の世界にしかないと思います。

「いい人材を見つけたから」と経営の現地化に突き進む会社を見ていて不思議なのは、なぜ権限を個人でなく組織に持たせないのかということです。

現地社員たちの市場を見る目、感性、彼らが実際に現場でつかんできたことをベースにして、商品を開発したり、販路を選んだり、営業改革をしたり、投資判断をしたりすればいい。これらの権限は本社が握ったところで何の成果も上げられません。

現地の感覚を経営に活かすためには、事業を組織に任せる仕組みを考えることが必要です。日本から送り込んでいる駐在員だって現地組織の一部。駐在員を含めた現地側の幹部たちが大胆に動けるような体制にすればいい。

すぐ個人に権限を丸投げしてしまう会社は、その仕組みを考えるのを怠っていると言われてもしかたがありません。

(続く)

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