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医療腐敗防止の背景におけるCSO協力モデルのリスクポイントおよび発展傾向

中国ビジネスレポート 法務
邱靖

邱靖

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2023年12月15日

はじめに

今年、中国は医薬領域の腐敗問題を集中的に取り締まり、医薬腐敗防止に関する政策が広く注目され、医薬業界全体の経営モデルにも深刻な影響を与えている。「両票制」(「二票制」、「TwoInvoicesSystem」とも呼ばれている)や「医薬代表(和:医薬情報担当者/英:MedicalRepresentative、以下「MR」という)届出制度」などの政策の打ち出しに伴い、製薬会社はCSO協力モデルを取り入れ、本稿は、製薬会社がCSO協力モデルとリスクポイントを理解することを目的に作成したものである。以下は、CSO協力モデルにおけるよく見られる法的リスクを分析し、また当該モデルの発展見通しについてコンプライアンス上のアドバイスを提供する。

本文

Q1:製薬企業はCSOとどのように協力するのか?

A1:CSO(「ContractSalesOrganization」の略称)は、製薬企業のマーケティングアウトソーシング組織であり、製薬企業に製品プロモーションサービス、市場調査、広報販売などのサービスを提供し、製薬企業はCSOに対してサービス費と学術プロモーション費を支払う。CSOが提供するプロモーションサービスの形態には、主に学術プロモーション活動、専門家による講演、学術訪問などが含まれる。

Q2:CSOに違法行為があった場合、製薬企業は責任を負うか?

A2:CSOが独立した民事主体として業務を遂行する際に、「不正競争防止法」、「薬品監督管理法」などの中国の法律法規に違反した場合、一般的に言えば、関連する法的責任を独自に負わなければならないが、製薬企業が相応な責任を負う必要がない過去事例もある。しかし、製薬業界の特別性に鑑み、一定の状況において、CSOの違法行為は、その協力している川上の製薬企業に原因があると判断される可能性があり、製薬企業がそれによって行政処罰を受けたり、刑事責任を問われたりするリスクもある。

Q3:製薬企業とCSOの協力モデルにおけるよく見られる法的リスクとは何か?

A3:製薬企業とCSOの協力・プロモーションプロセスにおいて、よく見られるリスク行為は主に以下の通りである。

・商業賄賂、リベートセールス
・資金の引き出し、関連取引
・発票の架空発行、税務リスク
・違法な広報・プロモーション
・処方箋統計データの違法収集など

Q4:CSOによる商業賄賂のよく見られる状況にはどのようなものがあるのか?

A4:よく見られる商業賄賂行為には、「寄付」、学術活動、会議の開催または参加などの名目での利益供与、学術活動の名目にかこつけて、「祝儀袋(中国語:紅包)」、リベートの受領などの問題が含まれる。

よく見られる学術活動をもって、医療従事者(HealthcareProfessional、以下「HCP」という)への講演料の支払いを例にすると、正当かつ妥当な講演料は、HCPが講演サービスを提供する対価として使えるが、正当かつ妥当でない講演料は、商業賄賂または不当な利益を与えることとなり、贈賄罪までと判断される可能性がある。

Q5:どのような状況において、HCPへの講演料支払いが商業賄賂となる可能性があるのか。また、どのような法的影響がもたらすか?

A5:CSOが学術プロモーション活動のために支払う講演料は、以下の状況に該当する場合、「不正競争防止法」上の商業賄賂行為と判断される可能性がある。

状況

架空の会議

実際に行われていない学術活動、およびテーマが真実ではない、または学術的価値のない学術活動

内部会議

病院内に開催される内部定例会議または科室会議など

HCPが実質的な業務を遂行していない

学術活動に使われる資料(講義資料またはパワーポイント)はCSOが作成されたものである

過度な報酬

現在、HCPの講演料についての統一した費用標準はないが、実際の業務量、学術活動のレベルや規模、市場価格、業界の慣行などの要因が一般的に考慮される

商業賄賂のほか、学術プロモーション活動の名目でCSOが講演料を違法に支払うことは、不当な利益を与えることみなされ、「薬品管理法」第88条の「HCPに不当な利益を与えることを禁止する」の関連規定にも違反される。

また、CSOによる講演料の違法な支払いが刑事罰となる基準を満たすほど金額が大きい場合、贈賄罪、非国家公務員に対する贈賄罪、会社による贈賄罪などの贈賄罪の疑いとなる可能性があり、刑事責任を問われるリスクもある。

Q6CSOによる発票の架空発行に伴う法的影響とは?

A6:CSOが製薬企業に発行した発票は、税務当局が両者間の実際の業務と矛盾していると判断された場合、当該発票の発行行為は、「発票管理弁法」に規定されている「発票の架空発行」に該当する可能性が高く、CSOは行政処分を受けることになり、犯罪に該当する場合は、法に基づいて刑事責任を問われることになる。

税務当局が、製薬企業とCSOの間に真実の取引がないと判断した場合、製薬企業は、発票の受取側として、他人に自分のために架空の発票を発行させた状況となる可能性があり、架空の発票を発行させたと判断されるリスクがあり、相応の法的責任も負わなければならない。

Q7CSOとの協力において、製薬企業のリスクを低減するにはどうすればよいのか。

A7:実務上、一部の製薬企業は、CSOがMRに授権することでリスクから引き離す。

この場合、CSO自身が違反行為を行った場合、発生するリスクと責任は一般的に製薬企業に直接影響しません。一方、実務上、多くのMRは製薬企業の従業員ではないため、企業は授権書の形でMRに授権し、MRのために届出と登録手続きを行い、そしてCSOとサービス契約を締結することで、リスク回避を実現する。しかし、このようなモデルでもすべての法的リスクと責任を完全に引き離すことができるわけではなく、状況によっては法的責任が川上の製薬企業に浸透するリスクも残っている。

Q8:製薬企業はどのようにCSOとの協力におけるコンプライアンスを改善するのか?

A8:製薬企業はCSOと協力する際に、以下の点に注意することができる。

・CSOが合法的な学術プロモーション資質を持っているか否か、MRが法に基づいて国家薬品監督管理局の指定届出プラットフォームにて届出されているか否かを審査する
・関係者および元従業員が築いたCSOとの協力については、関与するCSOの業務展開が実際に存在するか否か、サービス内容やサービス料が真実かつ合理的か否かを重点的に審査する。
・協力のCSOが行う学術プロモーション活動のコンプライアンスを審査し規範化する。これには、活動が実際に行われているか否か、関連費用が実際に発生しているか否かを審査し、CSOが学術活動にに関連する契約書、サインインシート、講座資料、現場写真などを含む証明材料を保管・ファイリングするよう監督することが含まれる。
・CSOに定期的なコンプライアンス報告書の提出を求め、CSOに対するコンプライアンス監査を実施する権利を留保するなど、CSOに対する契約上の制約を強化し、監査の過程において、出張費の架空精算やリベートセールスなどの現象を重点的に審査する。

終わりに

本稿は、主に製薬企業がCSO協力モデルを取り入れる際に遭遇する可能性のあるよく見られるリスクについて概説し、また、コンプライアンスの観点からCSO協力メカニズムをどう改善するかについての提案を提示しているものである。現在の製薬業界における腐敗防止において、製薬企業は、良好な内部統制を維持しながら、協力のCSOのコンプライアンス管理を強化し、CSOとの協力・プロモーション活動を規範化し、適切にコンプライアンス条項を使用して協力者を制約することを提案する。さらに、製薬企業はCSOやMRに対する監督管理責任を積極的に果たし、問題の発生を未然に防止し、製薬産業の健全な発展を推進する必要がある。

(作者:北京市中倫(上海)法律事務所邱靖弁護士)

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