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ログイン2024年10月30日
はじめに
医薬品の購入販売の産業チェーン全体において、学会・協会や基金会は重要な第三者機関であり、通常は製薬企業による学術活動の開催や学術プロモーションの実施を支援し、製薬企業が製品の研究開発にさらに集中できるようにするのと同時に、マーケティングとプロモーションの良好な運営を維持する。しかし、第三者機関が加わることは、必然的に医薬品の仕入・販売チェーンの複雑化を招き、製薬企業の管理難易度を高め、製薬企業自身のコンプライアンスリスクにつながる。このような背景のもと、本稿では、製薬企業の第三者機関(学会・協会、基金会)のコンプライアンス管理のポイントをまとめ、製薬企業による第三者機関の管理の改善を支援することを目的とする。
本文
Q1: 「学会・協会」と「基金」の定義とは?
A1: 「基金会管理条例」により、基金会とは通常、自然人、法人またはその他の組織から寄贈された財産を利用し、公共福祉に従事することを目的として、本条例の規定に基づいて設立された非営利法人のことを指す。「学会・協会」には明確な法律定義がなく、「業界協会・商会の費用徴収行為の関するコンプライアンスガイドライン」の関係規定により、通常では、名称の末尾に「業界協会」、「協会」、「促進会」、「学会」、「研究会」などの文字を接尾語とし、民政部門で登記された社会団体法人を指す。
Q2: 製薬企業と学会・協会、基金会などの第三者機関との主な協力形態は?
A2: 製薬企業と学会・協会、基金会との主な協力形態は、医学交流の促進を目的とした製薬企業と第三者機関による学術会議の関連協賛支援(共催または単独)、公益目的の資金援助や寄贈、およびその他の形式での協力、主に以下のようなものを含む。
● 学術会議の協賛:製薬企業は、学会・協会が主催する学術会議のために、シンポジウム、サテライト会議、展示ブース、イベント資料に企業ロゴの露出などの形で資金援助を行うことが一般的で、 または医療従事者が参加される関連業界会議または研修交流活動を協賛する。
● 寄贈・資金援助プロジェクト:通常は基金会より要請され、製薬企業は資金または物質を提供し、科学、医療および公共健康分野における活動やイベントを支援するために、一般的な形態としては、地震救援・救助物資の提供、教育プログラムへの資金提供などの形がある。
● 患者教育:製薬会社は、患者教育情報または教育マニュアルの提供、患者教育テーマイベントの支援、専門家を招聘しての医学ビデオの収録、オンライン患者教育プラットフォームの構築など、患者の疾患に対する認識を高め、患者に利益をもたらすことを目的とした教育イベントを実施または支援する。
Q3: 製薬企業が学会・協会、基金会などの第三者機関との協力にもたらす可能性があるリスクは?
A3: 様々な協力の形態から、製薬企業が学会・協会との協力の全過程において、契約の締結、費用の支払い、専門家の招聘、資料の提供などのビジネス上の取引に関わり、利益の送り込みのパイプ役として認識されるコンプライアンス上のリスクが存在する可能性がある。
例えば、業界に流布されている「広東省の医薬品・消耗品に関する特別会計監査調査報告書」においては、公立病院の医学専門家4人が某基金会を通じて製薬会社から人民元237万元の寄贈を受けたことが指摘されている。当該基金会による科学研究プロジェクト募集プロセスに従い、製薬企業が基金会とプロジェクト寄贈契約を締結した後、基金会はプロジェクト募集通知を発表し、意向がある者は指定期限内までに申告する。しかし、2020年から2023年5月まで、当該基金会がプロジェクト募集をまだ発表されていない状況の下、公立病院の医学専門家4人が、B社などを含む製薬会社5社の寄贈プロジェクトに対応する申告資料を既に提出し、プロジェクトの唯一の応募者として人民元237万元の寄贈金を受け取っていた。
このように、製薬企業は形式的には第三者機関の医学会に寄贈を行っているが、受益者を指定する場合、業界団体を利益の送り込みのパイプ役として利用し、贈収賄を行ったと疑われる可能性がある。
Q4: 製薬企業が学会・協会、基金会との協力について、規制当局はどうのようなスタンスをとっているか?
A4: 最近の一連の文書から、製薬企業と学会・協会、基金会が規制当局からますます注目されていることがわかる。
● 2024年5月、衛生健康委員会など14部門が連名で発表した「2024年の医薬品売買領域と医療サービス中における不正傾向を是正するための作業要点」(国衛医急函[2024]101号)は、学会・協会の管理強化の必要性を明確に指摘した。
● 2024年6月、国家会計監査署は、「国務院による2023年度中央予算執行およびその他の財政収支の会計監査業務報告」を発表し、薬品監督管理局傘下の関連学会・協会において、開催された関連フォーラムで企業にブランド宣伝費を請求したり、名義だけの形で民営企業と協力して研修コースを開催したり、規定を違反してフォーラム参加者に交通費を精算したり、相互に繰り返されるテーマフォーラムを開催したりなど、一連のコンプライアンス上の問題があることを指摘した。
● 2024年8月、国家市場監督管理総局などの3部門が共同で「業界協会・商会の費用徴収行為に関するコンプライアンスガイドライン」を発表し、業界協会・商会がサービスを実施する際のコンプライアンス要件を明確にした。
Q5: 製薬企業は、学会・協会、基金会に対するコンプライアンス管理をどのように行うべきか。
A5: 製薬企業による学会・協会、基金会に対するコンプライアンス管理は一般的に、事前、進行中、事後の3段階に分けることができ、それぞれの段階に特定の管理重点と要求事項がある。
1.事前段階
● 第三者機関の資質の確認:第三者機関の経営資質、経営範囲、財務状況、過去の記録、事業上の評判、過去のプロジェクト実施状況などを確認することを含め、その協力の実施に必要な適法でコンプライアンスに合った資格および専門的能力を有していることを確保する。
● プロジェクトのコンプライアンス審査:審査内容には、プロジェクトの目的、実施方法、資金源および用途などを含め、潜在的な腐敗防止、贈収賄防止およびデータプライバシー保護などの機微な問題に係るか否かを重点的に注目する。
2.進行中段階
● プロジェクトの契約締結:契約の条項に両当事者による腐敗防止条項、データ保護条項、会計監査権および契約違反の責任などが含まれていることを確認し、同時に両当事者の権利と義務を明確に規定する。
● プロジェクトの実行:プロジェクトの実行期間において、第三者機関の行為をリアルタイムで監督・了解および適宜に管理し、状況に応じて第三者機関に定期的な実行状況についての報告書の提出を求める。重要な意思決定または活動については、必要な承認手続きを設定し、会社が事情を知っているかつ同意していることを保証する。
● 定期的なレビューと報告:定期的なレビューメカニズムを設定し、プロジェクトの実施状況と第三者機関のコンプライアンスを定期的にチェックする。
● スポットチェックと非通知検査:不定期にスポットチェックを実施することで、第三者機関が日常モニタリングにおいて不正を隠蔽することを防止し、問題が発生した場合に企業がタイムリーに是正措置を講じることができるようにする。
3.事後段階
● プロジェクト資料のアーカイブと保存:プロジェクトの終了後、契約書、財務記録、実行報告書、レビュー記録など、プロジェクトに関連するすべての文書や記録をアーカイブと保存し、また、社内要件および法令と結びつけて、適切な保存期間を確定しなければならない。
● 遡及チェック:一部のリスクの高いプロジェクトまたは異常のあるプロジェクトについては、遡及チェックを実施し、プロジェクト全体のプロセスを振り返って、各リンクのコンプライアンスをチェックすることができる。
終わりに
総じて、製薬会社が学会・協会、基金会との協力において多くのコンプライアンスリスクに直面し、製薬業界の規制がますます厳しくなる中、製薬会社は第三者機関の管理への注意を向上させなければならない。コンプライアンス管理の継続的な最適化と改善を通じて、製薬企業は自身の競争力を高めるだけでなく、複雑化となる市場環境と規制要件を効果的に対応することもできる。
(作者:北京市中倫(上海)法律事務所 邱靖弁護士)
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