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「中小企業代金支払保障条例」の改正ポイント及びその運用についての解説

中国ビジネスレポート 法務
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沙晋奕

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2026年2月12日

概要

「中小企業代金支払保障条例」(2025年改正。以下、「新『条例』」という)は、2025年6月1日から正式に施行されており、筆者のもとにも大手クライアントから相談が多数寄せられている。本稿では、大企業の視点から、元の「中小企業代金支払保障条例」(以下「2020年版『条例』」という)と比較しながら、今般の改正に伴い押さえておくべきポイントを中心に解説する。

本文:

改正ポイントその1:契約に定めのない場合、支払期限を60日とすることを明確化

大企業が、中小企業から物品を購入したり、工事、サービスの提供を受ける場合の支払期限について、2020年版「条例」では、業界のルールや取引慣行に従い合理的に定めるという原則的な要求にとどまっていた。これに対し、新「条例」ではさらに厳格な規定を新たに設け、契約で支払期限を定めていない場合、大企業は物品の購入日、工事、サービスの提供を受けた日から60日以内に支払わなければならない。契約に定めがある場合にはその定めに従うことになるが、その支払期限は、業界のルールや取引慣行に即したものでなければならない、としている。

なお、新「条例」の60日以内の支払いに関する規定は、大企業から中小企業に実際に支払われるまでの期間を指している(即ち、単なる支払いサイトではない)。また、メディアの報道によれば、過去に、一部の自動車メーカーは支払サイトに加え、商業手形の割引などの方法により、サプライヤーへの実際の支払いサイクルを延長し、サプライヤーへの支払いが実際に行われるまでの期間が60日を大幅に超えるケースがあった。新「条例」施行後、国内では複数の自動車メーカーがサプライヤーへの支払サイトを60日以内に統一すると発表し、また、商業手形などサプライヤーの資金負担を増やす決済方法を採用しないとも明言している。

わざと支払いを遅らせたと解されることのないように、大企業においては、支払期限及びその起算日を慎重に評価・確定し、支払決済のプロセス、双方の協力義務などを明確にするとともに、検査、検収に関する証拠を適切に保管しておくことが望ましい。

改正ポイントその2:「バックツーバック」条項の禁止

新「条例」は、大企業が「第三者からの支払いの受領を中小企業への支払の前提条件とする」、または「第三者からの支払の進み具合に応じて、中小企業に支払う」ことを定める条項(いわゆる「バックツーバック」条項)を明確に禁止した。これは、大企業が優越的な地位を利用して、自己の顧客からの支払いリスクを中小企業に転嫁することを防ぐことを目的としている。

なお、「大企業と中小企業との間で定められる、第三者からの支払いを自らの支払の前提条件とする条項の効力問題に関する最高人民法院による返答」(法釈〔2024〕11号)によれば、「バックツーバック」条項に関しては、司法実務上、以前から無効である、との見解が採られていた。したがって、今回の新「条例」の改正は、この司法実務と合わせるためのものであり、大企業にとって新たな要求となるものではない。

現在、新「条例」の規定に基づき判定が下された裁判例がすでに存在する。例えば、(2025)津0116民初9524号事案では、裁判所は、新「条例」の規定を引用し、発注者が元請負人による審査未完了などを理由として支払を拒否することは、サプライヤーの合理的な支払請求に対抗できないと判断し、最終的に発注者に支払いを命じる判決を下している。

大企業においては、中小企業と契約を締結する際、「バックツーバック」条項を定めないよう注意する必要がある。そのうえで、支払いの負担を軽減する必要がある場合には、「分割払い」「進捗支払い」などの適法な方法で定めるといった方法が考えられる。

改正ポイントその3:現金以外の支払手段に対する規制の詳細化

2020年版「条例」は、中小企業に商業手形などの現金以外の支払手段を強制することを明確に禁止していた。新「条例」はさらに、「売掛金電子記録債権」を現金以外の支払手段の範囲に含め、大企業がこれらの電子記録債権を利用して実質的に支払期限を延長することを禁止し、現金以外の支払手段に対する規制を詳細化している。

なお、ここで重要な点は、2020年版「条例」も新「条例」も、大企業が現金以外の支払手段を使用すること自体は禁止しておらず、あくまで中小企業に現金以外の支払い手段を「強制する」ことを禁止していることである。この点、大企業が現金以外の支払手段を使用する必要がある場合には、中小企業と十分に協議の上、契約に明確に定めておく必要がある(もし中小企業に現金以外の支払い手段を「強制した」と認定された場合、その条項が無効になる可能性があるため)。

改正ポイントその4:紛争が生じていない部分の代金についての適時支払義務の新設

取引において部分的に紛争が生じているものの、紛争が生じていない他の部分については、新「条例」は、発注者が争いのない部分の代金については速やかに支払義務を履行しなければならないことを明確にしている。この規定は、「民法典」の関連規定を踏襲したものであり、新「条例」が施行される前から、法律上、一部の代金について争いがあることによって、争いのない代金の支払が妨げられることはないことになっている。したがって、新「条例」はこの点をさらに明確にしたものであり、大企業にとって新たな要求となるものではない。

争いのない代金(例えば、帳簿突合せ時に既に確認済みの代金、支払条件が設定されていない代金など)については、大企業は、支払遅延により、全額に対する遅延損害金負担といったことにならないように、支払い義務を遅滞なく履行し、争いのある代金については、大企業は速やかに異議を申し立て、関連証拠を適切に保管しておく必要がある。

改正ポイントその5:監督管理体制及び法的責任の整備

新「条例」は、「監督管理」の章を新たに設け、国務院の関連部門が全国統一の中小企業代金支払遅延苦情受付窓口を設けること、中小企業への支払を遅延させた大企業は、質問状・事情聴取、監督・通達などの対象となり得ることを明確にした。法的責任の面では、中小企業への支払を遅延させた大企業は、法に基づき信用喪失主体と認定され、信用記録に記録される可能性があり、さらに、財政助成金の受給、投資プロジェクト審査、融資の獲得、市場参入などに影響を及ぶ可能性がある。また、大企業が企業年度報告において中小企業への支払を遅延させた未払金に係る情報を公示しなかった場合、または真実を隠蔽し、虚偽の報告をした場合、市場監督部門が法に基づき処理することにもなっている。

また、注目すべき点として、「不正競争防止法」(2025年改正)が2025年6月27日に公布され、かつ2025年10月15日から正式に施行されるが、その中でも、大企業の支払義務が強化され、大企業が優越的地位を濫用して、中小企業に理不尽な支払期限・方法などの取引条件を受入れるよう強要すること、中小企業への支払を遅延させることが禁止されている。違反した場合は、所定の期限内に是正するよう命じられ、期限を過ぎても是正しない場合は100万元以下の過料、情状が深刻な場合は100万元~500万元の過料が科されることになっている。

終わりに

大企業にとって、遅滞なく支払義務を履行することは、処罰リスクの回避だけでなく、サプライチェーンの安定性維持やビジネス上の信用を高める上でも重要なことである。大企業は、新「条例」の施行をきっかけに、現行の契約条項を全面的に見直し、各地の監督当局の監督方針及び裁判例に細心の注意を払い、経営戦略を適宜調整することが望ましい。

(作者:里兆法律事務所 沙晋奕、舒辰)

 

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