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「盗撮録証拠」の証拠効力及び収集にあたっての注意事項

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2011年12月8日

商業取引又は日常生活においての紛争がますます頻繁に発生しているが、この過程で、人々の証拠意識も徐々に高まっている。ただし、立証者に有利な証拠はそれほど容易く取得できるものではない。実践においては、録音機、録音ペン、録音電話といった録音設備やカメラ等の撮影設備を使って、紛争の相手との会話の過程を秘密裏に記録し、その後でこれらを証拠資料(以下「盗撮録証拠」という)として整理し、法廷又は交渉中の相手に渡して圧力をかけることによって、訴訟又は交渉過程で有利な状況を勝ち取ろうと考える人は多いだろう。ただし、「盗撮録証拠」の収集が不当であった場合、その証拠としての効力に影響を及ぼし、ひいては相反した効果を招いてしまうこともある。本文では民事訴訟の司法の実践における「盗撮録証拠」に対する法院の認定とあわせ、「盗撮録証拠」の特徴と証拠効力、及び収集過程で注意すべき事項について簡潔に紹介する。

「盗撮録証拠」の特徴

「盗撮録証拠」は民事訴訟法律証拠分類における「視聴覚資料」(録音、録画等の技術手段が反映する音声、画像及び電子コンピューターに記憶するデータを利用し案件事実を証明する証拠をいう)と、その他のタイプの証拠資料と比較した場合、「盗撮録証拠」には次の2つの顕著な特徴がある。

1.視聴覚資料の特殊性をもつ。視聴覚資料は現代のハイテク手段を利用し音声画像とデータを記憶するものであり、保存しやすい。このため、技術手段を使って改ざんが行われやすくもある。したがって、裁判の実践においても、法院は「視聴覚資料」に対する審査は、その他の証拠と比べ一層厳しい。疑わしい点がある視聴覚資料に、偽造し、編集し、つなぎ合わせた形跡のある、はっきりとせず識別しにくい音声画像資料等は、通常、法院に証拠としては受け入れてもらえない。

2.製作手法が特殊である。「盗撮録証拠」は相手方の事前の同意を得ずに製作するものであるため、このような状況下で盗撮録した証拠は、客観的事実をもっとも反映するものではあるが、盗撮録された側の適法な利益又は社会公共利益を侵害しやすく、盗撮録された側に不公平が存在する。

「盗撮録証拠」の証拠効力

「盗撮録証拠」は上述の特徴をもっていることから、法院は「盗撮録証拠」を証拠として使用することができるかどうかについて、手探りの過程を経験している。最高人民法院はかつて1995年3月6日に公布した「他方当事者の同意を得ずに密かに録音し取得した資料を証拠として使用できるかどうかについての返答書」(法復〔1995〕2号、以下「1995年返答書」という)の中で「証拠の取得はまず適法でなければならず、適法なルートで取得した証拠だけを案件を確定するための根拠とすることができる。他方当事者の同意を得ずに密かにその会話を録音することは、適法な行為ではなく、このような手段によって取得した録音資料は、証拠として使用することはできない」と明確に定めており、それによって、「盗撮録証拠」の証拠効力を絶対的に否定している。

「1995年返答書」が公布されたことにより、その客観的理由はあるものの、最高人民法院は「盗撮録証拠」のマイナス作用を過分に注視していることも反映している。これについて、最高人民法院は2002年4月1日から施行した「民事訴訟証拠に関する最高人民法院による若干の規定」(注釈〔2001〕33号、以下「2001年証拠規則」という)の中でこの傾向を是正している。「2001年証拠規則」第68条の規定によると、「他人の適法な権益を侵害し、又は法律の禁止規定を違反する方法により取得した証拠は、案件事実を認定する根拠とすることはできない」とされており、第69条では「次に掲げる証拠は単独では案件事実を認定する根拠とすることはできない。…(三)疑わしい点が存在する視聴覚資料」と定められており、第70条では「当事者の一方が提出した次に掲げる証拠は、他方当事者が異議を唱えたが反駁するに足りる反対の証拠がない場合、人民法院はその証明力を認めるものとする。…(三)その他の証拠があり適法な手段で取得し、疑わしい点がない視聴覚資料又は視聴覚資料と照合し間違いのない複製品」と定めている。

筆者の理解では、「1995年返答書」は廃止されるという明文での規定はないが、司法の実践においては、「2001年証拠規則」における上述の条項がすでに「1995年返答書」の規定に取って代わり、現在、法院の「盗撮録証拠」の証拠効力についての最も権威ある規定となっている。このことから、「盗撮録証拠」を有効な証拠とすることができるかどうかは、一概には決められず、具体的な状況に基き分析を行う必要がある。「盗撮録証拠」の証拠効力及びその証明力の強弱を判断する際、主に次の方面から取り掛からなければならない。

1.他人の適法な権益を侵害し、又は法律の禁止規定に違反していないかどうか。
2.疑わしい点が存在していないかどうか。(偽造し、編集し、つなぎ合わせた形跡のある、はっきりとせず識別しにくい音声画像資料等の場合)
3.当事者が異議を唱え、反駁するための充分な反対の証拠がないかどうか。
4.その真実性を証明するその他の証拠がないかどうか。

「盗撮録証拠」を収集する場合の注意事項

「盗撮録証拠」の特徴及び法律によるその証拠効力の見方から、実践において、「盗撮録証拠」を収集する必要がどうしてもある場合には、次の事項を把握するよう注意しなければならないと筆者は考える。

1.収集の際、社会の公共利益、社会モラルに違反し、又は他人のプライバシー等の権益を侵害する手段を講じてはならない。
2.収集の際、無断で盗聴器を他人の居住先に設置し、盗聴し、探察し、又は詐欺、威嚇、利益で釣る等の行為を行うなど、法律の禁止規定に違反してはならない。
3.収集の際、適切な録音録画設備及び記録媒体を使用し、録音録画を明晰かつスムーズにさせ、長期保存しやすいものであり、将来、法廷がその真実性に対する認定を行い、又は必要に応じて司法鑑定を行う際に、鑑定機関に良好なオリジナル版を提供できるようにしなければならない。
4.収集の過程で、なるべく自然な方法で紛争の事実の全過程が繰り広げられるようにし、威嚇し、侮辱し、及び不適切に相手方を誘導する言葉や方法を使用しない。
5.収集の過程で、一部の肝心な事実情状の表明、会話、交渉等については、正確かつ誤りのないように表現され、認識上の矛盾が存在しないように努め、将来、相手方にその他の方面での釈明をされないようにする。
6.収集の後は、裁断するなどの編集を行わず、録音録画のオリジナルの状態と完全性を保ち、自身に都合のよい部分だけを引用したものであり、偽造の疑いがあると思われないようにする。
7.その他の証拠との関連性、裏付けに注意する。

以上をまとめると、「盗撮録証拠」はその特殊性から、実践においては、慎重に収集し、慎重に使用しなければならず、さもなければ、質疑され、反駁され、否定されやすくなる。勿論、その他の証拠が充分ではないという場合には、「盗撮録証拠」を採用することは、今後の訴訟又は交渉において有利な状況を勝ち取ることができ、最終的に法廷に受け入れてもらえなかったとしても、客観上、裁判官に印象付け(案件を担当する裁判官の具体的な案件に対する心の中での確信)を行うことができる。

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