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雲は坂の下でなく、上にあります

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2020年1月22日

この1年ほどの連載テーマ「現地と本社の二人三脚」も今回で最終稿となりました。
本稿では、現地の皆さんが言いたくても言えないことを代弁するのが狙いの一つでしたので、最後も生の声で締めたいと思います。

■ある敏腕弁護士の話
「労働仲裁や裁判で一番やりやすいのは、全く法律に無知で白紙のような相手。仲裁員や裁判官の話には聞く耳を持つ。
次にやりやすいのは法律知識が豊富な相手。お互い手の内がわかっているので、後は妥当なところで線引きできる。
一番タチが悪いのは、自分では法律知識があると思い込んでいるが実は中途半端な相手
主張に法的根拠がないものの、自信があるから相手の話に耳を貸さない。
こういう相手には裁判官もうんざりしている」

■ある現地経営者の話
「現地の経営者として一番やりにくいのは、かなり以前に中国を経験した役員がいる場合
彼らは、自分が一番の中国通だと自負しているが、その経験は十年以上前のものであり、その後の変化の大きさを全く理解していない。
さらに、多くは上海など外資系を優遇する特殊エリアでの経験であることも面倒な一因。
本社で報告すると『なんで天津ではできないんだ。オレがいた頃はだな%#*@……』とか『労務問題なんて甘やかすからつけあがるんだ。文句言う奴らはクビで済む。オレのときは*&#$……』と始まる。
他に中国経験のある役員なんていないから、経営陣は彼の言うことを真に受けて聞く。
まぁ、世代交代するまで、ウチでは現地の声を聞き入れての意思決定なんて無理だろうな……」

前回の提言「現法経営を本社エースの登竜門にする」に対しても、反応をいただきました。

■ある現地経営者の声
「前回のエースの話、まさにその通りだと思う。
でも、ウチの会社は全く逆を行こうとしている。
若手に経験を積ませたいということで、どんどん実力不足な人間ばかりを送り込んでいる。
利益を上げる使命があり、厳しい環境のなか、課題も山積している情況で、『そっちに送るから経験積ませてやってくれ』などとのん気なことを言われ、来る方も『言われて勉強に来ました』顔では、ほんと、この会社大丈夫かなって考えるよ。
ライバルがどんどん台頭している現状、わかってるのかな。
以前は『まだ技術では5年のアドバンテージがある』って思っていたけど、現実にはすでに追いつかれてる。
ただ、彼らはそれを品質面でまだ安定的に提供していないだけ。
すごい勢いで学習・成長しているライバルに対して、こっちは若手のお守りや、余っている人手の吸収機能。この差は長期に響いてくる」

●人材流出企業と誘引企業

以前から明言している通り、私は「欧米先進論者」でも「中国では中国式管理論者」でもありません。日本の会社は日本流の良さを活かして勝負すればいいのです。
ただ、私が不安なのは、日本企業は、ギアチェンジしなくても勝負できると、まだ思っているのではないか、ということです。

さて、次のどちらの会社が優秀な人材を惹きつけられるでしょうか。

①本国からは大量の駐在員。
新米駐在員の多くは自分より若手。
でも彼らの職位と処遇は自分より上。
上司なのに仕事は一から教えないと進まず、実務は自分たちが回している。

②少数の駐在員。
彼らは本社のエース級らしいが確かに優秀。
現地事情の吸収意欲が旺盛で、彼らが動くと本社も動く。
彼らと一緒だと、仕事は厳しいが成長できる。

言うまでもありませんね。

現地の競争は、本社の論理や都合では進みません。優秀な人材が自社を見切って去り、他社が彼らを優遇したら、差は倍の速度で広がります。

格言に「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」と言われますが、人材の差は長期の経営力の差となります。

司馬遼太郎の『坂の上の雲』に掛けて、世界一を争うレベルになった日本企業は、雲を見失ってしまったなどと言われますが、そんなことはありません。

世界の猛者が集まり経営力を競う中国は、坂下に見下ろす雲ではなく、見上げた坂の先にある雲です。

本気で中国事業に挑み、元気に事業を広げ、次の時代を切り開いていただきたい。そう願っています。

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