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海外拠点の闇〜不正リスクポイントと対策 04

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2021年11月19日

【部門・領域別】不正はここで起きる【製造部:対策編】

■総務は不正の温床No.2

組織の不正リスクポイントを部門・領域別に洗い出しています。次は総務部門を見ていきましょう。

総務については、こんな笑い話があります。ある日本企業の中国拠点で管理部門の人材を募集したところ、人事、経理、総務は一通り経験があるという中国人が面接にやってきました。日本語もできるし良さそうだと思って希望給与を聞くと、「人事か経理だったら15,000元、総務だったら9,000元」と答えたというのです。

これでピンときた方、お察しの通りです。総務の方が人事経理より仕事がラクだからじゃないですよ。総務部なら差額を「別の手段で」得られるからです。そして、それを面接でサラッと言えるくらい当たり前になっている。目をつぶっている(またはザルになっている)企業がいかに多いかの証でもあります。

総務は闇が広く、また深くなりがちな部署です。製造業だと調達部門に次いで不正の温床No.2でもあります。不正を疑うならまず調達(外部との取引があるから)という認識は日本企業にも広く共有されていると思いますが、実は2番目にいろんなことが起こるのは総務です。

なぜかというと、どの業界にせよ、本来業務以外の調達行為やその他の雑多な購買が全て総務に集約されることが多いからです。細々とした事務用品、ウォーターサーバーなどの共有物、トイレットペーパーなどの消耗品、制服、日本人のビザ手配がらみ、社用車や通勤バスの手配、食堂などなど、とにかく多岐にわたります。単価も量も本業の調達に比べたらずっと少ないけれど、なんだかんだと集めていくと結構な額になるのが総務です。

■総務の不正は幅広い

規模は小さくとも外部取引ですから、調達部門の不正と同様の手口は総務でもあります。あらゆる取引業者との間で、さまざまなグレーな行為があり得るというのが最初の注意ポイントです。

特に総務では、一つ一つの単価が小さいために、チェックがルーズになりがちです。製造機械や大ロットの部品などは数万元、数十万元、数百万元の取引になるので、管理側もいろいろなストッパーを用意して癒着を防ごうとしますし、周囲も厳しい目で見ますが、総務が買う筆記用具なんて数元の話ですから、どうしても目を切ってします。

そこでよく起こるのは事務用品や消耗品の反復購入における不正です。単価は小さくても年間では結構な額になります。例えばペンとしましょう。一本5元のペンが6元になっても、会社はそんなに目くじら立てません。でも5元が6元になるということは、2割も乗ってるんですよ。となるとチリも積もればで、すぐケタが上がります。反復購入関連は要注意です。

それからリースやレンタル契約では、馴染みの業者や親戚がらみの業者を使うことで担当者が利益供与を受けるという不正があります。社用車、通勤バス、食堂、どのポイントでもあり得ます。とりわけ零細業者や外注には目配りが必要です。

このように、総務の不正は基本的に外部業者との取引に関わる箇所で起こります。製造部では社員間の付け届けや人事権の問題が出てきましたが、総務ではこういう不正は少ないです。ただ、業者と社員が複数かかわって、ややこしい人間関係(利害関係)を構成していることはあります。そもそも不正が露見するのは、社員同士が利益分配を巡って仲違いしたため、どちらかが会社に告発するパターンが多いです。

ひどいケースだと、社員ごとにお気に入りの取引先があって、片方の業者がもう一方を排除したいがために、競争相手をひいきにしている社員をハメて追い落とそうとする……といった仁義なき戦いが起こることもあります。こうしたケースも、取引業者が社員と結託して本来あるべきではない行為に及んでいるということなので、やっぱり外部取引ありきの話です。

■トップが不正防止に割く労力を節約する

これだけの範囲にわたるとなると、全てをチェックするのはさすがに難しいでしょう。そこで経営者の考え方としては3つあります。

【1】値段が高くても不正の起こりにくい堅い業者を使う
【2】不正があってもトータルでコストが安ければOKとする
【3】安い方がいいが不正は許したくないから対策を頑張る

これは経営として何を重視するかによって変わってくるので、一概にどれが正解とは言えません。

日系では【1】を採用する会社も多いです。コピー機や社用車のリースなど、同じ日系の堅い会社としか取引しない。決して安くはないが、品揃えが豊富で、サービスがよくて、いちいち価格交渉しなくてもトップ同士の取り決めで業務が進む。細かい値切りが必要ない業者を選び、他の社員が手を出せない状況を作るのも、不正防止の方法の一つです。

これをやっていると、中国人社員は「高いのにどうして日系の会社ばかり使うんだ、日本人は内向きだから困る、国内系なら同じものがもっと安く買えるのに」などと言ってきます。バカにされることもあるでしょう。しかし、トップが頑張って不正に目を光らせ続けること自体をコストと捉えれば、安心代として多少高くても堅い業者だけ使うという考え方はありだと思います。

取引先についても、担当者に選ばせずに経営者が決める仕組みにしておけば、業者も「担当者に取り入っても意味がない」と思います。赴任者の交替時期に現地社員に権限がスイッチしないように注意しておけばいい。コストはかかりますが、割とシンプルな解決法です。

(次回に続きます)

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