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ログイン2021年12月20日
【部門・領域別】不正はここで起きる【総務部】対策編(1)
前回、総務部門では不正が起こり得るポイントがあまりに多岐にわたるため、全量チェックは土台無理という話をしました。そこで経営者の考え方としては3つあります。
【1】高くても不正の起こりにくい堅い業者を使う
【2】不正があってもトータルでコストが安ければOKとする
【3】安い方がいいが不正は許したくないから対策を頑張る
この3つはどれが正解とは言えませんが、【1】は日系で採用しているところも多く、不正防止には有効であるというところまで前回お話ししました。今回は続きを見ていきます。
■会社としてコストが安いのに割り切っちゃダメ?
私がお勧めしないのは【2】です。会社としてのトータルコストが安いんだから、誰かが個人的に甘い汁を吸っててもいいじゃないの、という割り切りですね。特に海外では「餅は餅屋」でこの方向に走りがちなんですけど、私はよくないと思います。
不正というものは、会社が一か所でも目をつぶったら、必ず他に波及します。「総務がうまくやっていて、会社も敢えて見ないふりをしている。我々もやらなきゃ損だ」となります。自分たちだけダメと言われる筋合いはないとなると、どの部署でもやり始めます。
それでもトータルコストが安いならいいやと思われるかもしれません。でも、不正を野放しにして、社員の本来の収入よりそちらの実入りが大きくなったらどうでしょう。
月給が5,000元なのに、グレーな副収入が年間10万元となったら、その社員にはどんな人事制度も効果がありません。頑張ったら400元の昇給があるぞ、目標を達成したら5000元のボーナスがあるぞ、と旗を振ってもぜんぜん響かない。社員がそれぞれ「頑張って認められよう」ではなく、「もっとおいしいポストを見つけてうまくやろう」という態度になっていき、組織はバラバラになります。
こうなったら、おそらく日系企業としてのよさは完全に損なわれます。よくある外資系のように現地で利益だけ上がればいいと言うならかまいませんが、日本的なマネジメント、ものづくり、プロセス、一体感などに価値を置く会社は、この選択肢を選ばない方がいいと思います。
また、中国では「いちばん安いところ」を追求しすぎると弊害が多いです。中国は振れ幅の非常に広い国です。偽物まで含めると、同じものでも価格差が平気で10倍、100倍になります。経営者も相場価格を大きく下回るものは何らかの問題を抱えているという前提で見た方がいいです。
そのためには、価格の妥当性がある程度わかっていなければなりません。自分なりに相場を理解していないと、不勉強では太刀打ちできません。結局は不正を打ち止めにしたい側が努力するしかない。全ての不正は「どうせアンタはわかってないでしょ」と見定められるところから起こります。シビアですが、ここは強調しておきたいところです。
■全部が無理なら抜き打ちで
コストは抑えたいけど不正もイヤなら、対策を頑張るしかありません。ご安心ください、全量チェック以外にも方法はあります。
まずは抜き打ち検査です。総務ではオーダーごとでなく1~数年の契約や、数年ごとに見直すというような取り決めが多いですが、時々ランダムに抜き出して、駐在員自身のルートで相場を調べます。知り合いの経営者に聞くとか、日系の商社や銀行に聞くとか、ネット通販サイトで検索するとか、自社の社員を頼る以外の方法なら何でもかまいません。
これは社員たちに依存しない姿勢を見せることが重要なので、「そんなツテなんかないよ」で諦めちゃダメです。頑張って探してみてください。
価格だけでなく、取引先の身元照会もいいでしょう。弁護士にでも調べてもらって、やたら訴訟を抱えているとか、最近設立したばかりでぜんぜん実績がないとか、本拠が外地なのにどこでこんな会社を知ったんだとか、マイナス情報が出たら、担当の社員に直接聞いてみます。
「私のルートで確認したら、全く同じものが10%安ぐらいで買えるみたいなんだけど、見積合わせはどうしてる?」「あなたが持ってきた取引先、法人履歴を調べたら、去年の設立で深センでは実績がほとんどないよ。内陸部の会社だけど、どこで知り合ったの?」みたいな感じで、純粋な質問の感じで聞いてみてください。
この質問は疑いを示すためではなく、ただの牽制球です。筋の通った回答が出てきて、経営者が納得するのであればOK。しどろもどろになるようなら、もう少し突っ込んでいきます。
こういう抜き打ち検査は”気まぐれ”がポイントです。定期化せず、対象範囲の順番も決めず、なるべくバラバラにします。相手に準備をさせないためです。
「抜き打ちチェックをかけている」と見せることで、出来心を事前に摘み取ったり、いままでやってきた社員たちに「あまり派手にやるとまずいな」と思わせたりします。【1】との合わせ技で、取引先に堅い業者を選んだ上で、自分には社外にも調査する手段があると見せておくと非常に有効です。
(次回に続きます)
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