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海外拠点の闇~不正リスクポイントと対策 12

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2022年7月19日

【部門・領域別】不正はここで起きる【経理部門】リスクポイント編

特に不正があっては困る領域、それは経理・財務です。経理は企業規模によって、また合弁か否かによって注意すべきポイントが異なります。

■ 大企業は「木は森に隠せ」に注意

大企業の場合は小さな不正が紛れやすい支払い処理のところが狙われがちです。森の中に木を隠されてしまうと、ノーチェックで何年も過ぎてしまうことがあります。金額も大きくなるまで目立ちにくいものです。

事例を紹介します。給与支給で経理が不正を行ったケースがありました。給与支給の流れは普通、各部署で勤怠を取りまとめ、人事が集めます。そして人事で欠勤分や残業分や途中入退職分を計算して給与支給データを作り、経理に渡します。最後に経理が銀行から振込処理をします。

これだと人事が作成したデータに間違いがあった場合、経理のチェックが入った時点で弾かれます。でも、そのデータを元に経理が振込処理をするときはどうでしょう。この会社では、そこに対する再チェック機能はありませんでした。皆さんの会社はどうですか。内部監査で発見できるでしょうか。

社員数がせいぜい数十名ならともかく、数百人単位となると、入れ替わりもありますし、上司でも顔と名前は一致していません。経理の振込データまで製造部長や工場長がチェックする理由もありません。

そこで経理部で結託し、数か月前に辞めた3人の名前をそのまま残しておくという不正を思いついたんです。口座だけ自分たちで用意して、そこに給与を振込み続けました。もちろん目立つような高給にはしません。たかだか一人数千元です。すると誰もチェックしないから意外にバレないんですね。

仮に5,000元の月給としましょう。今なら日本円で10万円程度です。毎月5,000元を3人分、1か月で15,000元、12か月で18万元。10年続けると180万元ですから、数千万円という不正に膨らんでしまいます。

日本本社や現地トップには心して聞いてほしいのですが、問題はここに止まりません。私は発覚した不正を、現地のトップ(日本人)が隠蔽するケースに何度も出会いました。

たまたま管理部長クラスの駐在員や現地管理者が不正に気づいた際、「誰に言えばいいのか」深刻に悩む場合があります。自分の上司は適切に処分しようとするか、日本側は自分を保護してくれるか。それともパンドラの箱を開けようとした自分が潰されたり外されたりするか……。

後者だと認識する人たちは、こっそり私に連絡してきます。「経理が組織ぐるみで長年不正を行ってきたことに気づいてしまった。下手をすると億に達するような額。だが、財務部長は歴代総経理のお気に入り。彼女が泣きつけばたぶん最終的に処分されるのは私でしょう。どうしたらいいんでしょうか」

または「不正に気づいて、まずは内々に総経理へ報告した。ところが総経理の指示は『口外するな』。10年以上の不正となると、歴代総経理の責任が問われる。中には現在の役員や顧問もいる。せめて自分の任期中は、そんなことはさせないでくれ、という意味らしい。私はどうすればいいでしょう」という相談もあります。

私はこんな風に助言しています(これも日本側や現地トップに聞いてほしいです)

「ここで一番まずいのは、あなたが潰されたり会社を去ったりすること。良心を持つ社員が消えるのは、会社にとって不正見逃しよりダメージが大きい。もし、上司や日本側に言ってプラスな変化が見込めないなら、骨のある人が着任するまで機会を待ちましょう。義憤で玉砕するのは会社のためにも自分のためにもなりませんから」

こういったパターンは財務だけでなく調達でもありました。

■ 信頼するのもほどほどに

中小企業の場合、ボスは社長が兼任して行き来しているため、現地の管理部門は番頭さんのような立場の人に一任していることがあります。会計畑の女性の登用が多いです。女性の方がしっかりしている、信頼して任せられるという印象もあるんでしょうね。

ボスは日本と行ったり来たり、出張であちこち動き回ったりしているため、社印も通帳もこういう管理責任者に渡しちゃっていることが多いです。中には金庫の番号まで知っていたりする人もいます。近年のようにコロナで身動きが取れないとなると、よけいに現地一任となります。

さて、全てを管理している責任者に裏切られるとどうなるか。いともたやすく資産の移動ができてしまいます。

私の知っている会社では、現地子会社名義で購入した不動産が、経理のトップの手で本人の親戚名義に書き換えられていました。現地で成功し、得た利益で不動産を買っていた会社なんですが、何年かして気付いたら、すべての名義が変わっていた。

本人は正規の印鑑を管理していますから、手続き自体には全く瑕疵がありません。法的にも何の偽装もしていない。となると、「いやいや、日本の社長は承知していないんだ」と言ったって、それを中国の裁判で証明するのは非常に厄介です。

社内的に「ハンコを勝手に使った」という問題はあるものの、印鑑利用に関する社内ルールもなく、対外的には正規の処理をして譲渡が済んでいる。正規の手順で社員が手続きしている以上、何のチェックもせず全て渡してしまっているのは社内管理の問題ですから、相談した弁護士の結論も「お手上げです」でした。

(続く)

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