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海外拠点の闇~不正リスクポイントと対策 13

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2022年8月12日

【部門・領域別】不正はここで起きる【経理部門】対策編

本来なら会社のブレーキ役にならなきゃいけない経理が不正に手を染めると、事業全体、ひいては日本本社を揺るがす事態になることもあります。

■ 全てを委ねることが不正を誘発する

数年前、大連の日系ハウスメーカー関連会社で巨額不正がありました。財務担当者と中国側の役員クラス、銀行担当者が結託していたと報道されましたが、そういうことになると、200億円を超える金額を日本側が知らないところで動かせてしまいます。200万円じゃないですよ、200億円の横領です。

経理はそういうことができてしまう部署ですから、信頼するべき金庫番といえども、裏切られたらどうなるかということは、きっちり考えておく必要があります。

中小企業の場合、「一人に全部を預ける」のはお勧めしません。例えば、印鑑は外部の会計会社に預けて、使うときは経理担当者から申請することにしておき、経営者から許可が出ない限りは渡さない、などです。

とはいえ、特に小さい会社では時間がかかって面倒くさいという気持ちもよくわかります。

いちばん簡単なのは、信頼できる日系の会計事務所に業務の一部を委託して、常時、外部の目を入れておくこと。これが費用対効果も高いし現実的な対応策でしょうね。その費用さえ出したくないとなるとどうしようもないですが……、本音では、それぐらいは出しましょうよと言いたいです。

いまはデジタル化も進んでいますから、口座など何か動かしたらすぐに自動で通知がくるようなシステムはぜひ使って欲しいですね。一定の歯止めをかけておくことで抑止になります。

調達部門の回でも書きましたが、中国系の中小・オーナー企業では、自分の商売の根幹に関わることは必ずトップやその家族が握ります。経理はまさにビジネスの基盤ですから、絶対に裏切らない身内にしか渡しません。

身内に任せるわけにいかないなら、せめて全部を丸投げするのはやめましょう。もともと信頼できる相手だったとしても、不正を誘発することになってしまいます。お互いに不幸なことです。

■ 気づいた頃には手が付けられない

大企業では、定期的なチェックポイントを作っておくことに尽きます。先回りして全部の手口を押さえることはできませんから、少なくとも自分が把握している危険ポイントでチェックが入る仕組みを作ります。

前回で紹介した給与振込不正の場合は、経理の支払処理の後に誰もチェックしていなかったことが問題でした。それなら振込後に人事で再チェックをかける、というように、定期的な確認ポイントを設定します。マンパワー的に社内では難しいなら、これも外部に投げればいいと思います。

最後に、合弁会社の場合です。合弁会社は普通、日本側が会計を取り、人事を合弁相手に渡すことが多いです。中国側が人事を握り、日本が財務を握るようにするわけですね。ここで、主導権をどちらが握るかということも重要ですが、相手が握っている領域でも、お互いブラックボックス・アンタッチャブルにするのはマズいです。

透明化の手段として外部の会計事務所を使ったり、一定額以上の決済は両方がやると決めておいたりして、異常があってもある程度の額で気付く仕組みになっていればいいわけです。合弁の場合は特に、第三者を必ず組み込んでおきましょう。

それも中国側が選んだ業者ではなく、両者で選ぶようにします。中国語しかできない事務所では日本側との直接コミュニケーションが難しいので、日本語か英語のできるところを条件にした方がお互いに安心できます。

#余談

合弁会社で注意しなければいけないのは、実は、上記のような不正ポイントだけではありません。販売代理や調達など、もっと太く長く儲けられて社内で露見しにくい領域の方が危ない。しかも、気づいたところで潰し方が非常に難しいため、要注意です。

経理も業務の属人化が進みやすい領域です。気づいたら手のつけられない闇が広がっていたということのないように、日頃から注意していただきたいと思います。

(終わり)

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