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海外拠点の闇~不正リスクポイントと対策 16

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2022年11月30日

【部門・領域別】不正はここで起きる【倉庫】

部門別に不正の発生しがちなポイントと対策を見てきました。今回は倉庫の不正発生ポイントと対策について、まとめてお届けします。

■ 監視カメラにご用心

倉庫の不正は分かりやすいですね。モノを預かっていますから。気をつけることは二つ、窃盗と不良混入です。

対策は、これで万全とは言えませんが、監視カメラなど出入りの管理と、実地棚卸(実棚卸)は必須です。

出入りの管理はわざわざ言うまでもありませんよね。夜勤があったり、業者の出入りが頻繁にあったり、倉庫と工場が離れた場所に立地していたりすると、死角が生まれやすくなるので特に注意します。出入口に鍵をかけるだけでは問題が発生した際に確認や検証ができないため、監視カメラが必要です。

なお、監視カメラが壊れていた、録画の記録メディアに問題があって録画できていない、システムに問題があって録画が消去されていた……といった実例には何度も遭遇しました(もちろん故意の妨害のケースも)。

また、多くの録画システムは、1週間〜3か月程度で録画が上書きされます。後述の実地棚卸とあわせ適切な頻度でチェックを行い、管理に抜け漏れが生じないようにすることも重要です。

稼働している監視カメラには予防・抑止効果もありますが、機能しなくなったらカラスが止まるカカシと同じ。全く意味がありません。「導入したから大丈夫」と高をくくらず、ちゃんと稼働しているかチェックを継続してください。

■ 棚卸は必ず実地で

不正防止の棚卸は、帳票上だけでなく実地に行わないと無意味です。また、誰が行うかも牽制や仲間擁護排除の観点から考えてください。手間と防止効果のトレードオフではありますが、ある程度の頻度で行うことも重要です。

例えば年に一度の実地棚卸だと、最長1年間分の不正が発覚しません。また録画記録が3か月分しかない場合、棚卸に異常があっても3か月より前の問題は追及不能となります(それを知っている者は、棚卸の直前3か月を避けて不正を行います)。

実際、3年以上、帳簿の棚卸しか行っていなかった会社が久しぶりに実地棚卸をしたら、数千万円相当の不一致(実物が足りない)が発覚したことも。しかし、遡及調査をする術を持たなかったため泣き寝入りするしかありませんでした。

■ 不正を疑ったらすべきこと

不正の疑いが出たら、ある程度まで日にちを絞り込み、その間の監視カメラに映っている人全員と個別面談をします。犯人を特定するものが何も出てこなければ全員まとめて警察に引き渡すぐらいの行動は必要です。

これは会社が戦う姿勢を見せて今後の抑止効果を期待する目的もありますが、警察に引き渡した後に嫌疑不十分で釈放されても、これを機に「ということで、管理を厳格化します」と厳しい施策を導入するためでもあります。

このタイミングでの厳格化には社員も反発しにくいです。とくに高価な品がなくなっているなら、犯罪として扱い、絶対に撲滅するという姿勢を見せないと抑止力にはなりません。それでも一回では撲滅できないかもしれませんが……。

または、発想を転換して、在庫管理自体を外部業者に移管するという手もあります。いまはさまざまな技術を使って在庫管理を専門に行う業者がいますから、多少コストがかかっても不正が起き得ない仕組みにしてしまうのです。このあたりは、倉庫にある物の価値を考慮して、費用対効果で判断します。

この分野では、魔が差しても簡単に手が出せないような環境づくりに注力する方が、採用や研修で人に対して働きかけるよりも確実だと思います。ゆるい環境であれば、誰かが出来心を起こす可能性は排除できません。

■ 強い措置で不正を抑止

倉庫は物品が相手なので、調達のように金の流れが問題になるものより対策はシンプルです。出入りを透明化する、問題があれば早く見つかるようにする、毅然とした対策をとる、社外に委託することも考える、ですね。

倉庫からの横流しは、昔から日本企業を悩ませてきました。ずいぶん前、某完成車メーカーの現地工場に組織的な横流し集団がいるとが噂になりました。だから工場周辺のジャンク街を回ると、完成車を1台作れるだけの部品やパーツが揃うといわれたものです(笑い話や都市伝説ならよいのですが)。

当然、会社としても出入りをチェックしたり監視カメラをつけたりしていますが、相手もそれも理解した上で、誰がいつ実行するかを検討し、集団で取り組んでいます。イタチごっこです。

注意していてもモノは消えます。管理がゆるいと、調子に乗って金目の物ばかりがなくなるようになります。会社として看過するには非常に高い損失です。防止しようとするなら、それなりに強い措置を取らないと追いつきません。

(続く)

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