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社内規律の厳格化と円満合意退職の実践

中国ビジネスレポート 労務・人材
王 穏

王 穏

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2015年3月3日

記事概要

中国は日本と異なり、会社の経営管理面で多少の労使トラブルとなることがよくある。しかし、仮に、トラブルがエスカレートし、不適切な情報が社内でも流布された場合、会社又は個人のイメージダウンとなりかねない。このようなケースにどう対応し、また予防すべきだろうか。事例を交えて解説するものとする。

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―会社と会社幹部への名誉権侵害解決方法―

中国は日本と異なり、会社の経営管理面で多少の労使トラブルとなることがよくある。しかし、仮に、トラブルがエスカレートし、不適切な情報が社内でも流布された場合、会社又は個人のイメージダウンとなりかねない。このようなケースにどう対応し、また予防すべきだろうか。

【事例】 
A氏は某日系企業の従業員である。A氏は労務問題で会社幹部とトラブルになった。A氏は日本本社も含む他の従業員に、当該幹部から金銭を無心された旨のメールを送信し、幹部個人のイメージは著しく損なわれ、会社としても、その経営、管理面でダメージを負った。

【名誉権とは】
・名誉権とは、人格権の一であり、人がみだりにその名誉を害されない権利であり、現代の法律上(も)、人には、自分の名誉(評判)を守る権利があるとされており、これを名誉権という。
・言うまでもなく、他人を誹謗・中傷して名誉を傷つけることは名誉毀損という。名誉棄損は、犯罪であり、法的には名誉毀損罪に当たる。損害賠償を命じられる場合もある。名誉棄損が行われた場合に、それを放置せず、名誉(評判)を何らかの方法で回復する手段・手続きを名誉回復という。

【対応策】
上述の事例発生後、会社は如何に処理すべきか。
1. A氏に直ちに当該行為を止めさせ、事態がエスカレートすることを防止する。
2. A氏に教育的指導を行い、その行為によるダメージと法的結果等を理解させる。
3. A氏が退職しない場合、今後は会社、幹部への名誉侵害行為はしないことを保証させ、労働者に誓約書を提出させるなど、自主的に履行させることも考えられる。
4. 従業員が主張する内容を調査する。
調査を受ける側には、社内コンプライアンス規定から、このような告発がある場合、まず調査しなければならないことについて理解を求め、またその調査の結果も本人に伝える。
一方、調査の結果、一部又は全部が事実である場合、法律と社内制度に基づき処理することも重要。
5. 上述の方法でもA氏を抑制することができず、その行為がエスカレートした場合、法的措置を検討すべきである。

【法的措置】
また、法的措置は以下の通り考えられる。
1. 名誉権が侵されたとき、幹部は法により権利侵害行為の停止を請求できる
2. A氏の行為は幹部の名誉権を侵したので、一定程度においてマイナスのイメージを与えており、幹部はA氏にその影響の除去、名誉回復を請求できる
3. A氏の行為は幹部の名誉権を侵したので、幹部はA氏に謝罪を請求できる
4. A氏の行為が幹部に経済的損失、人身の危害又は精神的苦痛を与えた場合、A氏に損害賠償を請求できる
5. A氏の行為が非常に深刻で、悪い影響がある場合、幹部は刑事責任の追求も検討できる

【法的根拠】
『中華人民共和国憲法』
第38条:中華人民共和国公民の人格の尊厳は侵されない。如何なる方法でもっても公民を侮辱、誹謗、誣告することを禁ずる。
『中華人民共和国民法通則』
第101条:公民、法人は名誉権を有し、公民の人格の尊厳は法律の保護を受け、侮辱、誹謗等でもって公民、法人の名誉を損なうことを厳に禁ずる。
第120条:公民の氏名権、肖像権、名誉権、栄誉権が侵された場合、権利侵害の停止、名誉回復、影響の除去、謝罪を請求でき、かつ損害賠償を請求できる。
法人の名称権、名誉権、栄誉権が侵された場合、前項の定めを適用する。
『中華人民共和国刑法』
第246条:暴力若しくはその他の方法で公然と他人を侮辱し又は事実を捏造して他人を誹謗し、情状が深刻な場合、3年以下の有期懲役、拘留、拘束に処する又は政治権利を剥奪する。
前項の罪については、告訴により処理するが、社会秩序と国家利益を著しく害する場合はこの限りでない。

【まとめ】
会社と従業員との意見の相違はありえることであり、ときにはトラブルとなることもあるだろう。中国では優秀な従業も少なくない一方、腹いせで誹謗中傷する従業員もいる。
このようなことが起きた場合、もみ消しも更にエスカレートする可能性があり、きちんと対応しなければならない。
最も肝要なことは、この種の従業員に会社のことを理解させることは難しく、同様の行為を繰り返すので、如何に円満退職させるかを最優先して対応することである。一時的に費用が発生しても即刻辞めさせることに尽きる。

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