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ログイン2020年11月17日
前回までに、信用状を使用した取引及び送金による取引について説明させていただいております。今回は、信用状を使用しない荷為替取引の一形態である、D/P、D/A取引について説明させていただきます。
Q D/P、D/A取引という、信用状を使用しない荷為替取引があると聞きましたが、その特徴と流れを教えて下さい。
A 信用状を使用しない荷為替取引による決済は、例えば、輸出者が輸入者の決済能力について懸念を余り有しない場合や、自社の関連会社や合弁会社等の提携先等の先との決済に利用されています。本来送金によって決済してもよい取引ではあるが、出荷(輸出)と入荷(輸入)の支払いの関係を個別に紐づけたいということが理由となるケースもあります。支払いのタイミングにより以下の二つの種類があります。
- D/P取引 Document against Payment (支払渡し)
輸出側の取扱銀行から、荷為替手形が輸入側の取扱銀行経由で輸入者に呈示されますが、その際に、輸入者が支払いを行ないその引き換えに船荷証券等の書類の引き渡しを受け、その証券を輸入者が船会社に呈示して貨物を引き取る方法です。
- D/A取引 Document against Acceptance (引受渡し)
D/P取引と同様、輸出側の取扱銀行から、荷為替手形が輸入側の取扱銀行経由で輸入者に呈示されますが、その際に、輸入者が荷為替手形の引受を行なうのと引き換えに船荷証券等の書類の引き渡しを受け、その証券を輸入者が船会社に呈示して貨物を引き取る方法です。
解説(次ページフローチャート参照)
① 輸入者と輸出者の間で、売買契約を締結します。
② 輸出者は商品を船積します。
③ 輸出者は船会社から船荷証券(Bill of Lading (B/L))を受領します。
④ 船会社は海上輸送を行ないます。
⑤ 輸出者は輸出手形の買取銀行に書類を持ち込み、買取の依頼を行ないます。
⑥ 輸出手形買取銀行は、関連書類の内容を確認して、輸出者に対する与信枠をもとに、買取を実行し、買取の代り金を輸出者に支払います(⇒輸入者が支払をする前に輸出者が資金を受領していることに留意)。
⑦ 買取銀行は、買取を行った輸出手形・B/Lおよびその他関連書類を、発行銀行に送付します。
フローチャート
⑧ 輸入側銀行は、書類が到着したことを輸入者に通知し、輸入手形の決済(D/Pの場合)ないしは引受(D/Aの場合)を依頼します。
⑨ 輸入者は輸入手形の決済(D/Pの場合)ないしは引受(D/Aの場合)を行ないます。
⑩ 輸入側取扱銀行は、輸入者に船積書類(B/L)等を渡します。
⑪ ⑦の書類を受け取った輸入側銀行は、D/Pの場合、買取銀行に輸出手形代り金の支払を行ないます。D/Aの場合は買取銀行に引受通知をします。
⑫ 輸入者は船会社にB/L等を呈示します(⇒輸入者が決済ないしは引受に応じてから発行銀行はB/Lを渡していることに留意)。
⑬ 船会社は貨物を輸入者に引き渡します(⇒輸入者は上記で受領したB/Lを船会社に呈示して商品を受け取っている)。
⑭ (D/Aの場合)輸入者は、輸入手形の期日に代金を支払います。
Coffee Break 元銀行マンのつぶやき~当事者の信用力にご留意を!
本コラム第三回にてご説明した「信用状」取引の流れと、上記を比べてみると、D/P、D/A取引は、荷為替手形を使用する取引なので、L/C取引と似ている部分がかなりありますが、輸入者のリスクをカバーする信用状が発行されていないので、当事者は全て輸出入者の信用力に依拠して取引を行なっている点にご留意下さい。
小職の経験上、信用状取引や送金取引と比較して、D/P、D/A取引の件数は相対的には少なかったところですが、送金取引と比較すると、D/P取引は、「輸入者がお金を支払ったらモノを引き渡す」側面があるので、輸出者にしてみれば、送金取引(特に前払い送金)と比較すると、支払のリスクが保全されているということが言えると思います。一方、D/P取引の際に輸出買取銀行から買取し資金を受領したが、その後輸入者に取立したにもかかわらず資金が回収出来ないケースも考えられます。その場合、輸出買取銀行は輸出者に遡及して資金の返却を求めることになります。D/A取引の場合は、輸出手形の引受を行ったらモノを引き渡すことになり、実際の支払い期日までにはある程度の期間が設けられるので、より慎重な事前の検討が必要になります。
荷為替取引は、商品・書類・お金の流れのタイミングがかなり入り組んでいるので、最初は分かりづらいことも多いかと思いますが、具体的な取引に即して理解を深めて下さい。
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