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【コラム】中国現場体験記(57) 町ごと引越し?~山西省大同市の驚きの政策~ 

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2012年11月9日

2010年5月、山西省に所在する世界遺産/仏教の聖地・五台山を観光した後、同省の大同市に向かいました。大同市を訪れた理由は、世界遺産/雲崗石窟、絶壁に建つ仏教寺院/懸空寺、五岳聖山の一つの恒山、中国最古級の木造建築物である木塔、中国三大九龍壁の一つである九龍壁などを見学するためです。今回は、山西省大同市に車で入ったときに気付いた町並みの違和感、および中国式の立ち退きに関する現場体験記です。

1.山西省大同市
山西省大同市は、敦煌の莫高窟、洛陽の龍門石窟と並ぶ世界遺産/中国三大石窟である雲崗石窟で有名な街です。中国三大石窟の中では、意外にも敦煌の莫高窟が中国人には知られておらず、「どうして日本人は敦煌の莫高窟にそれほど興味を持つのか?」と、中国の友人にもしばしば疑問に思われていました。相対的に、洛陽の龍門石窟と山西省大同市の雲崗石窟が中国では有名です。

筆者は、仏教の四大名山の一つである五台山から車で大同市に向かいました。大同市内が視界に入ってきたとき、街全体が不自然に新しく、何か違和感がありました。
歴史のある街のはずが、建物や道路のみならず、目につくもの全てが新たらしかったのです。その原因を運転手に聞いてみました。

「町並みが新しいみたいだけど、どうしてかな?」
「町全体が立ち退きをして、引っ越したからだよ」
「・・・?どういう意味?」
「今までの大同市内を一度更地にしてしまって、昔の町並みを再現しようとしているのだよ。」
「じゃ、その間、運転手さんとか、町に住んでいた人はどうするの?」
「新しい家を別の場所に準備してもらったよ。以前の家より広くて、むしろ良かったよ」

2.北京市
中国で有名な立ち退きといえば、重慶の事案があります。一軒だけが立ち退きを拒否した結果、その家の周りをすべてブルドーザーで掘り返され、まさしく陸の孤島にされてしまったという件です。立ち退きに際し、自殺者なども出る一方、逆に立ち退き料で潤おった人たちもいました。

立ち退きについては、北京に住んでいた筆者の周りでも多くありました。近くの川沿いにあった火鍋屋が大規模な立ち退きにあい、突然なくなっていたこともありました。中でも印象的だったのは、日本料理屋が多く立ち並んでいた北京市のある一角の立ち退きでした。そこは、北京市の日本人街/麦子店からも近い場所でした。すき焼き屋、焼鳥屋、居酒屋、日本式焼肉屋などが並ぶほか、アフリカ料理屋もありました。それらが突然、北京市当局から開発に伴い立ち退くように指示されたのです。こういった場所の土地使用権は又借りなどもざらにあるため、日本人経営者にとっては弱い部分もあります。しかしながら、何らの過渡的措置もなく、いきなり立ち退きを要求するのは、日本ではあまり見受けられないように思います。逆に、こういった中国政府の強引な姿勢が、スピードのある開発を後押ししていた部分もあります。
筆者が聞いたところでは、立ち退き料もまともには出なかったようで、移転先での新規の回転資金なども持ち出しだったようです。新しく建物を建てて開店したばかりだったすき焼き屋などは、持ち出しに持ち出しを重ねる結果となりました。

3.中国と日本の比較
中国の地方政府が決めた開発案件には、とんでもない速さですすむものがあります。その結果、資金が尽き、途中で建設をやめたまま放り出されたビルも各地で見かけます。見苦しいから、ビル全体に、きれいな新築ビルをプリントした幕を掛けた、という冗談みたいな話もありました。そんな中国とは対照的に、現在の日本では強制的にこのような事を行うことはほとんどないため、いつまで経っても開発が進まないケースが多々あります。国・地方政府全体としての考えを取るか、個々人の意見を重視するかはときとして難しくもありますが、山西省大同市の思い切った町ごとの引っ越しは、筆者に大きな印象を残しました。


※山西省大同市にある五岳聖山の一つの恒山

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