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コンプライアンス至上主義を再考する①

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2021年4月16日

また、物議を醸しそうなテーマを選んでしまいました。
よりによってコンプライアンスにケチをつけるような……。
ですが、ずっと気になっているテーマでもあるので、賛否両論は承知の上で問題提起しちゃいましょう。

原則として、法律法規はビジネスの大前提。これは私も異論ありません。
ただ、「原則として」であって、どのような場合でも最優先事項または絶対的前提かと言われれば、私は「そうとは思わない」という立場です。
なぜ、そう考えるのかを書く前に、実際に直面するケースで考えてみてください。

【事例①A】
A社の事務担当者は月平均20時間ほどの残業を行っており、残業代は基本給を基数として計算し、支給している。
事務担当者の多くは地元出身で、マイカー通勤者も少なくない。

【事例①B】
B社の現場ラインでは月平均60時間ほどの残業を行っている。
現場作業者の多くは外地出身で、宿舎に居住している。

法律では、「残業は1日1時間、最長でも3時間まで、月36時間まで。また、残業代の基数は、本人が得るべき給与全額で計算する」とされています。
さて、事例①の両社の現状について、皆さんはどう思われますか。
どちらも実際に存在するケースですよね。

もう一組、挙げてみましょう。

【事例②C】
C社では、会社の創業期から勤務している高級管理職の王氏(仮名)を解雇したいと考えている。
懲戒解雇に該当するような問題言動はないが、年功序列で高級管理職まで昇進させたものの、明らかに能力不足であり、給与や経営者の期待に見合う仕事は到底できていない。
相当の期間、過剰な処遇を行ってきており、経済補償を支給するとなると額が大きく周囲も納得しないと思う。
このため、解雇にあたっては経済補償を支給しない形で進めたい。

【事例②D】
D社では、会社の創業期から中心になってやってきた高級管理職の張氏(仮名)を解雇したいと考えている。
立ち上げ期は経営者を支えて奮闘してくれたが、その後、徐々に勤務態度が悪くなり、証拠はないが不正の噂も絶えない。
若手との給与差が10倍以上あることは周知の事実であり、このまま置いておくと組織の活力や士気に影響しかねない。
最近、一部業者と結託して競合他社に内部情報を流している疑いが浮上し、決定的証拠はないものの、情況的にはクロと判断せざるを得ない。
早急に社内から出さないと深刻な影響が出るため、直ちに懲戒解雇したい。

事例②の両社の場合はどうでしょう。
これらも、いくつかの事例を混ぜたり細部を変えたりしていますが、実際にあるケースです。
経済補償を払わない解雇となると、懲戒解雇か諭旨退職(自らの辞表提出を求める)になりますが、本人が退職を拒めば懲戒解雇しかありません。
そして、懲戒解雇するには、どちらも客観的根拠が不足しています。

これら四つの事例は、確かにどれも法的な問題があります。
しかし、私が経営者から「当社の現状について助言がほしい。コンプライアンス的には問題があると思うのだが」と相談を受けた場合、①も②も、二つの会社で助言の内容を変える可能性が高いです。

どちらの事例でも、前者には「このまま実施するとリスクが大きいですよ」と伝えるでしょうし、後者には「確かにリスクはありますが、それを認識した上で、このまま実施しましょう」と助言することになると思います。

コンプライアンスを経営の絶対的前提条件とするならば、これら四つの事例は、すべて問題があり、このままの形で実施すべきではありません。
さて、今回は問題提起編。次回また続けましょう。

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