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ログイン2006年7月17日
【質問】
最近、各地のクライアントから次のような同内容の質問が殺到しています。
外商独資企業を設立しているが、一連の法改正があったようで、以下の問題にぶつかっている。どのように対応すればよいか。
1) 監事は、任命しなければならないのか。
2) 董事会を設置しなければならないのか、それとも1名の董事のみで良いのか。
【結論】
まず、上記クライアントからの質問に対して、現段階の最終結論から先に申し上げます。
◆ 新設の外商独資企業の場合、
Ø 少なくとも1名の監事を任命しなければならない。
Ø 董事会を設置しなくてもよく、1名の執行董事を任命すればよい。
但し、一部の地方においては、必ずしも監事の任命を求めませんので、設立申請途中で新たに監事の追加を指導される可能性を考慮しながら、監事を予め任命するかそれとも様子を見てからにするかを状況に応じて対応すれば良いと思います。
◆ 既存の外商独資企業の場合、様子見でよい。
◆ 外商合弁企業・合作企業の場合、今回の法改正の影響を受けることはない。
また、将来的に更なる法改正・政策の変動の可能性も、既存の外商独資企業の場合より低い。
以下、上記の結論に達した理由について述べていきたいと思います。
【解説】
1、 法改正の背景
今般「会社法」(2006年1月1日より施行)、工商外企字[2006]81号(2006年4月24日より施行)、工商外企字[2006]102号(2006年5月26日より)などの一連の法改正・政策の変動が行われました。
きっかけは、言うまでもなく、新「会社法」の公布であり、今後外商投資企業も、徐々に特別法による一部の特別規定を排除し、会社法の規定に合わせるという法改正の方向性を示したものといえます。
また、国の法律である新「会社法」の施行に伴う各地の対外経済貿易委員会、工商局で生じた見解の相違は、中央の商務部・工商行政管理総局から外商投資企業の登記事項を管轄する国家工商行政管理総局の102号の公布により、ほぼ決着したといえよう。
ただ、各地の許認可部門には、まだこれらの法改正に対する認識がばらばらな様相を呈しているようです。このため設立申請中又はこれから設立しようとする外商独資企業に戸惑いをもたらしているようです。
2、 監事の任命義務について
1) 方向性として、外商独資企業は、監事を選任する必要があります。
即ち、将来的に、新設・既存の外商1社独自出資による外商独資企業ならびに外商数社合弁による外商合弁企業(以下あわせて「外商独資企業」という)のいずれも、監事を選任しなければなりません。
「会社法」が監事の選任を必須義務にしたかどうかについては、まだ見解が分かれていますが、実際の外商投資企業の設立に当たってもっとも権限の大きい商務部(対外経済貿易委員会)ならびに工商局は、一部ではあるものの、既に「監事の選任が必要」という認識を示しているので、将来的に外商独資企業は監事を選任する方向で固まりつつあるといえます。
なお、代表的な見方は、主に以下の3種類(2006年7月6日現在、慧元・ジョイハンド法律事務所の調査による)。
|
新設外商独資企業に対して |
既存外商投資企業 に対して |
許認可部門 |
1 |
監事必要 |
現在必要としないが、 変更登記時に監事追加必要 |
【商務部】 |
2 |
監事必要 |
要求しない |
【上海】浦東新区工商局・徐漚工商局 【広州】開発区管理委員会 【蘇州】対外貿易経済合作局 |
3 |
必要ない |
必要ない |
【北京】商務局 【上海】対外経済貿易委員会 【大連】対外貿易経済合作局・工商局 |
注:対外経済貿易委員会と工商局の対応も分かれているケースがあります。対外経済貿易委員会より批准証書を受領したものの、工商局での営業許可証申請の時に、監事の任命を要求されるケースもありました。
2) 既存の外商独資企業がとるべき対応について
既存の外商独資企業については、国家工商行政管理総局の102号においては、2006年1月1日まえに設立された外商独資企業に対して、工商局側から特に強制的な指導をしないと明確に規定しております。
ただ、これにより、既存の外商独資企業は、今回の法改正の影響を受けませんが、将来的な方向性として、更なる法改正・政策の変動により、上記新設の外商独資企業の基準に合わせるように要求される可能性が出てきました。
なお、行政立法による法改正は、あくまで行政側の責任で行われておりますので、既存の外商独資企業には、なにも今回の法改正により積極的に対応する必要がありません。将来的に監事の任命を求められた場合、そのときになれば、新たに任命すればよいという様子見の姿勢でよいでしょう。また、人選さえ決まれば、手続自体は簡単に済みます。
3) これから新設の外商独資企業がとるべき対応について
一部の地方では、まだ監事の任命を要求しないものの、既に一部の地方で要求し始めていること、対外経済貿易委員会で監事なしで許認可を取得したものの、工商局で新設登記を申請したところ監事の任命を要求されたケースが出てきたこと、中央の商務部・国家工商行政管理総局での意見がほぼ監事任命の方向になったことなどを考えれば、仮に管轄の許認可部門から監事の任命を要求されなくても、1名の監事を任命しておいたほうが望ましいでしょう。
4) 申請途中の外商独資企業がとるべき対応について
既に設立申請を提出しており、批准証書、営業許可証まで取得している外商独資企業に対しては、許認可行政の対応は、以下の3種類のいずれかになると思われます。
(1) 許認可手続を一時停止させ、申請者に対して、監事の選任に伴う定款の修正、監事の任命書、略歴などの追加提出を求める。
(2) 許認可手続をそのまま続行させるが、期限を決めて定款の修正、監事の任命書、略歴などの追加提出を求める。
(3) 申請提出、批准証書の発行、営業許可証の発行を以って、既に設立済みの外商投資独資企業と見なし、すぐに監事の選任を求めず、そのまま手続を続行させる。
厳密に言えば、営業許可証の発行日が、会社法人の設立日となります。会社の設立日が、工商外企字[2006]81号の公布日である4月24日(法律論を抜きに、実務上の角度で、工商局の立場から、2006年1月1日か、工商外企字[2006]102号の公布日である5月26日を判断基準日とする可能性もあります)の前になるか後になるかによって、新設か既存かの判断がされますが、許認可実務上行政の裁量・判断しだいです(特に設立申請の場合、行政に異議申し立ては、コストパフォーマンス上好ましくない事態ですので、特別な事情がない限り行政の裁量に従うべきでしょう)。
(1)に該当する場合、設立手続が遅延することもありえます。ただ、法律法規の改正により生じた行政手続の詳細をどのように処理するかについては、各地においてはいずれの地域もまだ固まっておりません。また、監事の任命が許認可において許可・却下にかかわる重大事項ではない上、今回いわば不可抗力に近い法改正に申請者に不利を強いることも合理的ではないため、(2)、(3)に切り替えるように説得することが可能です。
(2)に該当する場合、本件設立手続にまったく影響が出ませんので、設立手続と同時進行で、監事選任の書類を補足すれば済みます。
(3)に該当する場合、既存の外商独資企業として、今回はまったく影響を受けません。ただ、商務部と各地の認識がまだ統一されていないものの、将来的に既存の外商投資企業が董事の変更とか何らかの事由で変更登記する場合には、監事の選任手続もあわせて申し込むようと行政指導を受ける場合があります。その場合でも他の変更登記手続きと合わせて処理すればよろしいです。
従って、設立申請途中の外商独資企業は、まず管轄の対外経済貿易委員会と工商局(匿名でもかまいません)に確認した上、手続の修正が必要と指導される場合には、事情を説明すれば、考慮してくれると思います。
なお、今回の法改正は、管轄部門の権限で行われたものですが、申請者側にすれば、許認可部門に言われたらそれに従って処理する姿勢をとればよく、あえてこちらから積極的に定款を修正し、差し替える必要はありません(逆にその場合問題を複雑化することになります)。商務部も、各地域の処理の相違を認めながら、企業側が許認可部門から監事の選任に関する書類を明確に求められた場合以外、あえて監事の選任を行う必要はないという認識です。
3、 董事の任命義務について
1) 結論
◆ 董事会の設置について
董事会をもたず、1名の執行董事のみの外商独資企業は、今回の法改正で、董事会を新たに設置する必要はありません。
◆ 董事の任命について
Ø 1名の執行董事のみを任命している外商独資企業は、新「会社法」の規定に合致するため、変更する必要はありません
Ø 董事を持たない外商独資企業については、次の
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