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徐々に姿を消す営業税、これが意味するものは何か?企業に与える影響の分析と対応策

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2013年12月3日

中国は1994年の税制改革を通じて、現行税法の基本的な体系を確定した。その基本的な特徴は以下の通りである。
1. 流通税(主に増値税、営業税、消費税、関税、付加税などが含まれる)を主とする。
2. 所得税(主に企業所得税、個人所得税などが含まれる)を副とする。
3. その他の税目(主に土地増値税、不動産税、印紙税、などが含まれる)を補足とする。

流通税においては(本文では主に中国国内貿易にかかわる流通税について検討する。輸出入貿易の流通税は、全体としては国内貿易のそれと同じであるが、一部特別な処理が行われることもある)、業界の特徴に照らして、「二元化」徴収の原則を定めている。それは以下の通りである。
1. 第一次、二次産業については主として増値税を徴収する。
2. 第三次産業については主として営業税を徴収する。

営業税から増値税への一本化(以下、「営改増」という)以前における、中国の増値税、営業税に関する主な政策について(「交通運輸業および現代サービス業」を除き、その他の業界では現在も依然として以下の政策が実施されている)、要点を下表にまとめて説明する。

税目 主な法律根拠 関係する業界(徴税範囲) 主な特徴
増値税 増値税暫定条例」およびその実施細則など 貨物貿易、加工貿易、修繕補修。 段階毎に徴収し、増値税専用発票に基づき段階毎に相殺控除する。最終的な理論上の効果は、各取引段階ではその付加価値部分(差額部分)についてのみ増値税を計算納付することとなる。
営業税 営業税暫定条例」およびその実施細則など 交通運輸業、建築業、金融保険業、郵便電気通信業、文化スポーツ業、娯楽業、サービス業、無形資産譲渡、不動産販売。 営業収入全額について営業税を計算納付する。特段の法定事由を除き、相殺控除の問題は存在せず、税負担の不公平を招くおそれがある(税負担は経営コストの影響を受けない)。また、業界毎に細分化されているため、業界間の税負担の差が大きい。

中国は2009年に「増値税暫定条例」およびその実施細則、「営業税暫定条例」およびその実施細則を改正しており、増値税、営業税についてある程度の改革を行った。主として増値税の相殺控除の範囲を拡大し(固定資産の仕入税額を相殺控除の範囲に加えた)、営業税の課税範囲を拡大した(特に国外法人の営業収益に関する税負担を重くした)が、全体としては増値税、営業税を主とする「二元化」の流通税体系に変更はなかった。

中国は2012年から地域、業界を分けて営改増政策を徐々に推進している。つまり、営業税を徐々に廃止し、増値税「一元化」の流通税体系への変更が始まっている。

中国の営改増の過程は未だ完了しておらず、現時点での関連状況について、下表にまとめて説明する。

時間 主たる法的根拠 地域 関係する業界(徴税範囲)
2012年1月1日 「『営業税から増値税への一本化試行方案』の印刷発布に関する通知」、「上海市で交通運輸業および一部現代サービス業の営業税から増値税への一本化試行の実施に関する通知」など 上海市 交通運輸業(陸上輸送サービス、水上輸送サービス、航空輸送サービス、パイプライン輸送サービス)および一部現代サービス業(研究開発および技術サービス、情報技術サービス、文化クリエイティブサービス、物流補助サービス、有形動産リースサービス、鑑定コンサルティングサービス、ラジオ映画テレビサービス)
2012年9月1日から2012年12月1日(各地域で実施時期は異なる) 北京市など8省市における交通運輸業および一部現代サービス業の営業税から増値税への一本化試行の実施に関する通知」など 北京市、天津市、江蘇省、安徽省、浙江省、福建省、湖北省、広東省
2013年8月1日 「全国における交通運輸業および一部現代サービス業の営業税から増値税への一本化試行税収政策の実施に関する通知」など 全国範囲
現時点では未定である。
(早ければ「第十二次五ヶ年計画」、即ち2015年末までに完了する意向がある。)
全国範囲 全業界に徐々に普及させる(中でも、鉄道輸送、郵便電気通信は、次期優先普及業界となるものと思われる。

全体として、営改増は産業構造および企業の税負担に対し積極的作用を及ぼすことができると言える。
1. 産業構造について:
これまで、増値税は主として第一次、第二次産業に適用され、営業税は主として第三次産業に適用されていた。営改増は各産業間の税負担を均衡させ、特に第三次産業の二重課税の問題を解決しており、理論上は、第三次産業の発展に有利となる。

2. 企業の税負担について:
増値税仕入税額の相殺控除により、理論上は、企業の税負担を軽減させることができる。とは言え、具体的な税負担は業界の特徴、企業自らの経営などの状況によって定まるものでもある。例えば、上海において営改増が試行されて以来、運輸・倉庫業企業の税負担は普遍的に大幅上昇となっており、主な原因は当該業種企業の相殺控除できる仕入税額が少ないことにある(借地の賃借費用も現時点では相殺控除可能な仕入税額の範囲に該当しないなど)。

このため、長期的に見れば、営改増(特に営業税が完全になくなった後)は、増値税の相殺控除の連鎖を次々と繋げ、拡大、延長させることを可能にし、第三次産業が各段階で営業税を徴収される状況を回避することで、第三次産業の税負担を軽減させることができ、第三次産業の発展加速を助け、第三次産業の分業細分化および資源配置の最適化を促進することができる。

営改増は強行規定であるため、実際の企業から見れば、選択実施するのみである。営改増の現時点における変革の過程には、以下の問題が存在するため、企業は特に注意しなければならない。

1.税負担の増加について:
実際に税負担が増加する企業は、主管税務機関との連絡を維持することが考えられる。税負担が増加した原因および結果をありのまま主管税務機関に報告し、業界的、地域的な税収補助、および税法の調整などの措置(増加した税負担をどのように処理するかについては、現時点では定まっていない)の獲得に努める。

2.税収上の優遇について:
営業税を納付していた際に享受していた税収上の優遇政策は、営改増後も、多くは保留されるが、適用条件および申請の手順などには変更があると思われ、一部の税収上の優遇は取り消されることも考えられる。このため、企業は実際の状況に照らして、これまでの税収上の優遇に関する継続適用の可否および適用方法などを判断する必要がある。

3.財務、発票、税務管理について:
増値税仕入税額の相殺控除の管理は非常に厳格である。即ち、財務、発票、税務管理に関する専門性、コンプライアンスについて、より高度な要求が出される。例を挙げれば、特に増値税専用発票の管理、納税申告などにおける具体的な処理に注意しなければならず、さもなければ、重大な法的リスク(行政責任上のリスク、更には刑事責任上のリスクを含む)を生じさせるおそれがある。

4. その他。

以上をまとめると、中国が推進する営改増政策は、全体的、長期的にみれば、産業構造の調整促進、企業の税負担の軽減に有利である。とは言え、営改増の過程においては、業界および企業自らの特徴により、具体的な対応策を講じる必要もある。中でも、財務、発票、税務などの問題にかかわるものについては、専門性が強いことから、その過程では専門家(弁護士、税理士、会計士)と必要な意見交換を行うのがよい。

(里兆法律事務所が2013年9月13日付で作成)

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