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持分譲渡は経済補償金と本当に関係がないのか

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2014年12月25日

持分譲渡は企業が自身の発展を調整し、市場環境に適応するための一つの普遍的な方式である。法律上、持分譲渡自体は従業員の労働契約の履行に影響せず、企業はこのために経済補償金を支払う必要はないが、しかし、実務処理においては、従業員から持分譲渡時に経済補償金などの法定外の要求を求められることがある。また、企業は持分譲渡の実現や持分譲渡後の企業の経営改善のために、労働契約の解除を通じた従業員配置が必要になるものと思われ、これらの状況においても、経済補償金の問題が発生する。これらの問題について、本文では個々に分析を行う。

持分譲渡自体は経済補償金との必然関係はない

「労働契約法」第33条によれば、「雇用主の名称、法定代表者、主要責任者または投資者などの事項の変更は、労働契約の履行に影響しない」と規定されている。本規定は投資者の変更は労働契約の履行に影響しないことを明確にしており、また持分譲渡は正に投資者変更の重要な形式であることから、法律上、これは持分譲渡が労働契約の履行に影響しないことを意味しており、労働契約は継続的に履行され、労働契約の解除または終了が生じない状況[1]においては、原則上、従業員に持分譲渡を理由として企業に対し経済補償金の支払いを求める権利はない。

本問題について、一部の地区では更に明確な規定を設けており、例えば以下の通りである。

・広東:「広東省高級人民法院、広東省労働紛争仲裁委員会の『労働紛争調停仲裁法』、『労働契約法』の適用に伴う若干事項に関する指導意見」第23条は、「雇用主の名称、法定代表者、主要責任者または投資者の変更は、労働契約の履行に影響せず、労働者の勤務年数は連続して計算されなければならない。労働者が労働関係の解除ならびに雇用主(投資者)へ経済補償金の支払いを求める場合は支持しない」と規定している。
・山東:「山東省労働契約条例」第21条は、「労働契約の履行期間において、雇用主に投資者の変更事項が生じた場合、労働契約の関連条項を変更することができるが、労働契約の履行には影響しない」と規定している。

以上をまとめれば、従業員が持分譲渡を理由に企業に対し経済補償金の支払いを求めることには、法律根拠がなく、これは法定外の要求であり、企業は拒絶することができる。このため、法律上では、持分譲渡と経済補償金には必然関係はない。

従業員が持分譲渡を理由に経済補償金の支払いを提起する問題

法律上、持分譲渡と経済補償には必然関係はないが、実務においては、たとえ法律根拠がないとしても、一部の従業員が時に経済補償金支払いの要求を提起することもあり、一般的な理由は主に以下の通りである。

・持分譲渡により投資者を変更され、企業は従業員のこれまでの勤務年数をひとまず買い取り[2]、これまでの勤務年数について経済補償金を支払わなければならない。
・投資者の変更は従業員の今後の発展に影響し、従業員は安心して仕事ができないため、企業に対し経済補償金を支払う方式を通じて、従業員のこれまでの勤務年数をひとまず買い取るように要求する。
・投資者の変更後に大規模な人員削減の実施が懸念され、利益を守るため、企業に対し持分譲渡時に従業員のこれまでの勤務年数を繰り上げて買い取り、経済補償金の支払いなどを求める。

従業員が経済補償金の支払いを求めた後、通常、企業は持分譲渡の取決め状況に基づいて、対応方案、即ち経済補償金支払いの可否および方法を定めなければならない。これについて具体的な分析は以下の通りである。

1.   経済補償金を支払う方案

本方案では、企業が従業員の持分譲渡前の勤務年数を計算し、当該勤務年数について経済補償金を支払って買い取り、持分譲渡後、法に従って経済補償金を支払わなければならない状況が再度生じた際は、従業員の持分譲渡前の勤務年数については計算しないというのが全体的な原則となる。

本方案は通常、持分譲渡の当事者双方がいずれも従業員に対する経済補償金の支払いに同意した場合に適用され、従業員の持分譲渡前の勤務年数の買取りを通じて、持分譲受者は従業員勤務年数の負担のない企業を獲得することになる。

参考までに、経済補償金支払いの具体的な法的形態には、通常、以下の種類がある。

・企業は従業員との労働契約を協議解除し、経済補償金を支払った上で、双方が改めて労働契約を締結する。
・従業員は企業に対し辞職を申し出、企業が経済補償金を支払った上で、双方が改めて労働契約を締結する。
・企業と従業員の双方は「勤務年数と経済補償金の清算協議書」を締結し、勤務年数の買い取りの関連事項などを明確に取り決める。

2.   経済補償金を支払わない方案

本方案では、企業が「労働契約法」第33条で定める労働契約の継続履行の原則を理由に、法に従って経済補償金の支払いを行わず、従業員の持分譲渡前の勤務年数については持分譲渡後も依然として企業が負担するというのが全体的な原則となる。

本方案は、通常、持分譲渡の当事者双方が従業員への経済補償金の支払いについて合意できない場合に適用され、持分譲渡者は従業員の持分譲渡前の勤務年数に対応する経済補償金の支払い責任(「偶発的な責任」に該当し、必ず発生するものではない)を持分譲受者に転嫁し、持分譲受者が持分譲渡後に自ら従業員問題を処理することになる。

経済補償金を支払わない方案を採用する際には、従業員に対しはっきりとした理由説明を行わなければならず、これは企業が従業員との意思疎通を強化し、法的理由を説明する必要があり、必要であれば労働組合、労働部門の助けを借りて説明を行うことも考えられ、また、持分譲受者の協力を得て持分譲渡後の従業員の就業、配置に適切な保証を与えることも考えられる。

なお難題として、時に従業員は単に経済補償に関する要求を提出することだけではなく、ストライキ、サボタージュ、企業の生産経営秩序の破壊、企業の財物の破壊などの方法により、企業にその経済補償に関する要求に応じるように迫ることも考えられ、このような状況が出現した場合には、企業は方案の堅持、理由と根拠の明確化、支援の請求、適度の譲歩、適切な処罰という対応原則に従い実施することが望ましい。

・方案の堅持とは、全体的な原則は変えてはならないことを指し、即ち、従業員がストライキ、サボタージュを行うからと言って、従業員に経済補償金を支払ってはならず、さもなければ、従業員は今回または今後も、より多くのその他の法律根拠のない要求を出してくるものと思われる。
・理由と根拠の明確化とは、経済補償金を支払わない法律根拠、理由を明確にした上、忍耐強く従業員に対する解釈説明を行うことを指す。
・支援の請求とは、状況がコントロール不能となり、またはコントロール不能になることが予期される場合、労働部門、公安部門などの政府部門に支援を求める必要があることを指す。
・適度の譲歩とは、方案を堅持する前提の下、適度に従業員に対する配慮、例えば適度に慰労金を与えること、持分譲受者に対し従業員の雇用継続に関する一定の保証を与えるように求めることなどを指す。
・適切な処罰とは、従業員が規則制度および労働規律に違反した場合、企業は事件を記録しなければならず、重大な違反があった従業員については、企業は一部の扇動的役割を果たした従業員を見極めて、規則違反として処分し、重ければ解雇する必要があることを指す。

企業が持分譲渡を実現し、または持分譲渡後に経営を改善するため、労働契約を解除する方式を通じて従業員を配置する際の経済補償問題

持分譲渡の背景は様々であり、一部の持分譲渡者は持分譲渡を実現するため、持分譲受者の要求に基づき、法定理由を探し一部の従業員の労働契約を解除した上で、改めて持分譲渡を進めるであろうし、一部の持分譲受者は持分譲渡後に、経営改善のため、企業のこれまでの体制に対する改革を進めなければならず、この場合も一部従業員の労働契約を解除しなければならない。上記状況において、労働契約を解除する際、企業は通常、従業員に対し経済補償金を支払わなければならない。

これについて、よく用いられる企業からの一方的な労働契約解除理由は主に以下の通りであるが、労働契約の解除理由を検討する際に、企業は当時の具体的な状況が下記理由の法定条件および法定の解除手順に合致するように留意しなければならない。

・客観的な状況に重大な変化が生じた。「労働契約法」第40条によれば、「客観的な状況に重大な変化が生じたために[3]、労働契約が履行できなくなり、且つ当事者双方で労働契約の変更に関する合意を得られない場合」、「雇用主は30日前までに書面にて労働者本人に通知し、または別途労働者に1ヶ月分の賃金を支払った上で、労働契約を解除することができる」と規定している。
・経済的人員削減:「労働契約法」第41条の規定によれば、企業が「生産経営に重大な困難が生じたこと、企業に生産内容の変更、重大な技術革新または経営方式の調整があり、労働契約の変更後も、依然として人員を削減しなければならないことやその他の客観的な経済状況に重大な変化が生じ、労働契約の履行ができなくなったこと」を証明できる場合において、企業は法定手順[4]に従って人員削減を行うことができる。

なお、従業員の同意が得られるのであれば、企業からの一方的な労働契約の解除と比べれば、協議による労働契約の解除は、やはり第一に選択する解除方式であり、従業員が労働契約の協議解除に同意しないのであれば、企業は上述の一方的な労働契約解除の方式を採用することができる。

まとめ

持分譲渡と経済補償金とに関連性があるか、どのように関連するかについては、法律の規定を調査するだけでなく、実務処理を重視する必要もあり、持分譲渡自体を検討するだけでなく、持分譲渡の背景において、その他の経済補償金の支払いを必要とする状況が発生するか、及びいかに対応するかを研究する必要もある。

(里兆法律事務所2014年11月17日付で作成)

[1]「労働契約法」第46条、「労働契約法実施条例」第22条などの規定によれば、労働契約の解除または終了が生じた前提において、法律で定める経済補償金の支払い条件に合致する場合に限り、従業員は企業に対し経済補償金の支払いを求めることができる。企業が経済補償金を支払う条件は、具体的に以下の通りである。
「労働契約法」第46条に基づき、下記の状況のいずれかに該当する場合、雇用主は労働者に経済補償金を支給しなければならない。
(一)労働者が本法の第38条の規定に基づき労働契約を解除した場合。
(二)雇用主が本法第36条の規定に基づき労働者に労働契約解除を申し入れ、且つ労働者と協議で合意し労働契約を解除した場合。
(三)雇用主が本法の第40条の規定に基づき労働契約を解除した場合。
(四)雇用主が本法の第41条第1項の規定に基づき労働契約を解除した場合。
(五)雇用主が現在の労働契約に定めた条件を維持しまたは引き上げて契約を更新しようとしても、労働者が労働契約を更新することに同意しない場合を除き、本法第44条第(一)号の規定に基づき期間の定めのある労働契約が終了した場合。
(六)本法第44条第(四)号、第(五)号の規定に基づき労働契約が終了した場合。
(七)法律、行政法規に定めるその他の状況。
[労働契約法実施条例]第22条に基づき、特定の業務の完成までを期間とする労働契約が、業務が完成したため終了する場合、雇用主は「労働契約法」第47条の定めに従い労働者に経済補償金を支払わなければならない。
[2]いわゆる「買い取り」とは、企業が従業員のこれまでの勤務年数を計算し、当該勤務年数に対し経済補償金を支払い、経済補償金を支払った後、従業員との労働契約を解除または終了し、法に従って経済補償金を支払わなければならない状況においては、当該勤務年数について再度経済補償金を計算しないことを指す。
[3]【労弁発[1994]289号】文「『労働法』の若干条文に関する説明」第26条では「客観的な状況」を「不可抗力の発生または労働契約の全部あるいは一部の条項を履行できなくなるその他の状況、例えば企業の移転、合併、企業資産の移転などが生じた場合」と明確に説明している。実務において、例えば企業の経営方式の変更、業務の変更、部門の閉鎖統合、組織構造の調整などの状況が生じた場合では、「客観的状況」の認定において一定の論争が存在する。一般的には、企業がその客観性について合理的な説明ができ、関連証拠を提出できる場合、司法機関は「客観的状況」と認定する傾向があり(この種の状況は多い)、そうでない場合は認定しない。
[4]「労働契約法」第41条に基づき、下記の状況のいずれかに該当し、20人以上削減する必要があるまたは削減する必要のある人数が20人に満たないが企業の従業員総人数の10%以上を占めた場合、雇用主は30日前までに労働組合または従業員全体に対し状況を説明し、労働組合または従業員の意見を聴取してから、従業員の削減案を労働行政部門に報告した後、削減を行うことができる。(一)企業破産法に従い再編を行う場合。(二)生産経営に厳重な困難が生じる場合。(三)企業に生産内容の変更、重大な技術革新または経営方法の調整があり、労働契約を変更した後も人員を削減する必要がある場合。(四)その他の労働契約を締結した際に根拠となった客観的経済状況に重大な変化が生じ、労働契約が履行できなくなる場合。
人員を削減する場合、下記の労働者を優先して残さなければならない。(一)本企業と比較的に長い期間の定めがある労働契約を締結している者。(二)本企業と期間の定めなき労働契約を締結している者。(三)家族にはその他の就業者がいなく、扶養すべき年寄りまたは未成年がいる者。
雇用主が本条第一項の規定により人員を削減し、6ヶ月以内に人員を改めて募集・採用する場合、削減された人員に知らせ、且つ同様な条件で優先して募集・採用しなければならない。

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