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CIETAC、SHIAC、SCIA3つの仲裁機関内紛の経緯について

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2015年11月17日

内紛の各当事者:

CIETAC:中国国際経済貿易仲裁委員会
(略称)  1956年4月設立、別名「中国国際商会仲裁院」

SHIAC: 旧中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会
(略称)  2013年4月11日から、「上海国際経済貿易仲裁委員会」に改名(改名と同時に「上海国際仲裁センター」の名称も使用)

SCIA: 旧中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会または深セン分会
(略称)  2012年11月24日から、「華南国際経済貿易仲裁委員会」に改名(改名と同時に「深セン国際仲裁院」の名称も使用)

※注:SHIAC、SCIAの英文略称は、この2つの機関が改名した後の英文略称である。以下、この2つの機関の改名前後に発生した各事件では、呼称の便宜上、この2つの英文略称で記載する。

ことの発端及び数回に亘る論戦:

■発端及び1回目の対立

2012年5月1日、CIETACとSHIACは各自の機関の性質および主体資格(人事、財務等の面での自主支配権)、仲裁規則、定款、仲裁人の任命規則
等に対する双方の見方及び認識の違いにより、1回目の対立が起こり、互いに真っ向から対決した声明を出したことで、仲裁機関の内紛がが発生した。また、これにSCIAが加わったことで、紛争は激しさを増した。

■2度目の対立

2012年8月1日に、CIETACがその公式サイト上で「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会、中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会が仲裁を行うと約定した案件についての中国国際経済貿易仲裁委員会による管理公告」を公表し、2012年8月1日から、SHIAC、SCIAによる仲裁申立の受理と仲裁案件管理の授権を中止し、当事者が紛争をSHIACまたはSCIAでの仲裁で解決すると約定している場合、2012年8月1日から、当事者はCIETACに仲裁を申立なければならないとした。

CIETACによるこの行動に対して、SHIACとSCIAは、2012年8月4日に各自の公式サイト上で「CIETAC『管理公告』に対する共同声明」を出し、SHIACとSCIAは適法且つ独立した仲裁機関であり、引き続き各自の仲裁規則を適用することを声明し、且つSHIACまたはSCIAでの仲裁を明確に約定している案件をCIETACに仲裁を申し立てるよう当事者に強要することは、「仲裁法」の規定および当事者の意思自治の原則に背くものであるとCIETACを非難した。

■3回目の対立

2013年1月21日、SHIACとSCIAは共同で「連名公告」を出し、両機関は合法で、独立した仲裁機関であること、当事者がSHIACまたはSCIAを仲裁機関とする旨を約定している案件は、SHIACまたはSCIAが法に照らし受理すべきであることを宣言した。

3回目の対立で、SCIA、SHIACは相次いで改名した。

2014年12月31日、CIETACは「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会、中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会再編に関する公告」を公布し、上海分会、華南分会を再編し仲裁活動を展開した。

裁判所の態度、見解:

仲裁判断が最終的に履行されるには、裁判所の承認と執行が必要である。また、仲裁機関の仲裁案件に対する管轄権に関して、裁判所は司法審査権を有する。従い、裁判所の仲裁案件の管轄権に対する態度、見解は非常に重要である。しかし、前述の争いにおいて、裁判所の態度、見解は、二転三転した。

■最初は裁判所間でも意見が大いに分かれた

仲裁機関の内紛が発生した後、一部の当事者に仲裁規則の適用および仲裁機関の仲裁案件受理に関する権限などの問題について大きな論争を生じさせる結果となった。各地の人民裁判所(例えば、江蘇蘇州、浙江寧波)は前述の内紛により生じた仲裁司法審査案件を次々と受理することとなり、それぞれ異なる裁定を下している。

■最高人民裁判所が介入したものの、統一された審判基準は確立されなかった

審判基準を統一するため、最高人民裁判所は2013年5月に、裁判所組織内部において「仲裁司法審査案件の正確な審理の問題に関する通知」の草案を公布し、意見を求めたが、大きな論争を引き起こし、可決されなかった(正式に発効していない)。

2013年9月初め、「仲裁司法審査案件の正確な審理の問題に関する通知」は正式に可決・公布され、本通知では、「人民裁判所は、裁定を下す前に、審判委員会が討論し意見を提出した後、順を追って最高人民裁判所まで報告し、最高人民裁判所の回答を受けた上で、初めて裁定を下すことができる」と規定されている。

本「通知」は実質的には統一された審判基準を確立しておらず、単に手続きにおいてより慎重になっただけであり、最終的には最高人民裁判所の審査と回答を必要としている。

■司法実践において、扱いが徐々に統一された

北京、上海、深セン3地域の人民裁判所は、2014年12月31日以降、20部余りの裁定書をなしており、これら裁定書の内容を見る限りでは、3地域の中級人民裁判所は、SHIACおよびSCIAへの改名前に当事者が「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」、「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」による仲裁を約定していた案件の管轄問題について、やや統一し且つ明確な司法審査意見(即ち、CIETACはこの種の案件に対し管轄権はなく、この種の案件はそれぞれSHIAC、SCIAが受理する必要がある。この種の案件に対する仲裁効力の司法審査は機関所在地(それぞれ上海、深センである)の中級人民裁判所が管轄する必要がある旨の意見)を出している。

■最高人民裁判所がついに審判基準を明確にした

審判基準を更に明確にするために、2015年7月15日、最高人民裁判所は、「中国国際経済貿易仲裁委員会およびその旧分会などの仲裁機関のなした仲裁裁決の司法審査案件についての上海市高級人民裁判所などに対する指示要請に関する最高人民裁判所の回答書」(以下、「回答書」という)を公布し、当事者がSHIACまたはSCIAにて解決することを約定している仲裁合意については、仲裁合意がなされた時期に基づき、仲裁機関の受理権限を判断するとしており、下表に簡潔に説明する。

仲裁合意がなされた時期 仲裁機関の受理権限 備考
SHIAC、SCIAへの改名前に、仲裁合意が行われ、紛争を「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」または「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」に付託することを約定している SHIACまたはSCIAが管轄権を有する SHIACまたはSCIAに仲裁の権利がないことを理由に仲裁合意無効の確認を人民裁判所に要請し、仲裁判断の取消または仲裁判断を履行しない旨の申し立てを行った場合、人民裁判所はこれを支持しない。
SHIAC、SCIAへの改名後(改名日を含む)、「回答書」施行前に、仲裁合意が行われ、紛争を「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」または「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」に付託することを約定している CIETACが
管轄権を有する
–   申立人がSHIACまたはSCIAに仲裁を申し立て、被申立人がSHIACまたはSCIAの管轄権について異議申し立てをしていない場合で、当事者が仲裁判断後にSHIACまたはSCIAに仲裁権利がないことを理由に仲裁判断の取消しまたは仲裁判断を履行しないよう申し立てを行ったとき、人民裁判所はこれを支持しない。

–   「回答書」施行前、CIETACまたはSCIA、SHIACが受理済みの「回答書」第一条規定により、同仲裁機関が受理すべきではないとしている案件について、当事者が仲裁判断後に仲裁機関に仲裁の権利がないことを理由に仲裁判断の取消または履行しないよう申し立てをした場合、人民裁判所はこれを支持しない。

–   「回答書」施行前、CIETACまたはSCIA、SHIACは同一の仲裁案件を受理しており、当事者が仲裁庭の初回開廷前に人民裁判所に仲裁合意の効力確認を申し立てた場合、人民裁判所は「回答書」第一条の規定に基づき、審理の上で裁定を下さなければならない。

–   「回答書」施行前に、CIETACまたはSCIA、SHIACが同一の仲裁案件を受理しており、当事者が仲裁庭の初回開廷前に人民裁判所に仲裁合意の効力確認を申し立てていない場合、先に受理した仲裁機関が案件に対して管轄権を有する。

「回答書」施行後(施行日を含む)、仲裁合意が行われ、「中国国際経済貿易仲裁委員会上海分会」または「中国国際経済貿易仲裁委員会華南分会」に付託することを約定している CIETACが管轄権を有する

このほか、仲裁案件の申立人が仲裁機関への仲裁申し立てと同時に案件の管轄権について決定するよう仲裁機関に要請し、仲裁機関が仲裁合意の有効性を確認し、案件に対して管轄権を有する旨の決定をなした後、被申立人が仲裁庭の初回開廷前に仲裁合意の効力確認申し立ての訴えを人民裁判所に提起した場合、人民裁判所はこれを受理し、裁定しなければならない。

これもって、ようやく決着が付いた。

■再び聞こえてきた不協和音

ところが、最高人民裁判所が「回答書」を公布後、仲裁機関の内紛決着が付いたとだれもが思ってから僅か半月で、再び不協和音が聞こえてきた。2015年8月3日、広東省司法庁は「違法仲裁行為の差止めに関する告知書」をなし、「CIETAC華南分会」および「CIETAC深セン分会」の名で広東省内における違法な仲裁行為を行うことを直ちに停止するようCIETACに求めた。本「告知書」では、CIETACが広東で華南分会の「再編」を宣言し、法に依拠し登記した既存する他の仲裁機関と同じ名称で広東で仲裁業務を展開しているが、広東省司法行政部門での登記をしておらず、「仲裁法」と「行政許可法」の関係規定に違反していると指摘した。

2015年8月12日、CIETACはこれに対し強い口調で返答書簡を出し、「『仲裁法』では、地方政府が新設した仲裁機関が司法登記が必要であると規定されている。華南分会はCIETACの分会であり、独立した仲裁機関ではなく、また、司法登記を行わずに旧華南分会などはこれまで16年間正常に仲裁活動を展開しており、従って、司法登記は必要でない」と反駁した。

広東省司法庁によるCIETAC華南分会に対する「差止め命令」事件は3つの仲裁機関の内紛後の「余震」とも言うべきだが、今回の対立は単なる些細なエピソードに過ぎず、戦火が再び拡大しないことを願っている。なぜならば、3つの仲裁機関における対立勃発の目的が管理機関の構造見直しであるのか、それとも経済利益のためであるかどうかに関係なく、この数年間に亘る紛争により最終的にダメージを受け、最も困惑させられたのは、当事者、特に仲裁サービスの利用者である多くの企業であり、またCIETAC及びその旧分会がここ数十年来築いてきた国内・外の仲裁に対する公信力を喪失することにもなった。最高人民裁判所が前述の「回答書」を公布したことで、仲裁機関の内紛が早く幕を閉じ、CIETAC、SHIAC、SCIAが自己の利益にこだわるのではなく、仲裁レベルおよび公信力の向上に一層の力を注ぐべきであり、さもなければ、いずれの当事者にとってもプラスとならないばかりか、皆が不利益を被ることになってしまうはずである。

(里兆法律事務所が2015年9月11日付で作成)

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