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最新法律情報(1月・2月合併号)

中国ビジネスレポート 法務
王 穏

王 穏

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2007年2月25日

記事概要

法律情報
1.「企業国有資産譲渡に関する事項の通知」頒布
2.「2007年全国税収業務要点」頒布
3.「年収12万元以上の自己申告の詳細の明確化に関する通知」頒布

4.「不正競争民事事件の審理における法律適用に係わる幾つかの問題に関する解釈」頒布
・実務情報
1.上海市工商局: 外商投資企業名称認可の審査基準を厳格化。
2.生産型企業の国内販売権拡大時の注意点
3.外資商業企業の許認可実務
4.北京市工商局: 外資企業の事務所に対する整理整頓を開始。
その他、天津情報も掲載。

新しいページ 1n         法律情報

 

1.「企業国有資産譲渡に関する事項の通知」頒布

△      国有資産にかかわる取引(外資による国有資産の買収など)がある場合、要注意。

国有資産の取引にかかわる重要な部門通知であり、今後国有資産の取引に対する監督管理がさらに厳格化される見込み。

2.「2007年全国税収業務要点」頒布

△      内外(資企業)の税率統一を受け、外資税収優遇措置の整理整頓、リース業などノンバンク金融業界の所得税率の統一などが、2007年度の税務署の重点とされる。

3.「年収12万元以上の自己申告の詳細の明確化に関する通知」頒布

△      年収12万元以上が自己申告となり、その納税基準などの詳細を明確化。外国人個人所得税徴収の更なる強化

4.「不正競争民事事件の審理における法律適用に係わる幾つかの問題に関する解釈」頒布

△      知名商品、企業名称、商業秘密の保護及び認定は更に明確化。

 

n         実務情報

1.上海市工商局: 外商投資企業名称認可の審査基準を厳格化。

△     知名企業特にフォーチュン500の企業が、新設企業にその商号を使用される場合の審査などは、厳格化。

2.生産型企業の国内販売権拡大時の注意点

△     資金源、商品目録、黒字経営などの条件が求められる。

△     国内販売の収入の比率に注意が必要。

3.外資商業企業の許認可実務

△     卸売の商業企業の新設に対する審査は、緩和。

△     一方、小売の商業企業の新設に対する審査は、依然厳格。

4.北京市工商局: 外資企業の事務所に対する整理整頓を開始。

△     期限満了の事務所は、抹消登記か、分公司への切り替えが求められている。

△     事務所による経営活動は、厳禁される。

 

n         天津情報

1. 天津市:金融業発展を促進するための優遇政策発表

2. 天津市: 外商誘致、科学技術進歩へのサポートのための財税政策

 

n         新規情報

1.「中国における外国組織又は個人による測量・製図に関する管理暫定弁法」

(国土資源部 2007/1/19頒布、2007/3/1実施)

2.「税関加工貿易の単位消耗の管理弁法」

(税関総署 2007/1/4頒布、2007/3/1実施)

3.「都市・鎮の土地使用税暫定条例」

(国務院2006/12/31改正)

4.「企業財務通則」

(財政部2006/12/4修訂,2007年1/1実施)


 


 

n         法律情報

 

1.「企業国有資産譲渡に関する事項の通知」頒布

△      極まれな直接譲渡の場合以外、国有資産に関する取引は、財産権取引市場で行わなければならない。

u       大手国有企業グループ内部の財産権譲渡の場合、直接取引が許可される可能性もあるが、譲渡価格や譲渡期限などの面で厳格に監督される。

△      外資企業による国有資産買収の許認可のポイント

u       業界管轄行政による許認可(主に外資が制限を受けているかどうか[1]、独占禁止に触れるかどうかなど)

u       財産権取引市場による価格、契約審査[2]

u       最終的な審査権限は商務部門にある。

△      取引価格の基準は、厳格に限定される。

u       資産評価価値[3]の90%を下回ってはならない。

u       従業員安置費などのコストは、取引価格に算入される。

 

【コメント】

u       通知も今まで国有資産関連の法律法規のとおり、国有資産の不当な流出にならないかが、重点とされている。

国有資産の取引の場合、必ず財産権取引市場を経由しなければならないことが、さらに明確化された。仮に、直接取引きできる大手国有企業グループ内部の取引であっても、財産権取引市場での手続きを踏まえなければならない。このような措置をもって、国有資産取引の透明化、公開化をはかり、国有資産にかかわる不正を予防する狙いが伺える。

一方、民間の財産権取引は、国有資産の不正問題が存在しないため、不特定多数に対して競売をかける場合には、取引市場を経由してもよいが、当事者間での交渉を通じて取引を行ってもよい。

u       従業員の安置費用などのコストも取引価格に算入するとしたのは、この通知が始めてである。例えば、仮に取引価格を100にすれば、それに上乗せする形で、従業員の安置費用などのコストの10がさらに加算される形になり、国有資産の取引のコストが上げられる結果になる。

ほとんどの国有企業が、必要以上に冗員を抱えているため、国有資産の取引の場合、往々にして従業員側からの反発に会い、さらに社会問題に発展してしまうケースもしばしばある(適切でない処理を行った地方政府の高官が免職処分まで受ける事例も目立つようになった)。

 

2.「2007年全国税収業務要点」頒布

      2007年度における税務署の(行政)立法、行政、政策の概要は、以下の通りとなる。

△     「企業所得税」の制定作業とほぼ同時進行のかたちで、「企業所得税実施条例草案」の制定作業がすでに始まり、「企業所得税」頒布後の1ヶ月前後で、頒布される予定である。

△     「印紙税条例」と「発票(領収書)管理弁法」は、印紙税の徴収範囲の拡大と増値税管理の強化を重点に改正作業中。

△     各地の減免税規定(税収優遇措置)を整理整頓する。ただ、一部地域の財政手当(例えば外高橋保税区)に対して、すぐに取り消しすることはない。

△     リース等ノンバンク金融業界の所得税の徴収は、さらに明確化。

△     内外税率統一に向けて、税収優遇措置を受けられない外資の業種目録がさらに拡大されると見られる。業種目録にリストアップされる外資企業は、税金負担が若干重くなる。

 

【コメント】

u      税務当局が、毎年の(行政)立法、行政、政策のガイドラインとして、「全国税収業務重点」を頒布しているが、税収政策の予測の面においては、最重要の参考資料である。

u      増値税領収書は、実質上人民元に近い貨幣価値を有するため、これに絡む犯罪(刑事罰)も多発している。税務署としては、今後さらに事後における摘発、そして事前における予防という二つの角度から強化する方針が伺える。

u      各地の税収優遇措置の整理整頓は、今までも何回も行われてきたが、企業所得税の内外税率統一、そして、中央集権化の背景の下では、以前の整理整頓よりも、力を入れるのではないかと思われる。

u      ノンバンク金融業界の所得税については、各地における格差が散見されるため、2007年度に税務署としての対応が統一化されることになろう。

 

3.「年収12万元以上の自己申告詳細の明確化に関する通知」頒布

△     収入を得ている段階で、すでに納付した一部の税金に対して、控除されないことを明確化。

△     税務署は、さらに外国人の中国で得られた収入に対して、個人所得税の徴収を強化。特に、駐在員事務所の首席代表、(親会社、子会社間での)兼職の高級管理職を重点とすると見られる。

 

【コメント】

u      2007年度は、中国での高所得者(年収12万元以上)の自己申告最初の年になるが、いろいろと問題が出てくると予想され、これらの問題を解決しつつ、一大財源となっている個人所得税の徴収がさらに強化される。

 

 4.「不正競争民事事件の審理における法律適用に係わる幾つかの問題に関する解釈」頒布

△     知名商品の認定基準は、さらに厳格化。知名商品を申請する場合、申請者側は、商品が知名度を有することを証明するために、売り上げ、広告料などの資料を提出しなければならない。

△     サービス業界の特有な外観(例えば、誰から見てもすぐスターバックスだと構成するイメージや外観など)なども保護の対象とされる可能性がある。

△     企業名称及び知名商号に対する保護をさらに明確化。

△     企業商業秘密の認定基準に対して、その範囲についての解釈をさらに拡大する。一方、商業秘密の侵害に対する認定は厳格化する。

 

【コメント】

u      サービス業界の特有な外観も保護の対象とされる点が、重要な意義を有する。

u      また、企業名称と知名商号に対する保護の明確化も、悪意や第三者による既存の企業名称、知名商標の使用に対する救済措置の強化を意味する。

u      多発傾向にある企業秘密侵害の案件で、企業秘密認定そのものの基準を緩和する(より簡単に企業秘密として認定できる)一方、秘密侵害行為の認定についての厳格化は、秘密を侵害される側として、要注意。

 

 

n         実務情報

 

1.上海市工商局: 外商投資企業名称認可の審査基準を厳格化。

 

△     既存会社の社名保護の角度から、上海市工商局は新設の外資企業名称の認可基準を厳格化。

u      (名称登記できなくなる)類似名称の基準を拡大。例えば、3、4文字による組み合わせで名称登記を申請するときでも、そのうち2文字が類似する場合、名称登記を却下するケースがある。

u      名称登記を申請する場合、登録業種において、社名が同様又は類似する企業が存在するかどうかを審査するだけではなく、関連業種でも同様の審査を行うため、実質上名称登記の許認可基準を厳しくする結果になる。

u      業界が相似していることに対する認定範囲はさらに拡大した。

  

△     フォーチュン500の企業の名称で名称登記申請(フォーチュン500の関連会社、子会社の場合は多いが)を行う場合、今まで本社発行の名称使用についての許諾書があれば、登録可能だったが、工商局の担当者によって、他の中国現地法人からも、名称使用許諾書を求められるケースがある。

 

【コメント】

u      企業新設の場合、名称登録のところで想定外時間をとられ、スケジュールが遅れたりするケースが増えているようである。ましてや、上海を例に挙げると、新設企業が多いため、ややもすれば、登録しようとする名称は、すでに既存の他社に使われている、又は既存他社の名称と類似することになってしまうので、設立申請の際、社内稟議や資料の準備のほか、前倒しにまず名称の検索、確認をすることが望ましい。

 

2. 生産型企業の国内販売権拡大時の注意点

 

△     必要資金の資金源についての説明

国内販売を行うことにあたって、その運営資金についての説明のことである。自前の資金であれば、特に問題とならないが、それ以外の場合、許認可機関から、国内販売する予定の商品を十分まかなえる(許認可機関が妥当と判断する)資金分の増資を求める場合がある。

 

△     取り扱い商品には、現行経営範囲内の製品と同様か同類であることが求められる。

許認可機関は、経営範囲拡大申請企業の営業許可証記載の経営範囲を照らしながら、取り扱い商品が、現行の経営範囲(製造、加工、販売できる製品)との関連性があるかどうかに基づいて、判断することになる。

          

【コメント】

取り扱う商品については、法的に定義されていないため、HSコードの4桁、6桁の商品名で申請することは多いが、やはり担当者によって、表現に対して違う理解を示し、その修正を求められるケースもしばしばある。

ただ、HSコードの商品名より、経営範囲上の商品種類ははるかに範囲が広い上、国内販売が基本的にすべての企業に解禁される方針であるなどの事情により、実務上経営範囲上の商品種類であると説明できる商品又はその関連性を有する商品であれば、取り扱いが可能だという見方もある。

 

△     前年度は黒字が必要。

赤字の場合、許認可機関は、経営範囲拡大できる体力を有しないか、その資金力がないなどの理由で、認可しないケースがある。          

 

【コメント】

行政の過干渉という見方もできるが、実務上の処理としては、会計士事務所による資金力証明か資金についての説明(十分な資金力を有する旨)などを追加提出することで認可される。

             

△     国内販売の売り上げ比率について

国内販売の経営範囲拡大を、外資委員会に対して申請する段階においては、国内販売の売り上げが全体的な売り上げに占める比率は、商務部規定では30%を超えてはならないこともあって、30%までとされる。

ただ、実務上、実際の管轄税務署では、50%を超えなければ、引き続き生産型企業として税収優遇措置を享受できる政策を採っている地域もある。

 

3. 外資商業性企業の許認可実務。

 

△     卸売り型商業企業 △ 許認可がさらに簡素化

u      卸売りの商業性企業は、若干説明や追加資料が求められたりすることはあるが、感触としては、簡単に認可されている。

△     小売型商業企業 △ 許認可取得が、卸売り型企業より困難。

u      店舗を構える必要があるため、店舗の開設に伴う地域制限(特定の地域における店舗数に対する規制や面積、消防、用途などの制限)などにぶつかる場合、それをクリアーしなければならない・

 

4. 北京市工商局: 外国企業の事務所に対する整理整頓を開始。

 

△     現地法人である外資企業は、経営性の分公司か、非経営性の分公司しか設立できなくなることに伴い、北京市では、期限満了の外資企業の事務所に対して、その抹消又は分公司への切り替えを求めている。

△     外資企業の事務所は、商品の調達、倉庫、物流、据付、メンテナンス、配送などの経営活動を行っているかどうかも視野に入れて、検査をしている模様。

△     上海でも、今後の対策を検討するために、上海市に登録している外資企業の事務所の登記資料のデータに基づき、外資企業の事務所の数、設立背景その他の情報を整理している模様。

 

【コメント】

u      北京では、外資企業が、本社のために倉庫、アフターサービスを提供するなどの経営活動を行ったという理由で、摘発を受けたケースもある。

u      北京に限らず、他の地域でも今後調査や摘発を強化する方針であるため、事務所の抹消か分公司への切り替えを早急に処理する必要がある。

 

 

n         法律情報

 

1.天津市:金融業発展を促進するための優遇政策発表

 

天津市に本部を置く外資金融企業に対し、公共施設の提供その他関連サービス、従業員の居住証(地方出身中国人又は外国人のためのグリーンカード)、税金、自社用不動産の購入などの面において、優遇政策を打ち出した。その主な内容は、以下の通りである。

①    従業員のための住宅積立金(従業員の賃金総額の15%を超えない範囲)を、企業側は、課税対象所得から控除できる。また、従業員個人も、その分について個人所得税が免除される。

②    金融企業が天津市の金融エリアに自社用不動産を購入する場合、天津市より1000元/平米の補助金が受けられる。

③    新設の金融企業は、開業年度から3年以内は営業税の半分が還付される。また、営利年度から3年以内は企業所得税(地方税の部分)の全額をが還付される。自社用不動産の購入・建設に対して、印紙税(不動産取得時に課税)と3年間の固定資産税を免除。

 

【コメント】

他の地域と比較すると中央の強力な支持を背景に、②の不動産購入時の補助金、③の営業税返還、固定資産税の免除が突出している。

 

 

2.天津市: 外商誘致、科学技術進歩へのサポートのための財税政策

 

①    国家レベルの新製品及び特許製品から得た利益に対して、販売日から3年内以内は企業所得税が免除される。

②    外資のハイテク企業・R&Dが、技術供与する場合、発生した技術コンサルタント、技術サービス、技術トレーニングで得られた所得に対して、(一時的措置)営業税、企業所得税を免除。

③    投資会社のハイテク企業実用化プロジェクトに対する投資額が、被投資企業の資本金の25%以上に達する場合、(被投資企業からの)配当金に対して企業所得税を免除。また、(配当金を分配する)被投資企業に対しても、配当金の50%を企業所得額から控除できる。

④    合弁企業は、企業再編の際に、一方の当事者が、土地及び不動産を譲渡する場合、その譲渡所得に対して営業税が免除され、譲受側は印紙税が免除される。

⑤    外資の銀行、保険会社、法律事務所、会計士事務所及び一部のコンサルティング会社を設立する場合、新規購入の自社用不動産に関する印紙税と一年分の固定資産税が免除される。銀行及び保険会社の地方所得税は、営利年度から免除され、法律事務所などの企業所得税は、開業日から2年以内免除される。(2007年2月記・6,393字)

 

 

*******************************************

 

以上の内容は、当事務所の正式法律意見ではなく、参考に供するもののみである点、ご了承下さい。


 


[1] 「外商投資産業ガイドライン」に基づくが、当該ガイドラインは、2,3年のペースで改正されている。
[2]財産権取引市場では、一般的に取引契約の指定フォーマットでの契約締結が要求されるが、実務上、備忘録や細く協議書などの形で、特約することはできる。
[3] 実務上、資産評価方法によって、評価価値がかなり違いうる。

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