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ログイン2022年12月27日
【部門・領域別】不正はここで起きる【スクラップ】
部門別に不正の発生しがちなポイントと対策を見てきました。今回は番外編①として、スクラップの不正についてお届けします。
■ スクラップに関わる不正
スクラップの不正は中国だけでなく、タイやフィリピンなど、どの国でも発生しがちな最注意領域。製造業ではスクラップが継続的に発生し、売却時もまとまった金額になるため、狙われやすいです。
気をつけなければならないのは、業界的に安全面のリスクがあること。治安が悪く銃刀器の入手が容易な国では、スクラップ不正を正攻法で潰そうとした現地社長が、信号待ちの車中でバイクから散弾銃をぶっ放された、といった事例も見聞きします。
中国は警察がしっかりしており、犯罪に対する処罰も厳しいため、人身に危害が及ぶリスクは低めですが、荒っぽい抵抗や復讐を受けやすい領域であるということは、意識しておいた方がよさそうです(下に書くように、利害関係者が多数いるというのも一因)。
スクラップに関わる不正は、ほぼ確実に複数の部署と外部が結託して起きます。スクラップ業者、敷地への出入りをチェックする警備員、スクラップを出す製造現場、処理を管轄する総務など……。課長が首謀者だとすると、当然、係長以下も傘下に入っています。日本人を含む上位者を抱き込むケースもあります。
手口は、意図的にスクラップを出す、スクラップの目方をごまかす、二重価格を設定するなど。業者が買い取る場合と、こちらが料金を払って回収してもらう場合では、金の流れは反対ですが、いずれも不当に業者に儲けさせて、それを自分たちにバックするというのが基本です。自分たちが回収会社を設立する場合もあります。
廃棄に関わる不正もこれに近いです。廃棄しなければならないものを横流ししたり、わざとB級品として弾いて横流し品を作ったりします。ただ、これは委託を受けた工場ぐるみでやっていることもあるので、担当者の不正とは限りません。
■ 対策は身の安全を第一に
スクラップや廃棄品に関わる問題を疑った際や発見した際、一番気をつけなければならないのは、人身の安全です。
上述の通り、ややこしい人たちが関わっていることが多く、関与者も多いため、恨みを買うのは大変危険です。必ず外部の専門家(弁護士や弊社など)を使いましょう。
社内だけでメスを入れようとすると、旗を振った日本人経営者や中国人の案件責任者が狙われます。「コイツを潰せば何とかなる」または「コイツだけは許さない、見せしめにしてやる」などと思われるからです。
外部の人たちも含めてチームで動き出してしまうと、個人を潰しても問題追及は止められないと考えますし、社内の旗振り役が前に出なければ個人的に恨みを買うリスクも減らせます。
発見しても、短絡的に社内調査を命じたり、事情聴取して問い詰めようとしたり、業者に連絡して裏を取ろうとしたりするのは避けましょう。
チームで動いて裏を取れたら、刑事告発も検討します。警察に通報すれば、不正グループも粗暴なことはできなくなります。安全管理のためにも、このあたりはチームの弁護士とよく詰めます(こういう案件が得意な弁護士を入れておく必要があります)。
予防策は、最初から不正リスクを踏まえて取引を始めることです。
・業者候補の調査を行う(これも利害関係の生じない社外に頼むべき)。
・定期的に業者を変える。
・業者選定部門と取引部門と支払い部門を分ける。
・目方や数量を量る際は複数部署が立ち合う。
・現金での授受は行わない。
・定期的に契約条件・測定記録・支払い申請書・支払い/入金金額などの一貫性をチェックする。
・社外ルートで市場の相場感を把握する。
こういった対策により不正のハードルを上げておけば、絶対に防止できるわけではありませんが、大規模・多額・長期の不正は抑止できます。
(続く)
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