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年休管理上の問題点並びに対策――「従業員有給休暇条例」実施を受けて

中国ビジネスレポート 労務・人材
王 穏

王 穏

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2008年1月11日

記事概要

2008年1月1日から施行される「従業員有給休暇条例では、すべての企業及びその他の雇用者は年休を与えなければならないことを義務付けたところは良いのですが、他の企業よりもいち早く、しかも有利な日数の年休を与えて日系企業をはじめ外資系企業にとって、法定基準以上に与えている年休制度が逆に裏目に出るおそれがあり大きな遵法負担となるリスクになりかねません。

日系企業は、派遣会社から従業員を受け入れている場合、派遣会社の制度より従業員にとって有利な年休制度を実施しているところもあるものの、出勤率などによって、これまでは法的義務ではなくとも、年休を与えております。

 

2008年1月1日から施行される「従業員有給休暇条例」(以下「年休条例」)では、すべての企業及びその他の雇用者は年休を与えなければならないことを義務付けたところは良いのですが、他の企業よりもいち早く、しかも有利な日数の年休を与えて日系企業をはじめ外資系企業にとって、法定基準以上に与えている年休制度が逆に裏目に出るおそれがあり大きな遵法負担となるリスクになりかねません。

 

年休条例は新しく頒布される法律規定であるため(もともとは2007年末前に「労働契約法」の実施条例を頒布する予定であったが、異論が多く頒布できない状態であったので、一応年休の条例を頒布したという推測もあります)、その表現自体もあいまいなところもあり、真意が理解できない部分がありましたが、当所の調査結果、ある程度明確にできましたので主な注意点については、下記の通りお知らせいたします。

 

 

1、年休の取得条件について

【今までの就業規則上の規定のサンプル】  出勤率90%以上、会社の懲戒を受けたことがない従業員は、年次有給休暇を享受する。

【年休条例の規定】   出勤率、処罰記録、欠勤記録等に関わらず、与えなければならない。

【対応策】    極力当該年度で消化させるようにする。

消化させない場合には、以下の4通りに示すとおり、会社のリスク(300%か(これを怠った場合)600%の支払い義務)が高い。

 

2、年休の繰越について

【今までの就業規則上の規定のサンプル】  年次有給休暇は、有効期間を二年間とする。

【年休条例の規定】 通常繰り越しはしない。ただ、生産、業務上の特徴により繰越で年休を按配する必要性がある場合にのみ、繰越は可能である。

【対応策】    できれば繰越をしない。

実務上会社に対する対抗心の強い従業員は、繰越計算より300%か600%の日給目当てに労働仲裁提起するリスクが高い。

ただ、どうしても繰越の必要性がある場合、その合理性の記録を残すこと。

 

3、年休の日数計算について

【今までの就業規則上の規定のサンプル】  勤続年数に応じて、5日~10日からスタートし、勤続1年増に対して1日追加、最長12日~20日とするところが多い。

【年休条例の規定】 累計(他社における職歴も含む)勤続年数は、1年~10年の場合、5日、10年~20年の場合、10日、20年以上の場合、15日となる。

【対応策】     今までの就業規則上の計算と年休条例の規定との間で齟齬が生じる可能性があるため、一律に国務院の年休条例に基き実施するに修正ことがベターである。

 

4、年休を与えないことのリスク・コストについて

【今までの就業規則上の規定のサンプル】  年休の未消化分については、会社はそれに相当する日給を支給する。

【年休条例の規定】   消化させない場合には、会社は、日給の300%か(これを怠った場合)600%を支払わなければならない。

年休の買い取りも、実質上100%での買い取りではなく、300%での買取となる。

【対応策】    極力当該年度で消化させることに尽きる。

 

一方、会社の運営管理上の便宜のために、いわば会社の運営管理上で若干の瑕疵(法解釈、政策の変動、年休管理上の不備などの瑕疵も含む)が生じた場合でも、特に会社と対抗したくない従業員とは穏便に解決できる根拠にする意味で、就業規則上の規定を若干年休条例と異なる表現にすることもひとつのリスクヘッジになると考えます。(以上)

(2008年1月記 1,486字)

 

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