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ログイン2010年9月28日
今もなお、中国ビジネスの現場で発生し、日系企業の頭を悩まし続けているのが労働ストライキである。このシリーズでは、日系企業がどのように労働ストに対応していけばよいのか、分析・解説していく。
No.1:蔓延し始めるストライキに対して日系企業はどう対処すべきか?
<背景その他>
ここ数ヶ月間に連続して起こっているストライキは、言うならば、中国社会の構造的な歪みがもたらしている問題の解決を企業に求めた結果起きたものともいえるのである。これは本来企業が根本的に解決できるものではない。しかし、労働者はそれを企業に求める。
<対応策>
1.昇給には応じないことを明言する。弊所のこれまでの経験からすれば、初期段階で昇給拒否をはっきりと明言したところが意外とストライキが短期終結している。これに対し、昇給するかどうか悩んでいたり、昇給に柔軟な姿勢を示したり、日本本社の指示を仰いで回答待ちしているような会社は、労働者に下手な期待を与えることになり、ストライキが長期化しやすい。昇給を決定するのであれば、ストライキの場ではなく、別の機会に行うべきである。ストライキによる昇給が習慣化すると今後ストライキが頻発することになる。ただ、これは、不合理な給与体系を是正しなくてよいと言っているわけではない。普段の話し合いによる給与体系の是正には応じるべきである。ここで言いたいのは、ストライキという不法な手段による昇給要求は退けろという意味である。
2.昇給が困難であることの正当な理由(経営環境の悪化、利益率の低下、価格競争力の激化等)を従業員に対して財務上の数字を用いて効果的且つ説得力をもって説明すること。中国は理屈の世界である。したがって、昇給拒否にも適切な理屈が欠かせない。
3.ストライキが発生したら直ちに地元の労働局、公安などの行政機関に連絡をすること。行政機関の担当者は問題が深刻化するのを恐れるので、程度の問題はあるにせよストライキ終結に向けて協力はしてくれる。また、行政機関を後述5.で扇動者を解雇する際の証人とすることもできるので、後日労働仲裁となった際、彼らの証言を活用することもできる。但し、場合によって、行政機関は問題解決に焦り、企業に対して賃上げ圧力をかける可能性があるので、行政機関とコミュニケーションをとる際は、上述2、の昇給が困難であることを行政機関にしっかり理解させた上で行政機関の協力を求めた方がよい。そうしないと、行政機関も労働者と一緒になって昇給圧力を企業にかけてくる可能性がある。
4.日系企業同士、昇給率、昇給方法・時期及びストライキ対応方法についてできるだけ連携を取り合い同調すること。ストライキが発生した場合に慌てないようストライキ対処方法については事前に社内でマニュアル化しておく必要もあるだろう。労働者は昇給率の一番高いところをターゲットに要求を突きつけてくる。一部の日系企業が安易にストライキにより昇給に応じたり、その昇給率が非常に高かったりすると、他の日系企業にストライキが飛び火することになる。
5.アメとムチを効果的に使い分けること。ストライキを行う権利は中国の法律では保証されていない。すなわち労働法ならびに各社の就業規則上もストライキは出勤拒否、営業妨害などにより解雇事由になる。したがって、ストライキを行えば解雇されることを警告しストライキが暴走又は発展しないようにする。他方、信頼できるローカルスタッフ又は行政機関を使い水面下で解決策を模索する。警告には期限をしっかりつけなければならない。
すなわち、いついつまでに業務に復帰しなければ解雇に処すと明言することである。期限が迫ってくると労働者に動揺が走り団結が崩れる。また、再発防止及び見せしめのため、ストライキ扇動者を解雇する。扇動者は一般に交渉窓口で出てくる人間である。某企業では、当初扇動者をどうしても特定できず、扇動者特定のため扇動者通報者に特別報奨金を与えて、扇動者を特定したというケースもある。扇動者にはできるだけ厳罰で臨む方がよい。なぜなら穏便に処理することは、第二の扇動者を出すきっかけになりかねないからである。中国では悪しき先例をつくらないようにするために、毅然たる態度が不可欠である。
6.メディアの取材が来た場合、上手に答えられるのであれば答えてもよいが、答える自信がない場合には取材に応じない方がよい。もし、取材に応じる場合は、上述2、の理由をしっかり示すこと。この部分が上手にできないと揚げ足を取られ日系企業が労働者を搾取しているイメージをもたれ、大きな社会的反響を呼び、ストライキが拡大又は長期化する。
7.労働者の説得は日本人ではなく中国人スタッフにさせた方がよい。但し、当該中国人スタッフは信頼できる者でなければならない。上述5、の解雇の警告を行った後、当該スタッフを通じて、「目先の利益にとらわれてこのままストライキを続けたらどうなるのか分かるか?仕事を失うことになるのだぞ。もし、仕事を失ったら、今後あなたの家庭は誰が支えるのか?」というように家族が路頭に迷うというような家族の利益に還元してメッセージを流すと団結が崩れやすい。農民工が多いオペレーターは家族を非常に大切にするからである。
8.最悪の事態として、ストライキが長期化するようであれば最後の手段として、工場閉鎖も辞さないという強いメッセージを押し出す必要がある。これも、上述5.と同様期限をつけて行わなければならない。すなわち、いついつまでストライキを停止しなければ工場を閉鎖すると警告するのである。期限をつければ、行政機関、労働者は焦りだす。その場合行政機関としては撤退されては非常に困るし、労働者としても工場閉鎖になったら踏んだり蹴ったりとなるので、行政機関は労働者の説得側に回り、労働者もストライキによる昇給を諦めやすい。
主執筆:王穏
執筆:毛奕、李飛鵬、呂玉崧、齋藤彰
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