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ストライキ問題特集No.3:ストライキの予防措置

中国ビジネスレポート 労務・人材
王 穏

王 穏

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2010年10月14日

記事概要

今もなお、中国ビジネスの現場で発生し、日系企業の頭を悩まし続けているのが労働ストライキである。このシリーズでは、日系企業がどのように労働ストに対応していけばよいのか、分析・解説していく。

No.3:ストライキの予防措置

背景その他
ストライキの原因は経済的問題が主であり、賃金アップ、福利待遇の増加、労働条件の改善等が含まれる。ここで注意すべきは、労働者の問題の核心は「経済的問題」の「絶対値」というよりも、「相対値」であるという点である。つまり、労働者は経済利益の「公平性」を望んでおり、それには「自身への公平性」(自身の業務が相応の対価を受けているか)、「外部との公平性」(同一地区、同一業界における企業の収入と遜色ないか)、「内部での公平性」(同一業務同一賃金)を含む。また、経済的問題以外に、非経済的問題もあり、例えば、人格の尊厳、人間性に基づく管理、機械の管理と同様な硬直的な管理制度等である。従って、予防措置では「公平」に経済的問題を解決することを中心に実施し、また、管理という「ソフト環境」を改善することで、最終的に労働者の心理を和らげ労使対立関係のバランス整えることが可能になる。

対応策
1.会社を知り、労働者を知る。

1.1会社を知る
会社が属する業界は経済社会における一業種であり、会社は産業リンケージに組み込まれている。会社の地域における影響力等は、会社の利益、労働力コスト、様々な問題が生じたときに地域会社へ及ぶ。例えば、業界の生産量は経済とともに成長し(ホンダであれば自動車業界)、会社として経済状況の変化に伴い訪れるリスクを考慮する必要がある(労働者の賃金アップや減少時の要求等)。作業量が季節的影響を受ける場合(アパレル等)、労働者の流動は大きく、労働者は離職することで自身の鬱憤を晴らすことがあることを覚悟する必要がある。職種に技術的要素を含む(金型、精密鋳造等)場合は、技術者の賃金が低過ぎることはないはずであるが、経済状況が悪化し、技術者の賃金を調整した場合は、技術者も同様に不満を募らせる可能性がある。

1.2労働者を知る
労働者が会社で働く目的、会社に残る条件を知ることが重要である。この目的を知ることは労働者と会社のバランスを保つ原則であり、同原則に変更が起きたとき、労働者は会社との対立を選択することもありえる。
また、上述労働者の二原則は随時変わることもあるため、会社として臨機応変な対応が必要となる。

2.労働者の全てが「会社と仕事を中心」とすることはありえず、「会社と仕事のために努力し、責任感を持つべきである」という考えは捨てること。
長い間、このような固定観念が日系企業の管理職の主要意識として存在しており、現実の中国人労働者との間で対立が起こっている。中国人労働者の考えの実態を認識し、こうした考えを変え、より現実的、より臨機応変に対応することが労働者管理に非常に重要である。

3.人事部門や部門責任者は日頃から労働者の感情的変化をチェックし、不満要素を発見する。
労使関係を改善する重要な方法であり、労働者も会社から大切にされていると感じることができる。労働者の感情をチェックすることで、労働者のニーズと態度を知ることができ、性格を知ることにも役立つ。チェックする方法は不定期な会話でのコミュニケーション、昼食、部門ごとの会議等を通じて行ってもよい。そのほか、定期的に匿名で意見を募集するという方法もある。例えば、アンケート形式で労働者から意見を募集し、人事部門が調査結果をまとめて分析、最終的に会社の管理職が対策を検討し、報告する。

4.必要に応じ、苦情システムを実施し、適時不満を取り除くことで蓄積を防ぐ。
苦情対応システムを設置し、労働者に不満を言う場を提供する。同システムの設置により、それぞれの労働者の不満がからみあい、集団化することを防ぐことができる。会社としては、労働者からの苦情は会社内部に存在する潜在的問題であることを忘れてはならない。不満が蓄積することで、労働者の心理と行為は歪んでいく。「火山が噴火する」前に不満を取り除かなければならない。
苦情対応システムは意見箱、専用のメールアドレス等を通じて受付け、苦情については公正に対処する(苦情を集中的に改善する日常的システムとする)。

5.コミュニケーションルートの開放
会社には上下関係が存在するものの、管理職は労働者と互いに信頼し合い、コミュニケーションを図る意思がありること、労働者のことを気にかけていることを知らせる必要がある。

6.個別労働者の日常的感情に注意
労働者によってタイプはまちまちであるが、マイナス思考の性格で不満を持ちやすい者もいれば、感情的になりやすく、対立志向の者もいる。また、集団行動でリーダーシップを発揮するタイプもいるので、会社として労働者の日常的な感情の変化には注意が必要である。

7.管理の透明化を強化
公正な評価システムを実施するには、解雇、人員削減を行うときに、会社に残る労働者に対し具体的に説明することである。担当責任者の主観的判断により誤った決定を出した場合、労働者は公正さに欠けると感じ、不安になるが、説明することでこうした不安を取り除き、また管理システムをできる限りオープンにしていく。

8.労働者は会社の財産であり、労働者と会社がともに成長していく意識を養う。
会社の発展計画を労働者により多く公開し、現在の経済状況を説明し、会社は労働者の育成に関心を持っていること、会社が成長してこそ労働者も成長できることを理解させる。また、労働者は会社の財産であり、自らはもとより会社の名誉を軽率に傷つけてはならないことを理解させる。

主執筆:王穏
執筆:毛奕、李飛鵬、呂玉崧、齋藤彰
(2,219字)

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