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従業員の「悪意の病気休暇」、「事後申告休暇」に対し、企業はいかに対応するか

中国ビジネスレポート 労務・人材
邱 奇峰

邱 奇峰

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2014年10月9日

「悪意の病気休暇」とは通常、従業員が小さな病気を患った際に故意に長期病気休暇を申請し、または病気を患っていないにもかかわらず故意に病気と偽り、医師に対し病気休暇証明の発行を要求し病気休暇申請に用いるなどの状況を指す。「事後申告休暇」とは通常、従業員が事前の病気休暇申請を行わない状況で、無断で病気休暇を取り、病気休暇終了後暫くしてからようやく病気休暇証明を追加提出し、または企業が従業員に対し病気休暇状況を調査確認した際にはじめて病気休暇証明を追加提出する状況を指す。「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の現象は企業の正常な管理秩序を乱し、更には、その他の従業員に対する好ましくない見本となり、その他の従業員の模倣を生み、企業が慎重な対応をせざるを得ない難題となる。

「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の現象が生じる根源

「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の現象が生じる理由として、主な原因は以下の通りにまとめることができる。

1.労働法と司法機関が病気休暇従業員に対し過度に保護する傾向がある

1)一部の地域、企業の病気休暇賃金は高く、従業員が「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」により悪くない収益を得ることを可能としている

上海は最も典型的であり、その他の大多数の地域が定める「病気休暇賃金は最低賃金の80%を下回ってはならない」と異なり、上海の病気休暇賃金[1]は従業員の当該企業における勤続年数に基づき確定し、従業員の当該企業における勤続年数が長ければ長いほど、病気休暇賃金は高くなる。
例えば、従業員の連続病欠が6ヶ月以内については、当該企業における勤続年数が2年未満の場合は本人賃金の60%、勤続年数が2年以上4年未満の場合は本人賃金の70%、勤続年数が4年以上6年未満の場合は本人賃金の80%、勤続年数が6年以上8年未満の場合は本人賃金の90%、勤続年数が8年以上の場合は本人賃金の100%に基づいてそれぞれ計算支給することになる。
病気休暇賃金が上海の前年度月平均賃金を超えている場合は月平均賃金を上限として計算支給することができるが、全体としては、上海の病気休暇賃金は高めであるため、上海の企業における従業員の「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」の現象はその他の地域より明らかに多い。

また、一部の企業は、自社で規定した病気休暇賃金が高く、病気休暇福利が良好であるため、従業員の「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の現象がその他の企業と比べ多くなっている。

2)従業員の法定医療期間が長く、従業員の医療期間における「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」をやりたい放題にしている

医療期間は、従業員が病気の場合に勤務を停止して治療休息し、企業は労働契約を解除できない期間である。医療期間を設定する本来の意味は、病気休暇中の従業員に対し特別の保護を実施することであるため、法律の定める医療期間は通常いずれも長く、例えば以下の通りである。

●上海[2]:従業員が当該企業で勤務する1年目の医療期間は3ヶ月であり、その後勤務年数が1年経過する毎に医療期間は1ヶ月増加するが、24ヶ月を超えないものとする。

●旧労働部[3](北京、江蘇などの大多数の地域はこれに基づいて実施している):従業員の累計勤務年数が10年以下については、当該企業での勤続年数が5年未満の場合は医療期間3ヶ月、5年以上の場合は6ヶ月である。従業員の累計勤務年数が10年以上については、当該企業での勤続年数が5年未満の場合は医療期間6ヶ月、5年以上10年未満の場合は9ヶ月、10年以上15年未満の場合は12ヶ月、15年以上20年未満の場合は18ヶ月、20年以上の場合は24ヶ月である。

3)司法機関が病気休暇証明に過度に依存して病気休暇の真実性を判断することが、従業員の「悪意の病気休暇」を簡単に実現させている

司法機関が従業員の病気休暇の真実性を判断する際、基本的にいずれも病気休暇証明に依存しており、企業の管理措置、例えば病気休暇証明発行機関の限定、従業員の病気休暇に疑いがある場合の従業員に対する再検査への協力要請などについて、司法機関はあまり支持せず、これは従業員の「悪意の病気休暇」を非常に容易にしている。

4)従業員の病気休暇申請に関する司法機関の要求が厳格でないことが、従業員の「事後申告休暇」を野放しにしている

企業は一般的に規則制度において病気休暇申請の手順を明確に定めており、例えば従業員に対し事前に病気休暇申請を行った上、病気休暇証明を取得した後は一定期間内に病気休暇証明を提出することを求め、さもなければ無断欠勤と見なすなどである。ところが、労働紛争処理の過程において、司法機関は時に従業員側に偏重し、従業員が最終的に提出した病気休暇証明が真実でさえあれば、たとえその休暇申請手順に瑕疵があるとしても、従業員の病気休暇を認め、企業が紀律違反として処理することを支持しない傾向にある。

2.病院の病気休暇証明の発行が恣意に過ぎるため、監督管理に欠けている

一方では労働法上の問題があるが、もう一方では現在の医療の現状として、従業員が病院の発行する病気休暇証明を容易に取得できることが、「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」に利用されている。例えば以下の通りである。
1)中国の医療機関は多く、規定に合致した医療機関でさえあれば、等級にかかわらず、従業員はいずれもそれらから病気休暇証明の発行を受けることができ、従業員が選択可能な対象範囲は広い。
2)大病がなくとも、従業員は往々にして自身の身体上の些細な問題(典型的な例では頸椎の問題、腰椎の問題、抑うつ、またはめまい、痛みなどの症状であり、これらの症状は通常の医療検査を通じて検証することは困難と思われる)を理由として、病院に対し病気休暇証明の発行を求め、病院も営利目的を考慮して(同時に一連の検査を行い、いくつかの薬を処方するものと思われる)、通常ではいずれも従業員の要求に基づき発行してしまう。
3)一部の従業員は医師との個人的な関係を通じて、病気がないにもかかわらず、病気休暇証明を取得することすらあると思われる。

「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」への対応

日々深刻になる従業員の「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の現象に直面し、それが生じる根源に基づき、筆者は参考までに、以下の対応措置を挙げる。

1.従業員の「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の動機を抑制する

現時点で把握するところ、従業員の「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の主な動機には、病気休暇で休み、病気休暇賃金をかすめ取る、医療期間を利用して、故意に労働契約の期限引き延ばしを図る、病気休暇期間を利用してその他の個人的な用事を処理するなどがある。従業員の係る動機に対し、企業は以下の予防措置を講じることが考えられる。

1)病気休暇賃金、病気休暇福利を低めに抑える

病気休暇賃金が高く、病気休暇福利が良好な地域および企業では、「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」の現象がより普遍的に見られ、従業員は病気休暇中、役務を提供せずとも、少なからぬ収益を得られる上に、休息も取れることから、企業は病気休暇賃金、病気休暇福利を低めに抑えることで、動機の面から従業員の「悪意の病気休暇」と「事後申告休暇」を抑制する必要がある。

●現地の定める最低基準に基づき病気休暇賃金を支払う。例えば北京[4]、江蘇[5]などでは、最低賃金の80%に基づいて支払う。上海については、現地の定める最低賃金に基づき病気休暇賃金を支払う以外にも、病気休暇賃金の上限を明確に規定する必要があり、即ち、病気休暇賃金が上海の前年度月平均賃金を超える場合には、月平均賃金を上限として計算する。
●法定基準以外の病気休暇福利を設けることは好ましくない。例えば「賃金カットなしの病気休暇」、法定基準を超えた病気休暇賃金などである。
●従業員の病気休暇の頻度を出勤率の要素とし、従業員の賞与などと関連させ、制度として従業員に告知することで、「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」は賞与に影響することを従業員に理解させる。
この他、従業員の病気休暇の頻度を職務の昇格、従業員の研修機会、労働契約の更新などとも関連させた上、従業員に告知する。なお、差別問題の発生を避けるため、これを制度上では反映しないことも考えられるが、実際に処理する際には参考基準とする。

2)労働契約の終了を従業員に通知する時期を考慮し確定する

従業員が医療期間にあることは、労働契約の期間は順延し、過失なく解除してはならない[6]理由の一つとなる。よって、労働契約の期間満了による終了、過失なき解除の状況に際し、一部の従業員は病気休暇の申請を利用して医療期間に入ることで、労働契約の終了、解除に対抗し、故意に労働契約期限の引き延ばしを図ることもある。これについては以下のことが考えられる。
●労働契約の期間満了による終了の前に、事前通知義務を設けていない地域、例えば上海、江蘇などでは、事前通知を行わない、または早過ぎる事前通知を行わないことが望ましい。
●労働契約の過失なき解除の前に、解雇予告手当の支払いをもって事前通知を代替することができる場合においては、従業員に「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」の可能性があることを察知した場合、できる限り事前通知を行わずに、解雇予告手当を利用する。

3)病気休暇期間を利用してその他の私用を処理する行為を重大な規則違反として規定する

一部の従業員は病気休暇期間を利用して外出旅行、外部での兼職などを行っているが、これは病気休暇の目的と全く合致していないため、企業はこの種の行為を重大な規則違反と定め、労働契約を直接解除できるものと規定して、警告とすることが考えられる。

2.病気休暇管理制度の整備する


病気休暇管理制度については、主に病気休暇申請、病気休暇資料、再検査、虚偽の病気休暇に対する処分に関する制度の規定を強化する必要があり、例えば以下の通りである。

1)厳格な病気休暇申請手順を定める。正規の病院(病院等級の制限を含む)の医師が発行した病気休暇証明、カルテなどの提出、様式化された病気休暇申請表への記入を求め、申請表には医師の氏名および連絡方法を付記し、病気休暇の承認権限を引き上げる。
2)病気休暇再検査制度を定める。疑義のある従業員について、企業は本人に対し企業の指定する病院での再検査を要求し、従業員が拒絶した場合は相応の処分を行うことができると規定する。
3)虚偽の病気休暇申請、虚偽の資料の提出などの行為は重大な規則違反行為に該当し、企業は直ちに従業員との労働契約を解除することができると規定しまたは取り決める。

なお、前述の関連分析において言及したとおり、一部の制度(例えば再検査、病気休暇証明を発行する病院の指定など)は最終的に裁判所の確認を得られるとは限らないが、管理措置として、やはり強調する必要がある。

3.従業員の「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」の問題を積極的に調査し、処理する

従業員に「悪意の病気休暇」および「事後申告休暇」が見つかり、或いはその疑いがある場合、様々な方法で積極的に介入、調査、処理する必要がある。例えば以下の通りである。

1)合理的に見て病気休暇証明に疑いがある場合については、企業は病院にて病気休暇の真偽を確認し、医師に対する病気休暇証明発行の合理性を尋ねることができ、合理性がない場合、病院と交渉することが考えられる。
(例えば、重病、不治の病ではない一般的な病状であるにもかかわらず、病気休暇証明に記載された病気休暇期間が2週間を超えている、または絶えず病気休暇証明の発行病院を変える場合、確認が必要である。)
2)別ルートでの情報取得(例えばその同僚、友人、隣人への尋ねなど)などを通じて、病気休暇従業員の実際の状況を把握し、病気休養ではなく、その他の事(例えば旅行、兼職その他)を行っていたのであれば、病気休暇が真実でないことを間接的に証明することができる。
3)病気休暇に疑いのある従業員を定期的に訪問し、本人の家での過ごし方および病気休養の状況を把握することで、病気休暇の真実性を調査する。
4)定期的に従業員の病気休暇申請状況を公示し、全従業員が相互に監督し、虚偽の病気休暇に関する情報を報告することを奨励し、報告が事実である場合、一定の報奨金を与えるなど。

(里兆法律事務所が2014年7月21日付で作成)

[1]旧上海市労働局「企業従業員疾病休暇管理を強化し従業員の疾病休暇期間における生活を保障する旨の通知」を参照のこと。
[2]上海市「当市労働者の労働契約履行期間における疾病または業務によらない負傷に伴う医療期間基準に関する規定」第2条を参照のこと。
[3]旧労働部「企業従業員の疾病または業務によらない負傷に伴う医療期間に関する規定」を参照のこと。
[4]「北京市賃金支払規定」第21条を参照のこと。
[5]「江蘇省賃金支払条例」第27条を参照のこと。
[6]過失なき解除とは、企業が「労働契約法」第40条、第41条の規定に基づいて労働契約を解除する場合を指す。

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