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人事労務は経営者の仕事:プロ監督に学ぶ、着任早々に押さえる三つの要 ‐その1.目標や意図の明確化

中国ビジネスレポート 労務・人材
小島 庄司

小島 庄司

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2015年2月13日

コラム概要
日本企業が海外駐在員を派遣する場合、任期は通常3?4年。これはゼロから適応して一定の成果を出すには、かなり厳しい短期間です。そこで、同じく短期間での成果が求められるチームスポーツのプロ監督に、着任早々押さえるべき三つの要点を学んでみましょう。三部作の一回目です。
【1,662字】

※小島註:この元原稿を書いたのは2014年6月頭です。

世界で最も盛り上がるチームスポーツの頂点、サッカー・ワールドカップはどんな情況になっているでしょうか(こういうお祭りにしても、趣味の世界の買い物にしても、実はあれこれ想像しながら心待ちにしている時間が一番楽しいんですよね♪)。

これを読まれるころは、決勝トーナメントの一回戦が終わったあたり。順当勝ちもあれば番狂わせもあったはず。これがスポーツの怖いところで、経営者の方がプロ監督よりもずっとやりやすいと私は思います。

なぜなら、まず時間制限がない。今期末ぎりぎりにライバルが大型受注をかっさらって行っても来期の反撃が可能。そして経営の場合、ナンバーワンの定義はいくつも創造可能。売上高世界ナンバーワン、中高級クラスの出荷台数が中国市場ナンバーワン、天津のハンバーガーでネット投票ナンバーワン。そもそもナンバーワンでなくても堅実に利益を出せれば経営としては勝ち。唯一の勝者以外はみな敗者、ということはありません。

ただ、通常の経営と駐在経営の違いは時間制限があること。しかも三年程度とは正直、非常に短い。この期間で成果を出すため、短期勝負の世界で戦うプロ監督の技に学ぶべし。ということで前回、何度も卓越した成果を出しているプロ監督たちが、就任早々にやっている重要事項を三つ挙げました。

●着任早々に押さえる三つの要
①目標や意図の明確化
②外野のコントロール
③規律の徹底

この三つ、企業経営における改革の成功や失敗と照らしてみると、驚くことにそのまんま当てはまります。とくに着任早々や改革を決意した時点など、組織づくりに着手する段階では致命的に重要。自分で挙げながらなんですが「鋭いこと指摘するなぁ」と実感(笑)

●着任早々の要①:目標や意図を明確化し誤解や反発を避ける

一つ目の『目標や意図の明確化』は、経営者の独り相撲で抵抗派を増やし自滅しないために必要です。プロ監督もこれに失敗すると、選手が総反発したり、困惑して連携がガタガタになったりし、招聘前よりひどい惨状に怒ったオーナーから契約打ち切りを宣告されます。

まず、経営者として自分のプランを実行に移す前に、社員をはじめ関係者に目標を示す(例:二年で生産性を20%上げて予算を確保し、三年目の夏に全社員で北海道旅行に行く)。これから着手することの意図を明確に伝える(例:まずは当たり前にラインが維持できる状態を目指し、まじめな勤務者が報われる会社にする。だから遅刻、私用外出、早退は管理を厳格化するし、有休以外の出勤率を賞与、昇給、登用に反映させる。率先垂範するべき幹部や管理者がルール破りをすれば、降格や免職もある)。

社員に「なぜ」が伝われば、無用な誤解や疑心暗鬼や反発を回避できます。逆に、目標や意図が伝わらないまま改革を始めると「管理者を総入れ替えしたいらしい」、「前赴任先でも短期利益優先でコストカットし会長に褒められたらしい」、「自分の力量を日本本社に見せるため、とにかく過去のやり方を批判して否定したいらしい」などとあらぬ噂が立ち、いきなり社内で孤立することになります。

目標や意図を予め明確化するもう一つの理由は、改革の時間を確保するためです。事前に改革の所要時間や当面の狙いを共有しておくことで、短期的に成果が出なくても、結果を期待させるような「変化」があれば、周囲は納得してくれます。例えば「三年で高成長環境を整える。速戦が必要なので初年度は荒療治も行う」と事前に明言していれば、半年後ぐらいに労務問題が噴出しても、周囲は過度に心配せず、「いよいよ始まったか」と感じることでしょう。

新しい挑戦をはじめる場合、リーダーの考えを『見える化』するというのは大事なことなのです。

ではまた次回!

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