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ログイン2006年4月24日
<労務・人材>
雇用者は法的権利を活用すべし 就業規則など社内規則制度の重要性 【前言】 ――中国は、イデオロギー上の原因で雇用者の権利を必要以上に制限しているのではないか? 中国の労働法に関しては、残業時間の制限、高額残業代の支給、労働仲裁の際の企業側の高敗訴率、途中解雇における会社側解雇と従業員の辞職との両極端の難易の差など、種々様々な実例付きの話しをよく聞きますし、さらに「労働契約法草案」などのような企業側をより拘束する法改正が見られます。 それでは、中国が社会主義の国だから、(言い方が悪いが)労働者を甘やかし労働者の権利を過保護にしている一方、雇用者の権利を損ねているのではないかとの指摘があるように見えます。 しかし、長年の労務問題の実務から見れば、中国の労働法でもちゃんと合理性に則ってて機能していることがわかるようになってきました。
【事例】 ――就業規則に解雇事由が明確ではないとのことで、敗訴した事例 A社は地方出身の新卒労働者を多く採用し、一から技能を教えるようにした。これらの新卒労働者は、同レベルの労働者と比べると給料は数百元高いので、一所懸命働くし、幹部に抜擢される人も少なくない。 ただ、中にはやはり、無断欠勤したり、管理職に脅迫電話をしたりする労働者(B氏)が一人いました。会社は、数回処罰を行っているが、まだ改悛の兆しが見られないので、どうしようと迷っている間に、その労働者と同期の他の労働者から、社長に「どうしてその人を懲戒解雇しないか」、「まじめに働く私たちに迷惑だ」との直訴があり、懲戒解雇をしました。 B氏は、労働仲裁を申し立て、会社は自信満々で応訴したところ、裁判所から就業規則には、明確な懲戒解雇規定がないため、会社が敗訴という採決を下しました。
【コメント】 ――労働法においても、実務上においても、雇用者の雇用行為に対する内容の正当性ならびに手続きの正当性を厳しく要求しています。 労使間の解雇トラブルについては、まず労働法では、経済的にも劣勢、(法律法規に関する)情報における劣勢、労働者側が解雇のため受ける不利益の立場から、雇用者に厳しく解雇の内容の合法性ならびに手続きの合法性を要求しています。 また、労働トラブルは、労働仲裁、一審裁判所、二審裁判所という実質上の三審制をとっているが、仲裁委員・裁判官は、特に低所得の労働者が、解雇によって受ける不利益を重要視し、会社側の解雇の正当性をさらに厳しく審査する傾向があります。 いわば、あまりお金のない従業員に対して、会社側が「お金ぐらいならば…」という見方を持っているわけです。
【雇用者による権利・権力の認識及びその確保】 法律法規の規定においても、実務においても「逆差別」を受けているのではないかという反論もできないことはないが、逆に従業員側が受ける不利も考えれば、中国の労働法関連も諸外国と違う意味でバランスをとっていると思われます。
即ち、雇用者は、労働者との話し合いで締結する労働契約以外、就業規則という一方的に作成できる権利を持つわけです。
労働契約書では、労働法で決められる双方の権利義務を記入するが、解雇事由、懲戒事由、守秘義務、競業避止義務、勤務規程など多くの内容は、雇用者は、その制定する就業規則に詳細を決め、これらの規定により労働者の勤務行為を拘束し、自己の権利を確保できます。これらの規定には、一定の合理性があれば、労働契約書における就業規則作成の合法性根拠に基づき、合法とされますので、考えてみれば、きわめて大きい権利そして権力でもあります。その上に、雇用者の経済力、仲裁・訴訟続行力などを考えれば、この権利・権力は、雇用者社内での絶対化さえありえます。
そこで、中国の労働法関係者の中で意識されたかどうかは分かりませんが、雇用者の実質上の合法性ならびに手続き上の合法性に対する過酷なほど厳しい要求は、この雇用者の絶大な権利・権力へのブレーキとして使われるようになってきました。雇用者は、就業規則など社内規則制度を制定することにより、一方的に労働者の権利を不当に制限ひいては侵害するのではないかと、この事態を防ぐために、雇用者の権利実施に立証責任を求めるようになります。
但し、今回の事例から見られるように、このような厳しい要求は、場合によっては雇用者の正当な権利保護、雇用者会社の正常な運営管理・労務管理にも大きな支障をきたしかねない事態を招きます。
中国の労働法体制ならびに実務が、既に雇用者と労働者の関係について、上記のような理論ならびに応用が確立されているため、今後もこのような方向で更に充実していくと思われますが、日系企業の多くに与えられた課題としては、社内労務管理の円滑化のために、就業規則などの社内規則制度の作成・緻密化ではないかと思います。
次回は、労働法仲裁・訴訟実務から見た望ましい就業規則の内容について述べたいと思います。 (つづく) (2006年4月記・1,974 |
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