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【コラム】中国現場体験記(17) 中国のタクシーと駄目元チャレンジ

中国ビジネスレポート 各業界事情
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年7月27日

記事概要

中国でタクシーを利用していると、いろいろなおもしろい出来事が待ち受けています。タクシーは中国および中国人について多くのことを学べる空間であり、日本でタクシー乗車することとは意味合いが異なります。今回は、中国のタクシー運転手との交渉および値切りの場に関する現場体験記です。

中国人は交渉上手、値切り上手です。日本人はこういった交渉や値切りに慣れていないことが多いため、中国人の駄目で元々というチャレンジスタイルの交渉、値切りにはタジタジになってしまいがちです。そこで、今回は、交渉および値切りの場の一つとしての筆者とタクシー運転手との攻防に関する現場体験記です。

1.中国のタクシー
(1)飽きない
中国では正規のタクシーから白タクに至るまで様々なタクシーがあります。本人にその気さえあれば、それぞれのタクシーで中国および中国人に関する多くのことが学べます。したがい、筆者にとって中国のタクシーは正に飽きない空間となっていました。

(2)メーターが急に
それは、北京首都国際空港に向かうタクシーでのことでした。その日も普通に空港に向かっていたのですが、いつも通りの値段か確かめようとメーターを確認した筆者は信じられない光景を見てしまったのです。タクシー運転手がさりげなくメーターをいじったところ、なんとメーターが急に30元ほど上がったのです。北京市内と空港の往復には何度もタクシーを利用していたため、大体どこから乗車してもタクシー代の目安は付いていたのですが、高速代10元を入れても110元ですし、通常なら80元程度なので、やはり不当な操作があったとしか言いようがありません。

隙も何もあったものではなく、まさに中国では信じるものは騙され、主張しないものはかもられる、という場面でした。

(3)間違えても
タクシーのなかには、平気で道を間違えたり、わざと遠回りしたりする者もいます。(北京など都会では、道を知らない農村出身のタクシー運転手が多いので、運転手に任せず、こちら側でいちいち道順を指示するのがベスト)

そういったときにも、タクシー運転手の説明に納得がいった場合はタクシー料金を支払い、納得がいかなかった場合は、「どうしてこの道を通った?道が違うだろ。メーターを止めろ、余計な金は払わないぞ。」と言って抗議をしていました。

その他、友人を先に降ろした後に、続いて次の目的地に向かうため、料金メーターを途中で止めないように指示していたにもかかわらず(一度そこで精算をしてしまうと、北京の場合、基本料金10元が再度かかってしまうため)、基本料金を再度請求するため、わざとメーターを止めてくることもありました。

とにもかくにも中国においては、主張をしないと負けてしまい、損をするのだということをあらゆる所で実感したものです。

2.泰山のタクシー
(1)公共バスに乗り遅れる
中国では正規のタクシーでも交渉制となる場合があります。

筆者が山東省泰山に行ったときのことです。泰山は世界遺産であり、道教の五岳のひとつ、皇帝の封禅の儀式が行われていた場所としても有名です。中国人なら一生に一度は登りたい、と言われる名山です。

その時は夜の便で北京首都国際空港から泰山の最寄りの済南空港まで向かいました。予定では済南空港から泰山に向かう公共バスの時間に余裕で間に合うはずだったのですが、これまた中国でのお約束どおり、国内線の時刻表が大幅に乱れ、結局到着したのは最終バスもとっくに終了した時間でした。

(2)交渉制
公共バスもすべて終了した済南空港は暗闇に包まれており、大変寂しい状況でした。
ただ幸いにも、近くには、客を呼ぶタクシーが数台ほど空港に残っていました。筆者は、念のため、済南空港から泰山までの大体の所要時間および料金を旅行会社の担当者から聞いていたので、その料金をもとに交渉をしたのですが、どのタクシー運転手も「そんなに近くはない」と声を揃えて言ってきました。旅行会社の担当者もいい加減で信用が置けませんでしたので、これは自分の嗅覚に頼るしかないと考え、数人のタクシー運転手や手配師と交渉をしてみて値段相場を確かめました。その結果、どうやら旅行会社に教えてもらっていた2倍の所要時間、2倍の料金がおよその相場のようでした。

(3)負けた
しかしながら、タクシー運転手が言う事をなかなか信じることができなかった筆者は、この場は値段交渉で料金を決める固定制にはせずに、料金メーターを倒してホテルまで移動することにしました。その後、3時間近くかかりホテルに到着したのですが、結局のところ最初に提示された固定制の金額よりも、50元ほどメーターがオーバーしていました。負けた、という感じです。

3.広州のタクシー
なぜタクシー運転手が信じなれなかったかというと、以前、広州で深夜タクシーに乗った際に、嘘を付かれたことがあったからです。
ホテルに戻ろうとしていた筆者に運転手はこう言いました。
運転手:「メーターを倒さなくても良いだろ?ホテルまで30元でどうだ?」
タクシー運転手のこの手の話を信じていなかった筆者はあっさりと、
筆者:「駄目だ。必ずメーターは倒さないと」

結局、ホテルにはすぐに着き、料金は15元でした。このように、中国人は駄目元でもふっかけようとチャレンジしてきますので、これに対する対応方法が必要となってきます。

4.雲南省昆明市の過橋米線屋
もうひとつ、駄目元交渉チャレンジの例として、雲南省昆明市にあるカルスト地形として有名な世界遺産の石林に行ったときのことを紹介します。

昼食で石林の駐車場の前にあった昆明名物の過橋米線屋に入ったのですが、その店にはメニューがありませんでした。「メニューは1つ、過橋米線のみ」と言うなら格好も良いのですが、そうではなく、観光目的の外国人に吹っかけるためにメニューを用意していないようでした。果たして値段も交渉式(中国では結構ある形式)で、やはり通常よりも大分高い値段を言ってきました。

ここは騙されないぞ、とばかりにかなりハードな値段交渉をしたところ、中国人の日本人に対する典型的な悪口である「小気(けち)」と言われました。ちなみに、新疆ウイグル自治区トルファンでも「けち」と言われたのですが、中国人は民族の垣根なく日本人に対する悪口としては、「小気」を使います。

しかし、たとえなんと言われようとも、やはり中国人とははっきりと意見をぶつけ合いながら、場合よっては喧嘩をしてでも交渉をしないと、結局は足元を見られて自分が損をしてしまいます。

5.こんなタクシー運転手が
そうかと思えば、まれに優しいタクシー運転手に出会う事もあります。

それは筆者が中国語の勉強を始めて3ヶ月ほどしたときのことでした。筆者は中国に来たばかりの友人と一緒に北京名物である北京ダックを食べに行きました。

筆者:「日壇公園ritangongyuanに行ってください」
運転手:「了解。タクシーのメーターが壊れていて倒せない」
筆者:「えっ?!」
運転手:「心配するな。10元で良いよ」

本当かなと思う筆者をよそに、タクシーは出発しました。道すがら3ヶ月勉強した範囲で精一杯に運転手に話しかけると、運転手は自分の知り合いが日本で働いていることや、日本の新聞社の特派員をしていた友達のことなどを話してくれました。助手席で賑やかに話している筆者に対して後部座席の友人曰く、
友人:「何だか、大声で奥北さんは脅されているようにも見えるけど、大丈夫なの?」
筆者:「大丈夫ですよ。北京周辺の人の漢族は特にこんな感じですから」

気分良くしていたのも束の間、曲がるべき場所で曲がらずに、タクシーは真っ直ぐ進んで行ってしまいました。
筆者:「えっ?!通り過ぎたよ。今の所を右に曲がる筈でしょ」
運転手:「えっ?!地壇公園ditangongyuanでしょ?」
筆者:「違うよ。日壇公園ritangongyuanだよ。日本の日だよ」
運転手:「あっ、そうか!」

これは運転手が道を間違ったのではなく、筆者の中国語の発音が悪かったのです。筆者は「ri」tangongyuanと言ったつもりだったのですが、運転手は「di」tangongyuanと聞き取ったのです。

結局、環状線に乗ってしまったため、ぐるっと大回りする事になったのですが、請求されたのは当初運転手が言っていた10元だけでした。この場合、筆者の発音のせいで遠回りをさせてしまったため、きちんと料金を払うと言ったのですが、運転手は10元しか受け取らず、にこやかに去って行きました。

友人:「奥北さんは脅されているのかとばかり思っていたけど、良い人だったね。それにしても喧嘩をしているような話し方と声の大きさだよね。」

中国の中でも北京の漢族は声が大きく、また、傍目には喧嘩をしているように見える話し方をします。日本人には街中で中国人が喧嘩をしているのか、と思う場面に出会うこともありますが、当人からすれば普通に会話をしているに過ぎないことが多々あります。

6.たくましさと交渉力
一括りに中国人と言っても、56の民族がいるうえ、同じ民族でも各地で性格・考え方が異なります。日本人である筆者からすれば、まるで別の国のようです。この広大な大地で、生き抜くに必要なたくましさ、交渉力の必要性を感じた現場体験の数々でした。


※泰山 7412段の石段を6時間かけて登る途中の筆者 中国のとうもろこしは日本のとは異なり、餅のような食感

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