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【濱の金融マンの海外取引実務コラム】第2回 信用状統一規則のポイント

国際ビジネスレポート 外為・貿易実務
甲良 親弘

甲良 親弘

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2020年9月30日

第2回 信用状統一規則のポイント

第1回コラム「信用状取引の特徴」にて、信用状の基本的な3つの特性(①銀行が発行する支払い確約文書であること②独立抽象③書類取引)について解説しましたが、今回は続けて信用状が信用状統一規則の中でどのように定義されているか、および実務上のポイントについて解説したいと思います。

Q 信用統一規則の定義に、オナー(honor)という用語が出てきます。発行銀行の支払い確約条件に関連する様な用語かと思うのですが、どの様な意味でしょうか

信用状統一規則の定義(第2条)の中で以下のように定義されています(UCP600第2条参照)。

●一覧払(sight payment)により利用可能な場合は、発行された信用状の支払い条件を満たすときは、一覧後に支払うこと(「一覧」とは、輸出者が呈示するという意味)

●後日払(deferred payment)により使用可能な場合は後日払いを約束し(to incur a deferred payment undertaking)、かつ支払期日に支払うこと

●引受(acceptance)により利用可能な場合は、受益者(beneficiary)により振り出された為替手形(bill of exchange)を引き受け、かつ支払期日に支払うこと

信用状統一規則の日本語翻訳版においては、この「オナー(honor)」という英語をそのまま日本語にて使用しています。正直この言葉は日本語としては一般的ではないと思いますが、オナーを日本語に訳すには長くなりすぎるというのがその理由かと推測します。この文言が意味することをよく理解して下さい。実際の信用状の中に、上記にて英語で書かれた文言がよく使用されます。

Q 買取(negotiation)とはどのような意味ですか(UCP600第2条参照)

買取とは、指定銀行による為替手形および/または書類の買入(purchase)です。指定された銀行(=輸出者が書類を持ち込む買取銀行)に、信用状の条件に充足した書類が提示されれば、受益者は発行銀行が支払いを行う前に支払を受けられる、ないしは前払いすることを合意する方法によることを意味しています。それにより輸出者は、書類が発行銀行に届き支払われるよりも前に資金回収が図れます。また外貨建ての取引であるとき、買取時に外貨を円転すれば、為替リスクから解放されます。
通常、信用状の発行銀行と指定銀行は異なる国に所在することが多く、輸出者(すなわち受益者)は発行銀行からではなく、自国に所在する指定銀行から支払を受けることが出来るのです。

Q 信用状の発行銀行としての約束はどうなっていますか(UCP第6条参照)

信用状の発行銀行は、信用状に記載された書類が指定銀行ないしは発行銀行に呈示され、その書類が信用状に記載してある条件を満たしている場合には、必ずオナーしなければなりません。要は、信用状発行銀行は呈示された書類が信用状の条件に合致していれば、書類を呈示した方に必ず支払いを行わなければならないという、極めて拘束力のある規則です。

Q 信用状に記載するべき事項にはどのようなものがありますか

信用状の中には、以下の事項を必ず記載しなければなりません。(UCP600第6条参照)

●利用可能な銀行の記載:どの銀行でも利用可能なのか、ないしはある特定の銀行で利用可能なのか(available with any bankないしはavailable with ABC Bank等)

実務上はどの銀行でも利用可能とする場合が多くなっています。確認(下記にてご説明)が付与されていない場合に特定の銀行のみ利用可能となるケースは比較的少ないと思います。確認依頼(下記にてご説明)が付与されている場合には、確認銀行に指定されます。

●一覧払い(sight payment)、後日払(deferred payment)、引受(acceptance)または買取(negotiation)のいずれかにより利用可能か

発行銀行ないしは指定銀行からどの方法にて支払われるのかチェックする必要があります。

●書類の呈示のための有効期間及び場所

Q 確認銀行とは何ですか、またどのような役割がありますか(UCP600第8条参照)

信用状を発行する銀行は、他の銀行に確認(to confirm a credit)を求める場合があります。確認を要請された銀行がそれに応じた場合、確認銀行(confirming bank)はいわば発行銀行と同等の義務を追うこととなります。即ち、上記にて記載した「オナー」にかかる義務を確認銀行が負うことになるのです。実務上発行銀行が確認銀行として指定してきた通知銀行(advising bank)経由で行ないます。
また、確認銀行は、買取により利用可能である場合は、遡及権を免除して(without recourse)買い取らなければなりません。ここでいう遡及権とは、買取を行ったが、発行銀行から入金(補償)がなされなくとも、書類を呈示した輸出者(受益者)に遡及して返金は求めることが出来ない、とう趣旨です。
それだけに確認銀行の義務は重いものがあります。確認を付与する場合には、確認銀行はその対価を受益者ないしは発行銀行に求めます。
信用状を発行する銀行が、何故他の銀行に「確認」を求めるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。銀行といっても、信用力の比較的高い銀行から、低い銀行まで千差万別です。また、発展途上国の銀行が発行する信用状の場合、銀行自体のリスク(信用リスク)だけでなく、発行国のリスク(カントリーリスク)も考える必要があります。確認をする銀行はこれらのリスクをとり、発行銀行の信用補完を行なっているのです。

Coffee Break 元銀行マンのつぶやき~英文による理解を

信用状取引に携わる方は、信用状統一規則を一読し理解しておく必要があります。国際商業会議所日本委員会が英文のオリジナルと合わせ対訳方式の日本語訳の冊子を販売していますが、持っていない方は郵送でも手続き可能なのでぜひともご入手下さい。
信用状統一規則の理解については、英文の原典による理解を深めておくことが、実務力の向上につながります。英文の読解が苦手だなと思っている方でも、まずは日本語訳で読んだ上で結構ですので、英文での理解をするようにしてみて下さい。国際貿易取引を進める上で、信用状の記載は殆どの場合英語での記載・やり取りとなっていますし、信用状統一規則を引用する記載も信用状自体の中に随所に出てきます。また、英文の売買契約書等を読む場合にも、信用状の英語による理解が出来ていると有益ですので、少しずつ読んで理解してみて下さい!ビジネス英語力の向上にも資すると思います。
小生もこの仕事を始めたときに信用状統一規則を読んでもよく意味が分からずに、眠くなって仕方がなかったですが、その後具体的な取引事例を扱う中で、様々な問題や疑問点が生じてきた時に、この規則の該当部分を読んで少しずつ理解を深めて参りました。

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