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年度半ばで窺い見る2014年の労働法令新政策(後半)

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2014年11月13日

年度半ばで窺い見る2014年の労働法令新政策

概要
2014年度の開始から現在に至るまでの間に、国レベルから各級地方政府などの間で各種労働法令が公布され、実務における労働紛争事件の処理についても、新たな動きが見られる。当所は2014年に公布、施行された新法令のいくつかを選んで紹介し、これらを通して、2014年度の初めから現在に至るまでの間の労働法令新政策を整理、統括し、今後の動向を窺い見る。

(前半記事はこちら

三、労働契約関係の新政策、新動向

2008年1月1日から施行された「労働契約法」は、労働契約制度の基本的な法的枠組みを確立し、整備した。実務において、この基本的な法的枠組みの運用はほぼ安定している。2014年度は、以下の方面における新政策、新動向について留意すべきである。

1.北京、浙江、広州などの地域で新たな労働紛争処理意見が公布された。

北京市高級人民法院、北京市労働紛争仲裁委員会が公布した「労働紛争事件法律適用事項に関する研究討論会会議紀要(二)」、浙江省高級人民法院民事審判第一法廷、浙江省労働人事紛争仲裁院が公布した「労働紛争事件の審理に伴う若干問題に関する解答(二)」、広州市中級人民法院が公布した「労働人事紛争事件の審理に伴う若干問題に関する研究討論会紀要」などであり、上記の新労働紛争処理意見が網羅する内容は非常に広く、本文では個々の分析を行わない。なお、留意すべき点として、北京および浙江省の新しい労働紛争処理意見はいずれも期間の定めのない労働契約の関連内容を明確に規定しており、以下に簡潔に説明する。

名称/公布日 関連条項内容のまとめ
「北京市高級人民法院、北京市労働紛争仲裁委員会の労働紛争事件法律適用事項に関する研究討論会会議紀要(二)」
/2014年5月7日
第33号~第35号:
下記の状況において、従業員が期間の定めのない労働契約の締結を申し入れた場合、使用者は法に従って本人と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。
・労働契約で取り決めた期間満了時に自動更新し、且つ労働契約を取り決めた延長期間満了まで履行した時点で、従業員が期間の定めのある労働契約を連続2回締結していることを理由に期間の定めのない労働契約の締結を申し入れた場合。
・従業員が期間の定めのある労働契約を連続2回締結し、2回目に締結した期間の定めのある労働契約の期間満了時に、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を申し入れた場合。
・労働者が既に期間の定めのある労働契約を連続2回締結しており、再度(筆者注:三回目であり、以下同じ)期間の定めのある労働契約を締結する状況で、再度締結した期間の定めのある労働契約が満期終了する際に、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を求めた場合。
「浙江省高級人民法院民事審判第一法廷浙江省労働人事紛争仲裁院の労働紛争事件の審理に伴う若干事項に関する解答(二)」/2014年4月14日 第五号:
従業員が使用者と期間の定めのある労働契約を連続2回締結し、2回目の労働契約の期間満了時に、労働者が期間の定めのない労働契約の締結を求めた場合、使用者は期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。

          
上記は上海市高級人民法院が2009年3月3日に公布した「『労働契約法』の適用に伴う若干事項に関する意見」第四項第(四)号の規定および上海の裁判所システムの実務取扱とは異なるもので、上海のやり方としては、従業員が使用者と期間の定めのある労働契約を連続2回締結した後の契約履行完了後も、使用者は労働契約の不更新を選択することができる。

2.労働紛争群衆事件の処理に新たな動きが現れた。

2014年度の開始から現在に至るまでの間、労働紛争群衆事件は依然として絶えず出現しており、有名なものにはある国際的スーパーマーケットの閉店リストラ事件、ある世界的に有名なソフトウェア会社のリストラ事件があり、使用者が提示した補償基準に対する従業員の不満がこの種の事件を誘発する要因の一つとなっている。これについては、筆者の見るところ、年を経るごとに形成されてきた慣習的なもの、即ち、従業員の経済補償基準に対する要求は往々にして法定基準より高く、使用者は常に法律以外の諸要素を考慮し、時にやむを得ず多めの経済補償金を支払ってきたために、高めの基準が形成されてしまい、その循環を断ち切ることができない状況であると考える。

上記二つの事件および当所が取り扱ったことのあるその他の群衆事件を踏まえ、2014年度から政府の態度にも微妙な変化が現れていると感じた。即ち、使用者が支払う経済補償基準が法定基準を満たしてさえいれば、従業員が提起する法定基準を超えた部分の経済補償については、政府も以前のような黙認、支持延いては容認する態度を見せていない。当所が関係政府担当者と意見交換を行った際にも、この変化を明らかに感じた。勿論、これはあくまでも一つの動きにすぎず、現在、全ての現地政府もこのような見解を持っているわけではない。

最後に、2014年度の初めから今日に至るまでの期間に、国および地方各級政府などは多くの各種労働法令を公布しているが、紙面の都合から、本文では大まかな整理、総括のみに止めた。前述した内容に基づき、2014年度の初めから今日に至るまでに公布された各種労働法令の内容が反映する特徴、動向を以下のとおり簡潔にまとめた。

1.労働契約法の基本的な枠組みが確定し、安定的に運用されている状況下で、労務派遣労働者使用、期間の定めのない労働契約などのやや特別な労働法制度の内容を更に整備した。
2.賃金については、依然として「小幅であるが速い」ペースを維持し、安定的に進んでおり、短期的に重大な調整が行われる可能性はあまりない。社会保険などの労働待遇の面では、取扱手順の透明度、規範化を更に強調し、取扱の利便性に重きを置いている。
3.労働紛争群衆事件の処理については、政府の姿勢はもっと客観的、中立の方向に転換しており、今後は単一的に安定維持、事なかれ的な態度で介入処理することはない。

参考:
・「労務派遣暫定規定」
http://www.mohrss.gov.cn/gkml/xxgk/201401/t20140126_123297.htm
・「北京市労務派遣労働者使用状況届出作業に関する通告」(北京)
http://www.bjld.gov.cn/xwzx/zxfbfg/201403/t20140311_34899.htm
・「上海市の労務派遣での労働者使用の規範化に伴う若干事項に関する意見」(上海)
http://www.12333sh.gov.cn/201412333/xxgk/flfg/gfxwj/ldgx/lwpq/201407/t20140714_1186509.shtml
・「上海市労務派遣使用者による労働者使用調整方案の届出弁法」(上海)
http://www.12333sh.gov.cn/201412333/xwzx/zxdt/201407/t20140716_1186569.shtml
・「広州市労務派遣企業年度報告作業ガイド」(広州)
http://www.hrssgz.gov.cn/zt/ldgx/tzgg/201403/t20140325_211769.htm
・「広州市人力資源社会保障局の『労務派遣暫定規定』解読研修の実施に関する通知」(広州)
http://www.hrssgz.gov.cn/zt/ldgx/tzgg/201406/t20140610_214248.htm
・「『労務派遣暫定規定』徹底作業の実施に関する通知」(南京)
http://www.nanjing.gov.cn/njszf/bm/rsj/201405/t20140516_2831961.html
・最低賃金の調整に関する動向
http://china.findlaw.cn/laodongfa/laodongdongtai/1120140.html
・「労災従業員労働能力鑑定管理弁法」
http://www.mohrss.gov.cn/gkml/xxgk/201403/t20140313_126091.htm

(里兆法律事務所が2014年8月6日付で作成)

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