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上海市高級人民法院の労働事件に伴う難題の検討意見に関する簡潔な分析(連載の二/合計二篇)

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2015年2月3日

上海市高級人民法院(以下「上海高院」という)民事第一法廷(労働事件、一般民事事件などを主管する)は労働紛争事件業務検討会を開催し、労働紛争処理過程において生じた一部の難題について十分な検討を行った上、傾向的な結論を下し、「上海高院民一廷の調査研究と参考」【〔2014〕15号】を作成した。これについて、筆者は以下の通り簡潔に紹介し分析する。

(※前稿、連載の一はこちら

労災保険に関する問題

1. 有給待機期間における賃金福利には残業代は含まれるか。
結論
通常では含まれず、雇用主の賃金計算に悪意が存在する場合は除く。
簡潔分析 1)有給待機期間中の賃金待遇は性質上、労働者が正常労働を提供した場合に獲得する報酬に該当するが、残業代は労働者が予定外に労働を提供した場合に獲得する収入であり、正常勤務時間賃金の範囲には該当せず、また有給待機期間においては残業の事実が発生することはあり得ないため、有給待機期間の賃金には残業代は含まれるべきではない。

2)なお、雇用主が悪意をもって正常勤務時間賃金に算入すべき項目を残業代に算入して、正常勤務時間賃金基準を減少させていることを証明する証拠がある場合、当該部分の「残業代」を正常勤務時間賃金の計算範囲に算入しなければならない。


労働関係の解除および終了に関する問題

1. 雇用主は理由なく事実上の労働関係を解除または終了することができるか。
結論
できない。
簡潔分析 1)事実上の労働関係も本質的に言えば依然として労働関係であり、その解除または終了は労働法の規定が適用されなければならない。雇用主が理由なく事実上
の労働関係を解除または終了する場合も、「労働契約法」第48条規定に定める労働契約の違法解除または労働契約終了に従って処理しなければならない。
2)労働契約を締結していない労働者については、雇用主に労働契約の解除または終了の必要がある場合、労働法に定める理由を探さなければならない。
2. 雇用主は生産経営上の必要から労働者の配置転換を手配したが、労働者が拒否し、また元の職場にも出勤しない場合、無断欠勤を構成するか。
結論 構成する。企業の規則制度で重大な規則違反に該当する場合、労働契約を解除できる。
法律依据 1)原則として、労働者の勤務配置変更は労働契約の内容変更に該当し、雇用主は労働者と協議合意の上で変更しなければならない。しかし、「労働紛争事件の審理に伴う若干問題に関する解答」【滬高法民一(2006)17号】第6条などの規定に照らせば、雇用主の労働者使用自主権も完全に否定されている訳ではなく、雇用主は生産構造、経営状況などに応じて労働者に対し十分に合理的な配置転換を行うことができ、労働者に異議がある場合、雇用主は本人と協議の上で解決し、協議義務を果たさなければならない。
2)労働者が配置転換を明確に拒否しない、または明確に拒否した後に雇用主と協議せずに、新たな職場に出勤せず、元の職場にも出勤しない場合、無断欠勤を構成することになり、雇用主の規則制度に基づき重大な規則違反を構成する場合、雇用主は労働契約を解除することができる。
3. 雇用主は違法に労働契約を解除したが、個人にも過失がある場合、雇用主は依然として賠償金を全額支払わなければならないか。
結論
依然として全額を支払わなければならない。
簡潔分析 1)労働者に故意または重大な過失が存在し、雇用主が法律規定または規則制度の規定に従って労働契約を解除する場合、通常、労働契約の違法解除により賠償金を支払わなければならない状況は存在しない。

2)労働者に普通の過失が存在するだけで、その過失が規則制度への重大な違反に該当しない程度であれば、雇用主は通常、適度な処分を行うことができるだけであり、これを理由に労働契約を解除することはできない。解除した場合、労働契約の違法解除になるものと思われ、賠償金を支払わなければならない。賠償金は法律で定められており、また、法律は労働者の過失に起因して軽減される状況も規定されていないため、労働者の過失の有無は賠償金の金額に影響しない。
3)雇用主は労働者の規則制度違反に関する証拠および状況について正確で、適切な評価を行い、労働契約の違法解除をできる限り避けることが望ましい。

競業避止に関する問題

1. 労働者の在職期間における守秘義務違反は雇用主への違約金の支払いを伴うか。
結論
支払わない。
簡潔分析 1)「労働契約法」第25条などの規定によれば、労働者が違約金を負う状況は以下の二つに限られている。一つ目は競業避止の取決めに違反した場合であり、二つ目は服務期間の取決めに違反した場合である。よって、労働者の守秘義務違反の際に違約金の負担を義務付けることには法的根拠がなく、無効である。

2)労働者が守秘義務に違反し、雇用主に損失を与えた場合、雇用主は労働者に対し損害賠償責任の負担を求めることができるが、この場合雇用主は挙証責任を負う必要がある。

以上は上海高院民事第一法廷の労働事件に伴う難題に関する研究意見であり、実務における事件の審理にとって大きな指導的意義がある。ただし、実際の状況の複雑性により、裁判所は個々の事件の事実に照らして完全には同じ判断を下さないことも考えられる。なお、上海以外のその他の省市における裁判所の関連問題に対する見方は同じとは限らず、具体的な問題が生じた際には個々に分析する必要もある。

(里兆法律事務所が2014年12月1日付で作成)

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