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コンプライアンス至上主義を再考する④

中国ビジネスレポート 組織・経営
小島 庄司

小島 庄司

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2021年7月26日

3回にわたり「コンプライアンス至上主義を再考する」と題して書いてきましたが、今回が最後です。

今回は、コンプライアンスと経営の関係で、考えさせられる実例をいくつか挙げたいと思います。

【事例①】
1年ぐらい前から当局に環境対策で是正指示を受けていた。
しかし、対応した現地幹部が過去の感覚で、「社内で対応策を協議の上、早急に対応します」などと答えつつ、何度も当局から改善情況の報告を求められたものの、実際には具体的な措置を講じなかった

1年ほど経過したある日、当局から「これまでの対応情況は悪質であり、直ちに当該ラインの使用停止および撤去を要求する」との通達を受けてしまった。
ここに至って初めて経営者は経緯を知ったが、すでに事態は深刻な情況に陥ってしまっていた。

#過去の経験に安住してコンプライアンスを軽視した結果、招いた問題。一律の至上主義も安易な軽視主義も危険で、リスクと利害の勘案が必要

【事例②】
和諧企業(労働関係が優良として申請・認定を受けた企業)の認定を受けると、様々な利点があり、本社や取引先からの評価も得られる。
このため全社をあげて申請条件を満たし、認定を受けた。

その後、問題言動を繰り返し、組織内で悪影響を及ぼす社員たちが出てきた。
管理者の間では「就業規則に照らせば懲戒解雇でもおかしくない状態。毅然とした対応を」との声も上がったが、万が一、労働紛争に至れば、和諧企業の認定取消のリスクがある、という経営判断により、不問に付されることとなった。

#一概に何がベストとは言えないが、私の経験と感覚では長い目で見て高くつく判断だと思う。問題社員の言動を黙認すると、まじめな社員の士気や組織全体の風土に深刻な影響を累積で与えるため、目に見えない損失は大きい。

【事例③】
本社が「コンプライアンス厳格化」の方針を強く推しており、残業時間(総労働時間)の問題が槍玉に挙がった。

残業を法定の36時間以内に収めるため、二直体制から三直に変更した結果、毎月の残業時間はほぼゼロ近くまで落ちたが、外地から来ていた仕事熱心な社員たちが、櫛の歯が抜けるように辞めてしまい、生産性が落ちてしまった補充採用をするにも、残業代が激減した分、手取給与も減ったため、競争優位性が出せず苦戦している。

#類似事例に、営業活動におけるコンプライアンス至上主義もある。自ら競争に不利な情況を生み出すため、それを消す大きな強みや工夫がないと業績が上がらない。

■ 経営に無条件に信奉すべき前提はない

以上、コンプライアンス至上主義を再考する、と題して書いてきましたが、至上主義の反対は軽視主義ではありません。

一律の重視も一律の軽視も、いわば「思考停止」であり、経営者のとるべき姿勢ではありません

コンプライアンスを最優先するか、若干目をつぶるか、当面は指摘されるまで置いておくかは、そのリスクと利害を総合して経営判断で決める必要があります。

本社方針や従業員の経験に依存せず、経営者自身も当局や社会の変化、法律内容、他社事例などを勉強して判断力を磨いておくことをお薦めします。

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