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ログイン2023年10月10日
■ 脱現地化の動きが生まれている?
これまで10年以上、中国拠点マネジメントの強い流れとして「現地化」というキーワードがありました。しかし、コロナ禍の前後から、日系企業のあいだで現地化一辺倒からの揺り戻しが生まれているように感じます。過去には何でも現地化と言えば通っていたのが、雲行きが変わってきたようです。
こういう動きが出てくる背景は、社によって大きく異なります。
一つは、属人的な現地化をどんどん(なし崩しに)進めた挙句、振り子が戻ってきたパターン。一人の現地トップ(総経理の肩書きでなくても、実権を握る事実上のボス)にすべてを任せて10〜15年が過ぎ、私物化が行きすぎて本社が看過しきれなくなったケースです。
もちろん、本当はずっと前に「この現地化はまずい」と気づいていたはずです。それでも相手は現地トップですから、駐在員や現地幹部もなかなか手を出せずにいたり、あるいは相手に抱き込まれたりしているうちに時間が経ってしまい、とうとう我慢の限界を超えて本社が重い腰を上げた、というところです。
これを期に社を挙げて闇を一掃するぞという雰囲気になっている拠点もあります。本音を言えば、10年ぐらい前に引き返すポイントはあったと思うんですけれど。
もう一つは、ずっと現地化したかったんだけれど、任せられる人が見つからなかったり、不安が先に立ったりして実行に移せなかった会社が、「もう現地化はいいや」と諦めるケースです。
現地化に失敗したとか、強い意思で現地化しないことを決断したとかじゃなく、適切な人材もいないし、現地化した他社を見てみてもいろいろあるみたいだし、とりあえず日本で仕切ろうかね、というふわっとした選択。そりゃ機会があれば現地化したかったけど、どうやらできなそうだな……という感じですね。
それから、脱現地化の動きとは少し違いますが、昔から現地化に反対する一派が根強くいます。根本的に現地を信用していないため、現地化なんて言語道断という人たちです。実際に現地での経験を積んで「やっぱり現地化はやめとこう」と判断したケースは少なく、もともと中国が大嫌いで現地も信用できないから権限も渡さない。
同じ「現地化はしない」という選択であっても、こういう会社は、それが長期的な業績にはつながっていかないと思います。結局、日本側が現地を理解しようとしていない。日本人駐在員の中には、とにかく中国を下に見ていて、現地社員どころか役所に対しても常に上から目線で接して不協和音を生んでいる人さえいます。
中国の事業環境が目まぐるしく変化することは言うまでもありません。販路開拓が進み、営業の方向性が変化し、取引先との力関係はどんどん変わっていきます。なのに、ずっとそんな態度をとっていては、良好な関係を築けるはずがありません。これでは現地経営の大前提である「業績向上のため」から乖離してしまいます。現地化したことによる問題は起きなくても、これはこれで不幸です。
このように、現地化離れと一口に言っても、その内部事情にはかなりの幅があります。
■ そもそも現地化って何?見えている景色の違い
さて、皆さんは「現地化」と聞いてどういう状態を思い浮かべるでしょうか。どうなったら「現地化に成功」なんでしょうか。これは実際に現地化を進めている拠点でも、すり合わせができていないことがよくあります。
現地化の勘違いで最もよく見られるのは、現地プロパーの個人にすべてを任せようとしてしまうことです。内部昇格でも外部招聘でも同じです。誰かを拠点のトップに据えて権限を渡すことを現地化だと信じている会社はいまでも多くあります。
現地組織に権限を与えて事業のやり方に責任を持たせることと、誰か個人にすべてを任せることは、意味が全然違います。
ここをごっちゃにしている会社が非常に多い。現地化を進めるという流れになると、まず「任せられる人を見つけよう!」となるのが王道パターンです。すぐ個人に権限委譲しようとする。ここに現地化に対する根本的な誤解があるように思います。その先に待つのは現地経営のブラックボックス化、属人化に他なりません。
中国に限らず、国外で事業を成功させる会社は、自分たちにとっての現地化とは何か、どこをどのように現地化するか、しっかり考えています。
ここ数十年で日本に進出した海外企業を思い出してみてください。日本市場向けの商品開発がうまい会社と、どうもピントがずれている会社がありましたよね。スターバックス、マクドナルドなどは、日本の発想を取り入れ、日本人が受け入れやすいメニューを開発したり日本に適したキャンペーンを展開したりして定着しました。
中国でも同じようにうまくいっている会社もあるし、できずに沈んでいった会社もあります。
つまり、現地化そのものが悪いわけじゃなく、何のために現地化するか、何を現地化するか/しないかを考えているかどうかがポイントです。まずは入口のところで、現地化した先に何を目指すのか、想定する状況をもう少し深く具体的に考えてほしいと思います。
(続く)
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